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第5話 海賊王と大剣豪

ルフィはゾロの刀を探して、基地内を走り回っていた。
ヘルメッポを引きずり倒しながら。

「はやく言えよ!!ゾロの刀はどこにあるんだ!」
「だ・・・だがら言うがら・・・!!引きずるのやべてくでっ!!」

ヘルメッポは息も絶え絶えである。

「よし言え」

ルフィがようやく止まった。
「おれの部屋にあるんだ。も・・・もうとっくに通り過ぎた」
「先に言えよ、戻んなきゃいけねェだろ」

喘ぎながら言うヘルメッポに、ルフィは一発かます。

「いたああ、また殴ったあー!!」

ちょうどその時、追っ手の海兵たちが追いついてきた。

「動くな!!おとなしく捕まるんだ」
「いやだ」

海兵たちの言葉に、ルフィは素直に反論する。
そして。

「撃てるもんなら撃ってみろ!!」
「ん?」

ヘルメッポを盾に海兵たちへ突っ込んでいった。

「ぎいいやあああああ」

ヘルメッポの叫びが哀しく響いていった。







「あああああああ!!」

ちょうどその頃、磔場でも同じように叫び声が響いていた。
コビーだ。

「撃たれたああ、血だああ!!血が出たああ」

基地の屋上から放たれた銃弾は、コビーの肩をかすめたのだ。

「死ぬううああ~~~~~っ!!!」
「・・・・・生きてたか・・・」

その様子を見て、磔られたままのゾロはほっと息をついた。

「すぐに逃げろ、あいつらが下りてくるぜ」
「はっ・・はふっ・・・・・!!」

撃たれたショックを引きずってはいたが、コビーはようやく少し落ち着きを取り戻した。

「いえ!!・・はっ・・・そうだ。あなたの縄を解かなきゃ・・・!!」

そして痛む肩をかばいながら、必死で体を起こした。

「おれはいいんだ。一ヶ月耐えれば助かるんだから。早く行・・・」
「助かりませんよ!!」

コビーがゾロの言葉をさえぎった。

「あなたは三日後に処刑されるんです!!」
「何言ってやがる・・・!おれは、ここで一ヶ月生き延びれば助けてやるとあのバカ息子が約束を・・・」
「そんな約束!!初めから守る気なんてなかったんです」

コビーは痛みをこらえて言った。

「だからルフィさんはあなたにかわってあいつを殴ったんだ・・・!!!真剣に生き抜こうとしてたあなたを踏みにじったから!!」
「・・・・・!!な・・・何だと・・・・・!!!?」

コビーの言葉に、ゾロも驚きを隠せない。

「もう海軍はあなた達の敵に回ってるんです!!お願いです!!この縄を解いたらルフィさんを助けてください!!彼は僕の命の恩人なんです!!あなたに海賊になれとまでは言いませんが、ルフィさんが強いというのは本当です!!あなた達が手を組めば、きっとこの町からだって逃げ出すことが出来るでしょう!!逃げて下さい!!」

コビーが必死に訴えたその時だった。

「そこまでだ!!モーガン大佐への反逆につきお前達二人を、今この場で処刑する!!!」

海兵たちが、ゾロとコビーへ銃を向けていた。







またその頃、ルフィはようやくヘルメッポの部屋にたどり着いていた。

「この部屋だな」

見回すと、窓際の壁にかけてある鎧の下に、刀が立てかけられていた。

「あっ、あった!!刀っ!!」

ヘルメッポを抱えたまま、刀の元に駆け寄る。

「・・・でも、3本もあるぞ。おい、ゾロの刀はどれだ」

抱えたヘルメッポに問いかけたが・・・、

「なんだ気絶してるよ」

ヘルメッポは泡を吹いて気絶していた。よっぽど盾にされたのが恐かったようだ。
ルフィは、ふと窓の外に目をやった。

「磔場でなんかやってる・・・」

そして気づく。

「コビー!」







「─── 基地を取り囲め!!あの麦わら小僧は絶対逃がすんじゃねェぞ!!!」

磔上のゾロとコビーを取り巻く海兵たちのもとに、モーガンも下りてきていた。

「面白ェ事やってくれるじゃねェか・・・、てめェら3人でクーデターでも起こそうってのか?」

モーガンは右腕の斧を肩に担ぎながら言った。

「ロロノア・ゾロ・・・。てめェの評判は聞いていたが、このおれを甘くみるなよ。貴様の強さなど、おれの権力の前にはカス同然だ・・・!!!」

そして海兵たちに命令した。

「構えろ!!」
「・・・!!」

ゾロは銃口を見つめる。

─── おれは・・・、こんなところで死ぬわけにはいかねェんだ・・・!!!おれにはやらなきゃいけねェ事があるんだ!!約束したんだ・・・・・!!







今から10年前。

ゾロは剣術道場に通っていた。
剣術は彼の性に合っていたらしく、子供ながらその道場では一番の強さにまで成長していた。
そして、その道場で敵のいなくなったゾロは、隣村の少し有名な先生の道場に通い始めた。
その道場でも頭角を現したが、1人だけ勝てない相手がいた。
道場の先生の娘である。

名を、くいな。

何度も何度も勝負を挑むが、一度だって勝てたことはなかった。
その日もゾロは、くいなに勝負を挑んでいた。

「や───―っ」

バシッ!!

