第37話 海賊“百計のクロ”
坂の上では、ルフィとキャプテン・クロが相対していた。
クロが両方の猫の手を広げた構えのまま、ルフィに襲い掛かる。
「死ね」
「いやだ」
素直に答えたルフィは、反動をつけた両腕を思いっきり伸ばしクロの両腕を掴む。
そのまま顔面に両脚で蹴りを入れる・・・ところだったが、掴まれたクロは腕をぐるっと回転させた。
「いっ!!?」
そのままルフィを地面に叩きつける。
しかし、ルフィには打撃は効かない。(ゴムだから)
クロの腕から手を離したルフィは、低い体勢のまま蹴りの体勢に入る。
「ゴムゴムの」
「鞭っ!!!」
伸びる蹴りを、クロは軽く飛んでかわす。
ルフィの攻撃はこれだけでは終わらない。
「と」
「銃(ピストル)っ!!!」
パンチがクロに向かって伸びる。
しかしこれも軽くかわす。
「あ」
海賊たちが叫ぶ。
「の・・・乗ってる!」
「伸びた手に乗ってるゥ!!」
クロはルフィの腕に乗ったまま、めがねのズレを直した。
「アクビがでるぜ・・・」
「・・・んのやろうっ!」
ルフィは自分の腕を引っ張って戻そうとしたが、その腕の上をクロは駆け上ってきた。
「うわ」
ドス!
そしてルフィの顔面を思いっきり蹴り飛ばした。
ルフィは反動で坂をごろんごろんと転がり落ちていく。
「あの麦わら野郎、恐ろしく強ェハズなのに・・・!」
「さ・・、さすがだ。キャプテン・クロ・・・!!!」
海賊たちは常人ではありえない戦いにただ驚くばかりだった。
しかし、自分達の元船長が優位に戦いを進めていることに、少しづつ希望を持ち始めていた。
「くそ・・・、口切った・・・」
ようやく止まったルフィは、ぷっと口から血を吐く。
海賊たちが騒ぎ始める。
「やっちまえーっ!」
「キャプテン・クロ万歳ーっ!」
「C(キャプテン)・クロ!!」
しかし、クロは怒鳴りつけた。
「その名前を呼ぶんじゃねェ!!!」
「ひいいーっ!!!」
その迫力に、海賊たちは怯えて口をつぐんだ。
「まだ理解しきれねェのか・・・!」
クロが言い放った。
「この計画はな・・・、C・クロというその名を完全に捨てるための計画なんだ!」
「おれは疲れたのさ・・・。暴れることしか頭にねェてめェらバカどもを考慮して計画を練る至難・・・。ほどほどに名が揚がると、執拗に追ってくる政府の海軍や賞金稼ぎ。ウザったくてしょうがねェ。・・・だから3年前のあの日・・・、おれはおれを殺すことを決意した!」
海賊たちが思い出す。
「あ・・・、あの日・・・」
「ああ、あの事件か・・・」
─── それは、3年前のある夜の出来事だった。
「ジャンゴ副船長!」
「あ?どうした」
「C・クロがお呼びです」
停泊中の船で、突然ジャンゴはクロに呼びつけられた。
何事かと船長室へ向かうと、クロはベッドに寝そべりながら本を読んでいる。
そして彼の口から驚くべき言葉が発せられた。
「ジャンゴ・・・、おれァこの船を下りるぜ・・・」
「な・・・!?何言い出すんだよ、イキナリ!下りるったって、こりゃあんたの船だぜ!?船長もあんただ!」
ジャンゴは突然の話に耳を疑った。
しかし、クロは静かに言う。
「船長ならお前がやればいい。おれは海賊が性にあわねェらしい・・・。この騒がしい生活はもうウンザリだ」
その時、甲板にいた海賊たちが騒ぎ出した。
「C・クロ!C・クロ!」
「北の方角から海軍が現れました!」
「まただ!この一週間で3度目だぞ!!」
ドゴォン・・・!!!
