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第4話 海軍大佐”斧手のモーガン”

「や・・・やりやがった・・・!!あいつ誰だ!!」
「大佐の息子を殴りやがった・・・!!モーガン大佐が黙ってないぞ!!!」

町の人達が慌てふためく。
それもそのはず、この町の絶対的な権力者モーガン大佐の息子を、麦わら帽子をかぶった少年が思いっきり殴り倒したのだ。

「ルフィさん!!こらえて下さい!!仮にも相手は海軍です」
「知るか!!何やってても、クズはクズだ!!」

コビーは必死でルフィを抑えた。

─── これ以上状況が悪くなることは避けなきゃ!!!

殴り倒されたヘルメッポがほっぺたを押さえて叫ぶ。

「な・・・な・・・、殴りやがったな!!このおれを殴りやがったな!!親父にだって、一度も殴られたことねェのに・・・!!おれは海軍大佐モーガンの御曹司だぞ!!!親父に言いつけてやる!!!!」

その言葉に町中の人が震え上がった。

「お前がかかってこいよ」
「ルフィさん、止めて下さい!!」

再び殴りかかりそうなルフィを、コビーが再度がっちり引き止める。

「おれを殴ったことを後悔しながら死んでいけ、お前は死刑だ!!!親父に殺されちまえ!!バーカ!!」

悪態をつきながらヘルメッポは、海兵たちに両脇を抱えられ、その場を一目散に逃げて行った。

「・・・あんな奴、これ以上殴る価値もねェ」

ルフィは、殴った勢いで飛んだ麦わら帽子をかぶり直した。

「すごいのね、お兄ちゃん」

女の子がルフィの元に駆け寄ってきた。

「私、胸がすっとしちゃった」
「そうか?じゃあ、もっと殴っときゃよかったな!」

女の子に笑って言った時、1人の女の人が慌てて駆け寄ってきた。

「リ・・・リカ!!こっちへ来なさい!!」

女の子、リカのママだった。

「あの人と口を聞いちゃダメ!仲間だと思われたらリカも殺されちゃうのよ!!」

リカのママはそう言って、リカを家の中へ連れ戻す。
周りの町の人達も慌てて家の中に入っていく。

「だってママ、あの人はいい人よ!ゾロって人だって・・・」
「バカな事言わないの!!まさか磔場へは行ってないでしょうね!?」
「う・・・うん、行ってないよ・・・!!」
「さ、早く家へ入って!!」

リカはママに家の中に引っ張られるようにして入っていった。
ルフィたちに申し訳なさそうな顔をして。
そんなリカを手を振りながら笑顔で見送ったルフィは、回れ右をしてずんずん進んで行った。
コビーが慌てて後を追う。

「やっぱりただじゃ済みそうにありませんよ!!例の大佐が怒って、下手すれば海軍が動く恐れも・・・」
「その時はその時だ!おれ、ゾロに会ってくる」





─── その頃、海軍基地本館では。

「おれは、偉い」

最上階の豪華な部屋で、これまた豪華な椅子にふんぞり返り、葉巻をくゆらす1人の男がいた。
この海軍基地を統べる大佐、斧手のモーガンである。
鋼鉄のあごを持ち、筋骨隆々の腕の右腕は大きな斧となっていた。

「はっ、何しろ大佐でありますから!!モーガン大佐」

そばに控えていた海兵がそれに答える。

「・・・その割には近ごろ町民共の”貢ぎ”が少ねェんじゃねェか?」
「はっ!その・・・、大佐への納金に関しましては、なにぶん町人たちの懐にも限界がありまして・・・」
「懐は問題じゃねェ・・・、要はおれへの敬服度だ!!」

モーガンの迫力に、海兵がひるんだ時、

「親父っ!!!」

けたたましい音を立てて、息子のヘルメッポが部屋に飛び込んできた。

「・・・どうした、ヘルメッポ。騒々しいぞ」
「ブッ殺してほしい奴がいるんだよ!!!」

殴られたあとを冷やしながら、ヘルメッポが父親に訴えた。







一方、ルフィは再びゾロの元にやってきた。

「よっ」
「また来たのか。海賊の勧誘なら断ったハズだぜ・・・!!」

ゾロが呆れたように言った。
だが当のルフィは、

「おれはルフィ!縄解いてやるから仲間になってくれ!!」

ゾロの言葉もどこ吹く風。

「話聞いてんのか、てめェ!!・・・おれにはやりてェ事があると言っただろう。誰が好んで海賊なんて外道になるか」

ゾロがルフィを睨む。

「別にいいじゃんか。お前元々悪い賞金稼ぎって言われてんだから」
「世間でどう言われてるかは知らんが、おれはおれの信念に後悔するようなことは何一つやっちゃいねェ!これからもそうだ。だから海賊にもならねェ!!」

