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第1話 ROMANCE DAWN ― 冒険の夜明け ― <前編>

富・名声・力
かつて、この世の全てを手に入れた男。

“海賊王”ゴールド・ロジャー

彼の死に際に放った一言は、
全世界の人々を海へ駆り立てた。

『おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ・・・。探してみろ。この世の全てをそこに置いてきた』


世は
大海賊時代を迎える ───


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




ここは東の海(イーストブルー)の辺境にある、フーシャ村。
小さく、のどかな港村。
東から吹く風が心地いい、なんとも平和な村である。
この村には1年ほど前から海賊船が停泊していた。
その海賊船の船首の上に、小さな男の子が立っている。

彼の名は”モンキー・D・ルフィ”。

この村で暮らす7歳の少年である。
停泊している海賊たちに憧れ、しばしば彼らの元に遊びに来ていた。





「おいルフィ、何する気だ?」

船首の上のルフィに、海賊たちが声をかける。

「ふん」

ルフィはナイフを片手に叫んだ。

「おれは遊び半分なんかじゃない!!もう、あったまきた!!証拠を見せてやる!!!」
「だっはっは、おう!やってみろ。何するか知らねえがな!」
「またルフィが面白れぇことやってるよ」

海賊たちがニヤニヤしながら、ルフィを眺める。

「ようし見てろ・・・、ふんっ!!!」

なんと、持っていたナイフを目の下にぶっ刺したのだ。

「いっっってェ~~~~~~~っ!!!」

予想外の行動に、海賊たちも驚いた。

「な!!!」
「バッ、バカ!!!野郎、何やってんだァ!!?」
「いて───よ───っ!!」

海賊たちは慌ててルフィを船首から引きずり下ろした。







「─── 野郎共乾杯だ!!!ルフィの根性とおれ達の大いなる旅に!!!」

ここは村の酒場”PARTYS BAR”。
若い女店主マキノが切り盛りする酒場だ。
海賊たちはここでしょっちゅう宴を開いていた。

「がははは、飲め飲め」
「酒!酒、酒足りねェよ」
「バカ、その肉はオレんだ!!」
「うるせェ!おれが食う」
「おい、よせ。酒の上のケンカは見苦しいぞ!!」

わいわいがやがや、海賊たちは騒がしい。

そんな中、ルフィはちょこんといすに腰掛けていた。

「─── あー、いたくなかった」
「うそつけ!!バカな事すんじゃねェ!!」

涙目で強がるルフィに、赤毛で麦わら帽子をかぶった、左目に3本の傷のある男が怒鳴った。
この海賊団の頭、”赤髪のシャンクス”である。

「おれはケガだってぜんぜん恐くないんだ!!連れてってくれよ、次の航海!!おれだって海賊になりたいんだよ!!!!」

ルフィが目を輝かせて言う。
そんなルフィに、シャンクスは笑いながら言った。

「お前なんかが海賊になれるか!!カナヅチは海賊にとって致命的だぜ!!」
「カナヅチでも船から落ちなきゃいいじゃないか!!」

ルフィが必死で言い返す。

「それに戦ってもおれは強いんだ。ちゃんときたえてるから、おれのパンチは銃のように強いんだ!!!」
「銃?へーそう」
「なんだその言い方はァ!!」

シャンクスの適当な物言いに、ルフィがキレる。
そんな2人を見て周りの海賊たちが口々に言った。

「─── おうおうルフィ!なんだかごきげんナナメだな」
「楽しくいこうぜ何事も!」
「そう!海賊は楽しいぜェ」
「海は広いし大きいし!!いろんな島を冒険するんだ」
「何より自由!!」

そんな海賊たちを、ルフィは憧れのまなざしで見つめる。

「お前達、バカな事吹き込むなよ」

シャンクスがたしなめた。

「だって本当の事だもんなー」
「なー」
「お頭、いいじゃねェか。一度くらい連れて行ってやっても」
「おれもそう思うぜ」

海賊たちの心強い言葉に、ルフィは期待を込めた。が。

「じゃあ、かわりに誰か船を下りろ」
「・・・さあ話は終わりだ。飲もう!!」

シャンクスの言葉に、当然海賊たちの翻意も早かった。

「味方じゃないのかよ!!」

ルフィが憤慨する。

「要するにお前はガキすぎるんだ。せめて、あと10歳年とったら考えてやるよ」
「このケチシャンクスめ!!言わせておけば!!おれはガキじゃないっ!!」
「まァおこるな。ジュースでも飲め」
「うわ!ありがとう!」