砲弾の音が鳴り響く。
「うわあっ、大砲だァ!」
「・・・見ろ、すぐにこのあり様だ」
外の様子に、クロはため息をついた。
ジャンゴは、何を言ってんだ、とばかりに言い返す。
「そりゃ仕方ねェぜ、おれ達ァ追われるような事やってんだからよ。それなりに名も売れてるし」
「そうさ・・、その売れた名が海軍を引き寄せるんだ。だからおれは、C・クロをやめるつもりだ」
クロの言葉に、ジャンゴが少し呆れる。
「おかしなこと言うんだな!ムダさ、死ぬまで政府はあんたを追い回すと思うぜ?」
しかし、クロの顔は真剣そのものだった。
「死ぬんだ、おれは。世間的におれを殺す」
そう言って彼は部屋を後にする。
「あ、C・クロ、海軍をどうします?ブッ放しますか、大砲を!」
出てきたクロに、海賊たちが声をかける。
しかし、クロはこう答えた。
「いや、小船を一艘下ろせ」
「え?小船!?」
意外な返事に、海賊たちは戸惑う。
そんな彼らを尻目に、クロは1人小船に乗って海軍の軍艦に向かって行った。
「─── 行っちまったよ、キャプテン。一体どういうつもりなんだ?」
「1人で海軍の船に向かうなんて・・・。自首でもする気か?」
残された海賊たちは口々に騒ぎ始める。
その内、自分たちの海賊船に向かって放たれていた大砲の音がだんだんと止んでいく。
すっかり攻撃が止まってしまった頃、甲板でクロの行方を心配そうに見つめていた海賊たちは、また再び騒ぎ始めた。
「─── 攻撃はやんだが、何の音沙汰もねェ」
「まさか、殺されちまったんじゃねェだろうな!」
「大砲準備!船を寄せるぞ、戦闘の用意をしろ!」
海賊たちは慌てて軍艦に船を寄せる。
そして、彼らが見たものは・・・。
「あ・・・!!!」
「か・・・海兵どもが・・・、全滅してる!!!」
海兵たちが血まみれで倒れる中、1人船の手すりに腰掛けるキャプテン・クロの姿であった。
「─── さて・・・、計画に移るか・・・」
三日月に照らされたクロの顔は、冷酷そのものである。
「われらが船長ながら、サム気するぜ、あの強さ」
「まったくだ、相手は鍛えられた軍隊だぜ・・・」
船に残っていた”ニャーバン・兄弟”が冷や汗をかいた。
その時、倒れていた一人の海兵が息を吹き返した。
「く・・・」
「よう・・、息があるようだな・・・」
クロがその男のアゴを踏みつける。
「いいツラしてやがる」
踏みつけられた海兵は、苦しい息の下でこう言い放った。
「命乞いはしねェ。殺すなら殺せ」
「・・・砕けたアゴでそれだけ吼えりゃ上等だ。貴様にこの”百計のクロ”の首くれてやる」
クロはにやりと笑う。
その横ではジャンゴがチャクラムを取り出し、ある男に向けてゆっくりと揺らし始めた。
「お前の名は『キャプテン・クロ』。この惨劇はお前の仕業・・・」
「ワン・・ツー・・・」
「ジャンゴ!!」
「─── おれの名はキャプテン・クロ。この惨劇はおれの仕業。おれはC・クロ・・・」
催眠をかけられた男、クロに雰囲気が似ているからと選ばれた手下の一人は、こうしてニセ物のクロとして仕立て上げられてしまった。
そしてもう1人、海兵にも催眠をかける。
「─── そしてお前は、このC・クロを捕まえた男だ!基地へ戻ってこの男を処刑しろ」
「ワンツー、ジャンゴ!!」
催眠をかけられた海兵、斧手のモーガンはこの功が海軍支部の大佐へと出世する足掛かりとなるのである。運命というのはわからない。
「・・・これでいい。あのニセ者が死ぬことで、C・クロは世の中から消えてなくなる・・・! ───」
「─── そして後は、今日この計画を成功させることで、おれの目的は完全に達成される。”金”と”平穏”が手に入るのだ」
クロが坂の下のルフィを見下ろす。
「わかるか、小僧・・・。この3年をかけた計画に、失敗は許されねェんだ」
「おれの計画は絶対に狂わないっ!!!」
猫の手を広げ、クロがルフィに襲い掛かる。
ガキィッ!!!
「ふんぎぎぎぎ・・・!」
ルフィは傍に転がっていた大きな岩を持ち上げ、その攻撃を防ぐ。
クロの右手のツメはその岩に突き刺さった。
「ただ伸びるってだけでもなさそうだな」
「そうさ、鍛えてあるからな!海賊になる為に!!・・・うりゃ!」
ルフィはにっと笑うと、岩を左に大きく振り回す。
ボキン!!