ゾロの信念はゆるぎない。普通だったらその思いに気圧され諦めるところだが・・・。

「知るかっ!おれはお前を仲間にするって決めた!!」

これまたルフィの信念もゆるぎない。

「勝手なこと言ってんじゃねェ!!」

ゾロが怒鳴る。

─── 何なんだコイツは。

「・・・そういえば、お前刀使えるんだってな!」

どこから聞いてきたのか、ルフィが思い出したように言った。

「!・・・・・フン、・・・ああ、何かに体をくくりつけられてなきゃ、一応な」
「刀は?」
「取られたよバカ息子に。命の次に大切なおれの宝だ・・・!!」
「へ───、宝物か。そりゃ一大事だな。・・・よし!あのバカ息子からおれが刀を奪ってやる!!」
「何?」
「そしておれから刀を返してほしけりゃ、仲間になれ」
「たち悪ィぞ、てめェ!!」

─── ほんっとに、何なんだコイツは!!

「よし!行ってくる!!」
「おい待て!!」

ルフィは止めるゾロを気にも留めず、海軍基地の方へダッシュして行った。

「・・・基地にのり込むつもりかよ・・・。バカか、あいつは・・・!!」

走るルフィの背中に、ゾロは思わずつぶやいた。







そして、その当の海軍基地では屋上に大きな銅像を立てる作業を行っていた。
勿論ここの海軍のトップである、モーガンの銅像である。
その作業を見守るモーガンに、息子のヘルメッポが噛み付いた。

「親父っ!!なんで仕返しに行かねぇんだ!!おれを殴りやがったんだぜ!!?親父にも殴られたことのない、おれの顔を!!!」

そんなヘルメッポに、モーガンは静かに言った。

「・・・・・おれが今までなぜお前を殴らなかったか、わかるか?」
「・・・そりゃあ、親父にとっておれが・・・」
「そうお前が・・・、殴る価値もねェウスラバカ息子だったからよ!!!」

モーガンはそう怒鳴って、ヘルメッポを思いっきり殴り倒した。

「何でおれが貴様のケンカの尻ぬぐいしなきゃならねェんだ。・・・てめェがおれの偉さを利用するのは構わんが、おれが手を下すのは、おれに逆らった奴だけだ!!!」

そしてヘルメッポのあごを掴み、

「勘違いするなよ。てめェが偉いんじゃねェ!!偉いのはてめェの親父!!つまりおれだ」
「・・・・・」

ヘルメッポは怯えて声も出ない。

「・・・そういや」

モーガンは海兵の報告を思い出して言った。

「ネズミが一匹、おれの磔場に侵入したらしいな」
「へ・・・?あ・・・ああ、あのチビのことかい・・・」

ヘルメッポは床にへたり込んで言った。腰が抜けて立てない。

「あいつなら、おれが・・・」
「ちゃんと殺してきたんだろうな」
「は?」

ヘルメッポは父親の言動に慌てる。

「いや・・・、だって殺すって・・・。ありゃまだホントガキだしよ・・・。自分で何したかなんて・・・」

モーガンはそんなヘルメッポを無視し、一人の海兵に命じた。

「おいお前、町へ行って殺して来い。」
「え・・・」
「どんなガキでもおれの命令に背けば反逆者だ!!」

命じられた海兵は、さすがに反論する。

「そ・・・そんな大佐!相手はまだ幼い少女です!!・・・・・!!たとえ大佐の命令でも、私には・・・!!」
「できねェってのか?お前は海軍中尉だろう?・・・中尉は大佐より偉くねェよな・・・ん?」
「は・・・はい」

モーガンが凄んだ。

「だったら貴様はおれにたてつく権利はない!!おれが殺れと言ったら殺れ!!」
「で・・・できません・・・!!!」
「てめェも反逆者だ!!!」

モーガンの右腕の斧が、中尉に振り下ろされた。

「・・・!!なにもそこまで・・・!!」

あまりの光景にヘルメッポも思わずつぶやく。

「ちゅ・・・中尉!!」

周りの他の海兵が慌てて中尉に駆け寄った。
それを尻目に、モーガンは言う。

「まァいい・・・、町民共のみせしめに、後でおれが直々に町へ行くとしよう」

そして右腕の斧を大事そうに抱えるとこう言い放った。

「おれは海兵として、この腕っぷしで大佐にまで登りつめた。いいか・・・、世の中称号が全てだ!!!この基地で最高位の大佐であるこのおれは、最高に優れた人間である、ということだ・・・」

海兵たちをじろりと睨み、

「偉い人間がやることは全て正しい!!!・・・違うかてめェら・・・!?」
「はっ!!その通りであります、大佐!!」

海兵たちは、怯えて従うしかなかった。
モーガンは作業中の銅像を誇らしげに見つめると、

「みろ!!これがおれの権力の象徴だ!!!長い年月をかけて今日完成したばかりの、おれの念願の像だ!!さァ早く像を起こせ!!この基地の頂点におれの偉さを示すんだ!!」