もらったジュースを素直に飲むルフィ。
その姿を見て・・・、

「ほらガキだ!おもしれえ!!」

シャンクスは涙を流して大笑いした。

「きたねえぞ!!」

ルフィは怒ってシャンクスのそばを離れた。
手にはしっかりとジュースのコップをにぎって。





「ふうっ!!もう疲れた。今日は顔に大ケガまでして頼んだのに!!」
「─── ルフィ、お頭の気持も少しはくんでやれよ」
「副船長!」

副船長と呼ばれた男の名は”ベン・ベックマン”。
長い黒髪を後ろで束ね、たばこをくゆらしている。

「シャンクスの気持?」
「そうさ・・・。あれでも一応海賊の一統を率いるお頭だ。海賊になることの楽しさも知ってりゃ、その反対の過酷さや危険だって一番身にしみてわかってる」
「?」
「わかるか?別にお前の海賊になりたいって心意気を踏みにじりたい訳じゃねェのさ」

ベン・ベックマンが諭すように言った。

「わかんないね!!シャンクスはおれをバカにして遊んでるだけなんだ」

「カナヅチ」
ぷぷっとシャンクスがルフィの方を向いて笑う。

「ほら!!!」
ルフィがむくれた。

「相変わらず楽しそうですね、船長さん」

にこやかに笑いながら言ったのは、この店の店主、マキノ。
看板娘も兼ねる、美人の店主だ。

「ああ、こいつをからかうのはおれの楽しみなんだ」

ほらあんな事言ってる、とシャンクスの方を指差すルフィ。

「・・・確かに楽しんでるな」
と、ベン・ベックマン。

「・・・ルフィ、あなたも何か食べてく?」

マキノが裏から持ってきたビールの樽を抱えながら言った。

「ああ、じゃあ”宝払い”で食う」
「でたな”宝払い”」

シャンクスがにやりと笑って言った。

「お前そりゃサギだぜ。」
「違う!!ちゃんとおれは海賊になって、宝を見つけたら金を払いに来るんだ!!」

ルフィが、心外だ!とばかりにテーブルをどん、とやった。

「ふふふ!期待して待ってるわ」
マキノが笑う。

「しししし」
ルフィも笑った。





「─── シャンクス」
ルフィが肉をかみ切りながら言った。

「なんだ」
シャンクスも食べながら答える。

「あとどれくらいこの村にいるの?」
「そうだなァ・・・、この村を拠点に旅してもう1年以上経つからな・・・。あと2・3回航海したらこの村を離れてずっと北へ向かおうと思ってる」
「ふーん・・・。あと2・3回かァ・・・」

ルフィがぼんやり考える。
それを見ながら、マキノが小さなため息をついた。

「おれ、それまでに泳ぎの練習するよ!」
「そりゃいい事だな!勝手にがんばれ」

バキ!!