「な!」
海賊たちが叫ぶ。
「うわっ!”猫の手”を折りやがった!!」
「疲れただと?」
そしてそのまま岩をクロに向け振り下ろす。
「海で名を揚げることが怖くて、海賊がやれるか!!!」
ルフィはクロを見つめて、はっきりと言い切った。
「野望(けいかく)のでかさならおれの方が上だ!!!」
クロが両方の猫の手を広げた構えのまま、ルフィに襲い掛かる。
「死ね」
「いやだ」
素直に答えたルフィは、反動をつけた両腕を思いっきり伸ばしクロの両腕を掴む。
そのまま顔面に両脚で蹴りを入れる・・・ところだったが、掴まれたクロは腕をぐるっと回転させた。
「いっ!!?」
そのままルフィを地面に叩きつける。
しかし、ルフィには打撃は効かない。(ゴムだから)
クロの腕から手を離したルフィは、低い体勢のまま蹴りの体勢に入る。
「ゴムゴムの」
「鞭っ!!!」
伸びる蹴りを、クロは軽く飛んでかわす。
ルフィの攻撃はこれだけでは終わらない。
「と」
「銃(ピストル)っ!!!」
パンチがクロに向かって伸びる。
しかしこれも軽くかわす。
「あ」
海賊たちが叫ぶ。
「の・・・乗ってる!」
「伸びた手に乗ってるゥ!!」
クロはルフィの腕に乗ったまま、めがねのズレを直した。
「アクビがでるぜ・・・」
「・・・んのやろうっ!」
ルフィは自分の腕を引っ張って戻そうとしたが、その腕の上をクロは駆け上ってきた。
「うわ」
ドス!
そしてルフィの顔面を思いっきり蹴り飛ばした。
ルフィは反動で坂をごろんごろんと転がり落ちていく。
「あの麦わら野郎、恐ろしく強ェハズなのに・・・!」
「さ・・、さすがだ。キャプテン・クロ・・・!!!」
海賊たちは常人ではありえない戦いにただ驚くばかりだった。
しかし、自分達の元船長が優位に戦いを進めていることに、少しづつ希望を持ち始めていた。
「くそ・・・、口切った・・・」
ようやく止まったルフィは、ぷっと口から血を吐く。
海賊たちが騒ぎ始める。
「やっちまえーっ!」
「キャプテン・クロ万歳ーっ!」
「C(キャプテン)・クロ!!」
しかし、クロは怒鳴りつけた。
「その名前を呼ぶんじゃねェ!!!」
「ひいいーっ!!!」
その迫力に、海賊たちは怯えて口をつぐんだ。
「まだ理解しきれねェのか・・・!」
クロが言い放った。
「この計画はな・・・、C・クロというその名を完全に捨てるための計画なんだ!」
「おれは疲れたのさ・・・。暴れることしか頭にねェてめェらバカどもを考慮して計画を練る至難・・・。ほどほどに名が揚がると、執拗に追ってくる政府の海軍や賞金稼ぎ。ウザったくてしょうがねェ。・・・だから3年前のあの日・・・、おれはおれを殺すことを決意した!」
海賊たちが思い出す。
「あ・・・、あの日・・・」
「ああ、あの事件か・・・」
─── それは、3年前のある夜の出来事だった。
「ジャンゴ副船長!」
「あ?どうした」
「C・クロがお呼びです」
停泊中の船で、突然ジャンゴはクロに呼びつけられた。
何事かと船長室へ向かうと、クロはベッドに寝そべりながら本を読んでいる。
そして彼の口から驚くべき言葉が発せられた。
「ジャンゴ・・・、おれァこの船を下りるぜ・・・」
「な・・・!?何言い出すんだよ、イキナリ!下りるったって、こりゃあんたの船だぜ!?船長もあんただ!」
ジャンゴは突然の話に耳を疑った。
しかし、クロは静かに言う。
「船長ならお前がやればいい。おれは海賊が性にあわねェらしい・・・。この騒がしい生活はもうウンザリだ」
その時、甲板にいた海賊たちが騒ぎ出した。
「C・クロ!C・クロ!」
「北の方角から海軍が現れました!」
「まただ!この一週間で3度目だぞ!!」
ドゴォン・・・!!!