銅像を立てる作業が再開された。







刀を探しにやってきたルフィは、海軍基地の真下までやってきた。

「おかしいなー、海兵が全くいねェ。どっかで会議でもやってんのかな?」

それもそのはず、基地の海兵は全て屋上での銅像設置作業に借り出されているのだ。
そんなこととは知らないルフィは、困ってしまった。

「これじゃ刀どころか、ばか息子の居場所も聞き出せねぇよ・・・」

ふと見上げると、屋上で何かやってる模様。

「ん?なんか上で声がしたかな?・・・行ってみよう!」

屋上へ向け、反動をつけて腕を伸ばす。
屋上の角に手が届いた。

「ゴムゴムの・・・ロケット!!!」

─── その頃、屋上では引き続き設置作業が進められていた。

「引け!!引け!!」

ガチン・・・。

作業中に、誤って像の腕部分が屋上の建物にかすった。
モーガンはそれを見逃さない。

「オイ、ちょっと待て・・・!!!今・・・ぶつけやがったな!?」
「も・・・申し訳ありません、不注意でした」

海兵が慌てて詫びる。

「貴様、おれがこの像の完成をどれだけ待ち望んだと思ってやがる・・・!!早々に傷つけやがって・・・!!」
「申し訳ありません大佐!!責任持って修繕を・・・!!」
「この像はおれ自身だと思え・・・!!キズ一本、汚れの一つでさえ、大佐への反逆だとそう思え!!!思い知れ!!」

海兵に斧を向けた時だった。
地上から、びよんっと飛んでくるものがあった。勿論ルフィだ。

「うわっ、飛びすぎっ」

思った以上に反動がついてしまったらしく、屋上を飛び越えてしまった。

「なんだありゃ」
「下から何か飛んで来・・・」

ルフィは思わず作業中の像に捕まった。

「止まった!」

ルフィは止まったが、さらにその反動で作業中の海兵たちの手が、像を取り巻くロープから離れる。
と、いうことは・・・。

バカッ!!

支えのなくなった銅像はゆっくりと倒れ、屋上の角で真っ二つに割れてしまった。
その様子を、海兵たちとヘルメッポはなすすべもなくただみつめるしかない。
そして長い間待ち続けていた自分の象徴を粉々にされたモーガンは、ショックで声も出ない。
そんな彼らに、ルフィは、

「ご・・・ごめんなさい」

とりあえず素直に謝った。

「あいつを捕まえろ、おれが殺す!!!!」

怒り心頭のモーガンが大声で怒鳴る。

「は・・・、はっ!!只今」

その迫力に、海兵たちはさらに怯えた。
ヘルメッポが叫ぶ。

「親父、こいつ!!おれを殴った奴だよ!!だから言ったろ、ろくな奴じゃねェんだ!!」
「お前、探してたんだよ!!」

ようやく見つけたヘルメッポを引っ張って、ルフィは建物の中へ走って行った。

「はあああああ、離せ貴様。親父、助けてェ!!!」
「追えェ!!」

海兵たちが後を追いかける。
その時、別の海兵が下で何かを見つけた。

「大佐、磔場に誰かいます!!」
「何ィ・・・!!?次から次へ反逆者か!!!皆殺しにしてやる・・・!!」

モーガンの怒りは収まらなかった。






そして、その磔上ではコビーがゾロの元にいた。

「・・・ええ!?ルフィさんが基地の中へ?またムチャクチャなことを・・・!!」

コビーが呆れて言った。

「本当だぜ、何者なんだあいつは」

ゾロも呆れる。
コビーはそんなゾロの縄をほどき始めた。

「おい、いいのか!おれに手を貸せばてめェが殺されるぞ!」

慌ててゾロが言った。

「あなたに捕まる理由はない筈です!!ぼくはこんな海軍見てられない!!」

コビーは言い切った。

「ぼくはきっと正しい海兵になるんです!!ルフィさんが海賊王になるように!!」

その言葉にゾロは心底驚いた。

「何?か・・・海賊王だと・・・!?意味わかって言ってんのか」

コビーが笑う。

「えへへへ・・・、ぼくも驚きましたけど。だけど本気なんです。彼はそういう人です!!」

その時だった。
基地屋上からの銃弾が、コビーを襲った。
ゾロは野獣の目で屋上を見上げた。







─── 一方その頃のルフィ。

「ゾロの刀はどこだ!!」

海兵たちの追っ手も気にせず、ゾロの刀を探す。

「ゆう!!言うから引きずらないでっ!!」

ヘルメッポの弱々しい叫びが基地内の廊下に響いていた。
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