その時、酒場のドアが蹴破られた。
海賊たちが入り口の方を見やる。

「邪魔するぜェ・・・」

ガラの悪い男たちがゆっくりと店の中に入ってきた。

「ほほう・・・、これが海賊って輩かい・・・。初めて見たぜ。間抜けた面してやがる」

そしてカウンターのマキノの前で止まった。

「おれ達は山賊だ」

このあたりの山に出没する山賊の棟梁の”ヒグマ”だった。
額には十字の傷。腰に剣をぶら下げ、あごひげに手をやりながら言った。

「 ─── が、別に店を荒らしにきた訳じゃねェ。酒を売ってくれ。樽で10個ほど」
「ごめんなさい、お酒は今ちょうど切らしているんです」

マキノが少しおびえながら言った。

「んん?」
ヒグマが店を見渡す。

「おかしな話だな、海賊共が何か飲んでる様だが・・・。ありゃ水か?」
「ですから、今でてるお酒で全部なので・・・」

その会話に気づいて、シャンクスが口を挟んだ。

「これは悪いことをしたなァ。おれ達が店の酒飲み尽くしちまったみたいで・・・。すまん」

そして手元にあった酒瓶を差し出し、

「これで良かったらやるよ。まだ栓もあけてない」

それを受け取ったヒグマは、何も言わずに酒瓶をシャンクスの頭めがけて振り下ろした。
酒瓶が砕け、酒まみれになるシャンクス。

「おい貴様、このおれを誰だと思ってる。ナメたマネするんじゃねェ・・・。ビン1本じゃ寝酒にもなりゃしねェぜ」
「あーあー・・・、床がびしょびしょだ」

ヒグマの言葉を聞いていないのか、シャンクスは床を見つめて言った。

「これを見ろ」

ヒグマが手配書を掲げた。
そこにはヒグマ自身の写真が載っていた。つまり、自分の手配書だ。

「八百万ベリーがおれの首にかかってる。第一級のおたずね者ってわけだ。56人殺したのさ。てめェのように生意気な奴をな」

そして、その手配書を強調するようにひらひらさせる。

「わかったら・・・、今後気をつけろ。もっとも山と海じゃもう遭う事もなかろうがな」

シャンクスが床に落ちた酒瓶の破片を拾う。

「・・・悪かったなァ、マキノさん。ぞうきんあるか?」
「あ・・・、いえ、私がやりますそれは・・・」

その瞬間、ヒグマが腰にぶら下げていた剣を振り回した。

ガシャァン!!!

カウンターにあった飲み残しのグラスや皿が音を立てて砕け散る。

「掃除が好きらしいな・・・。これくらいの方がやりがいがあるだろう・・・!!!」

シャンクスはさらにびしょぬれになった。

「じゃあな、腰ヌケ共。酒がねェんじゃ話にならねェ、別の町へ行くぜ」

山賊たちは小ばかにした目つきで海賊たちを眺め、店を出て行った。





「船長さん大丈夫ですか!?ケガは?」

マキノがシャンクスに駆け寄った。

「あ───大丈夫、問題ない」

そう言うと、シャンクスはこらえきれずに吹き出した。

「っだ───っはっはっは!!なんてざまだお頭!!」
「はでにやられたなァ」

海賊たちも大笑いする。

「はっはっはっはっは!!」

シャンクスもおかしそうに笑う。

大爆笑の中、1人だけ怒ってるものがいた。
ルフィだ。

「なんで笑ってんだよ!!!」
「ん?」

シャンクスが笑うのをやめて、ルフィを見た。

「あんなのかっこ悪いじゃないか!!!なんで戦わないんだよ、いくらあいつらが大勢で強そうでも!!あんな事されて笑ってるなんて男じゃないぞ!!!海賊じゃないっ!!!」
「・・・・・きもちはわからんでもないが」

シャンクスは麦わら帽子に手をやり、笑って言った。

「ただ酒をかけられただけだ。怒るほどのことじゃないだろう?」
「しるかっ!!もう知らん、弱虫がうつる!!」
「おい待てよ、ルフィ・・・」

そう言ってシャンクスはその場を離れようとするルフィの腕を掴んだ。
ルフィはそれでもずんずん進む。
・・・進む?
その様子を見ていた海賊たち全員が飲んでいた酒を吹き出した。

「手が伸びた・・・!!!こりゃあ・・・」

シャンクスが焦る。

「まさかお前!!!」

海賊たちが叫ぶ。

「何だこれああ───!!」

ルフィも自分の身体の変化に気づき、同じように叫んだ。

「ないっ!!」

太っちょで丸いゴーグルをかけ、いつも肉を食っているラッキー・ルウが、小さな宝箱を開けて大声を上げた。

「敵船から奪ったゴムゴムの実が!!!!」

そして渦巻き模様の実の絵が描かれたスケッチブックを開いて言った。

「ルフィ、お前まさかこんな実食ったんじゃ・・・・・?」
「・・・うん、デザートに・・・・・まずかったけど・・・」
「ゴムゴムの実はなあ!!!」

シャンクスがルフィの肩を掴んで怒鳴った。

「悪魔の実とも呼ばれる海の秘宝なんだ!!!」
「!」
「食えば全身ゴム人間!!!そして一生泳げない体になっちまうんだ!!!!」
「え───っ!!!うそ───!!」
「バカ野郎ォ───っ!!!」



知らなかったとはいえ、もう後の祭り。
これがゴム人間ルフィの誕生だった。
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