砲弾の音が鳴り響く。
「うわあっ、大砲だァ!」
「・・・見ろ、すぐにこのあり様だ」
外の様子に、クロはため息をついた。
ジャンゴは、何を言ってんだ、とばかりに言い返す。
「そりゃ仕方ねェぜ、おれ達ァ追われるような事やってんだからよ。それなりに名も売れてるし」
「そうさ・・、その売れた名が海軍を引き寄せるんだ。だからおれは、C・クロをやめるつもりだ」
クロの言葉に、ジャンゴが少し呆れる。
「おかしなこと言うんだな!ムダさ、死ぬまで政府はあんたを追い回すと思うぜ?」
しかし、クロの顔は真剣そのものだった。
「死ぬんだ、おれは。世間的におれを殺す」
そう言って彼は部屋を後にする。
「あ、C・クロ、海軍をどうします?ブッ放しますか、大砲を!」
出てきたクロに、海賊たちが声をかける。
しかし、クロはこう答えた。
「いや、小船を一艘下ろせ」
「え?小船!?」
意外な返事に、海賊たちは戸惑う。
そんな彼らを尻目に、クロは1人小船に乗って海軍の軍艦に向かって行った。
「─── 行っちまったよ、キャプテン。一体どういうつもりなんだ?」
「1人で海軍の船に向かうなんて・・・。自首でもする気か?」
残された海賊たちは口々に騒ぎ始める。
その内、自分たちの海賊船に向かって放たれていた大砲の音がだんだんと止んでいく。
すっかり攻撃が止まってしまった頃、甲板でクロの行方を心配そうに見つめていた海賊たちは、また再び騒ぎ始めた。
「─── 攻撃はやんだが、何の音沙汰もねェ」
「まさか、殺されちまったんじゃねェだろうな!」
「大砲準備!船を寄せるぞ、戦闘の用意をしろ!」
海賊たちは慌てて軍艦に船を寄せる。
そして、彼らが見たものは・・・。
「あ・・・!!!」
「か・・・海兵どもが・・・、全滅してる!!!」
海兵たちが血まみれで倒れる中、1人船の手すりに腰掛けるキャプテン・クロの姿であった。
「─── さて・・・、計画に移るか・・・」
三日月に照らされたクロの顔は、冷酷そのものである。
「われらが船長ながら、サム気するぜ、あの強さ」
「まったくだ、相手は鍛えられた軍隊だぜ・・・」
船に残っていた”ニャーバン・兄弟”が冷や汗をかいた。
その時、倒れていた一人の海兵が息を吹き返した。
「く・・・」
「よう・・、息があるようだな・・・」
クロがその男のアゴを踏みつける。
「いいツラしてやがる」
踏みつけられた海兵は、苦しい息の下でこう言い放った。
「命乞いはしねェ。殺すなら殺せ」
「・・・砕けたアゴでそれだけ吼えりゃ上等だ。貴様にこの”百計のクロ”の首くれてやる」
クロはにやりと笑う。
その横ではジャンゴがチャクラムを取り出し、ある男に向けてゆっくりと揺らし始めた。
「お前の名は『キャプテン・クロ』。この惨劇はお前の仕業・・・」
「ワン・・ツー・・・」
「ジャンゴ!!」
「─── おれの名はキャプテン・クロ。この惨劇はおれの仕業。おれはC・クロ・・・」
催眠をかけられた男、クロに雰囲気が似ているからと選ばれた手下の一人は、こうしてニセ物のクロとして仕立て上げられてしまった。
そしてもう1人、海兵にも催眠をかける。
「─── そしてお前は、このC・クロを捕まえた男だ!基地へ戻ってこの男を処刑しろ」
「ワンツー、ジャンゴ!!」
催眠をかけられた海兵、斧手のモーガンはこの功が海軍支部の大佐へと出世する足掛かりとなるのである。運命というのはわからない。
「・・・これでいい。あのニセ者が死ぬことで、C・クロは世の中から消えてなくなる・・・! ───」
「─── そして後は、今日この計画を成功させることで、おれの目的は完全に達成される。”金”と”平穏”が手に入るのだ」
クロが坂の下のルフィを見下ろす。
「わかるか、小僧・・・。この3年をかけた計画に、失敗は許されねェんだ」
「おれの計画は絶対に狂わないっ!!!」
猫の手を広げ、クロがルフィに襲い掛かる。
ガキィッ!!!
「ふんぎぎぎぎ・・・!」
ルフィは傍に転がっていた大きな岩を持ち上げ、その攻撃を防ぐ。
クロの右手のツメはその岩に突き刺さった。
「ただ伸びるってだけでもなさそうだな」
「そうさ、鍛えてあるからな!海賊になる為に!!・・・うりゃ!」
ルフィはにっと笑うと、岩を左に大きく振り回す。
ボキン!!
「な!」
海賊たちが叫ぶ。
「うわっ!”猫の手”を折りやがった!!」
「疲れただと?」
そしてそのまま岩をクロに向け振り下ろす。
「海で名を揚げることが怖くて、海賊がやれるか!!!」
ルフィはクロを見つめて、はっきりと言い切った。
「野望(けいかく)のでかさならおれの方が上だ!!!」
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