今日も、くいなの渾身の一撃がゾロの眉間に入った。

「勝者、くいな!!」
「二刀流ゾロの負け!!」
「これでゾロはくいなに0勝2000敗だぞ、あーあ・・・」

ゾロとくいなの勝負を観に来ていた、ゾロと同じ道場出身の友達がため息をついた。

「フンッ!!なんて情けないの?相変わらず弱いわね、・・・男のくせに!!」

くいなが呆れて言った。

「おい!!ゾロは弱くねぇぞ!!」
「そうだ!!おれ達の道場で一番強えんだぞ」
「大人も入れて一番だぞ!!」

友達たちが必死で言い返すが、

「あっそ、でも私より弱いじゃない。剣2本使えようが、弱い奴は弱いのよ!負け犬は黙ってなさい」

ぴしゃりと言って、くいなは戻って行った。

「くそっ」

敗れたゾロは、言い返す言葉がない。
友達たちが口々に文句を言った。

「くいなの奴ムカつくよなーっ!!ちょっとかわいいけどよー」
「本当、腹立つ女だぜ!!道場の先生の娘だからっていばりやがって」

そこへ、ゾロとくいなの勝負を遠くから眺めていたコウシロウ先生が、笑いながら近寄ってきた。

「また負けちゃったか。ゾロ、君は強いのにねェ」
「先生っ!!自分の娘だからって秘密の特訓とかしてんじゃねーのかよ!!」
「ずるすんなよ!!」

見ていた周りのみんなも口々に文句を言う。

「いやいや、そんな事しないよ!」

先生がみんなをなだめる。

「くそォ!!!なんでおれが、あんな女なんかに勝てねェんだよ!!!」

ゾロが竹刀を叩きつけた。

「でもゾロ、くいなは君より少し年上だし」
「おれは大人にでも勝てたんだ!」

ゾロが叫ぶ。

「おれは将来海へ出て世界一強い剣豪になるんだから、今からあんな奴に敗けてるわけにはいかねェんだよ!!!」





その夜。
道場の庭では、わらで出来た人形相手に竹刀を振るうくいなの姿があった。
そこへやってきたのはゾロだった。

「くいな!!おれと真剣で勝負しろ!!!真剣は持ってるだろう!!!」
「私と?いいよ」

満月の夜だった。
木々がざわめく。

「行くぞ」
「来い!!」

二刀流のゾロ対一刀流のくいな。
真剣での初めての勝負だった。
しかし勝負は数合打ち合うだけで決まった。
くいなの剣がゾロの2本の剣を払い、ゾロの顔の横に突き立てられる。

「私の・・・、2001勝目ね」
「畜生ォ・・・くやしい・・・!!!!」

ゾロは歯を食いしばる。
涙が後から後からあふれてきた。





しばらくして、2人は道場の縁側に腰を下ろしていた。

「本当はさ・・・、くやしいのは私の方・・・」

くいながぽつりと言った。

「え!?」

ゾロは耳を疑った。

「女の子はね、大人になったら男の人より弱くなっちゃうの・・・。私ももうすぐ、キミ達に追い抜かれちゃうわ・・・。ゾロはいつも言ってるよね、世界一強い剣豪になるって。女の子が世界一強くなんてなれないんだって・・・、パパが言ってた・・・!!」

くいなの目に涙があふれる。

「ゾロはいいね、男の子だから。・・・私だって世界一強くなりたいよ!!・・・胸だってふくらんできたしさ・・・。私も男に生まれてくれば・・・」
「おれに勝っといてそんな泣き事言うなよ!!!」

ゾロが叫ぶ。

「卑怯じゃねェかよ!!お前はおれの目標なんだぞ!!!」
「ゾロ・・・」
「男だとか女だとか!!おれがいつかお前に勝った時もそう言うのか、実力じゃねェみたいに!!!一生懸命お前に勝つ為に特訓してるおれがバカみてェだろ!!そんな事言うな!!!」

ゾロは刀を掴んで言った。

「約束しろよ!!!いつか必ずおれかお前が世界一の剣豪になるんだ!!どっちがなれるか競争するんだ!!!」
「バカヤロー・・・!!」

ゾロの言葉に、くいなは涙を拭いて笑った。

「弱いクセにさ」

「約束だ」

2人はがっちりと手を握り合った。





しかし、運命とはわからないもの。
翌日、悲劇が起こった。

「ゾロ!!大変だ、くいなが!!!」

ゾロの元に悲報が届いた。

「家の階段で転んで・・・、死んだ!!!」

ゾロは愛用の刀を掴んで飛び出した。
脳裏には昨日のくいなの泣き笑いの顔が浮かぶ。

─── 嘘だ!嘘だ!!嘘だァ!!!

信じられなかった。
だが、顔に布をかけられ、目の前に横たわっているのは紛れもなく”くいな”だった。
その姿に、ゾロは思わず怒鳴っていた。

「畜生ォ!!お前きのうおれと約束したじゃねェかよ!!逃げんのかよ、くいなァ!!」
「おい、ゾロよせ!!」

つかみかからんばかりのゾロを、周りの大人が止めた。

「・・・人間はなんて脆いんだろうね、・・・ゾロ・・」

コウシロウ先生がつぶやく。
その言葉にゾロはようやくおとなしくなった。

─── くいなは死んでしまった。
─── なら、あの約束はおれ1人で守らなきゃ

「先生っ!!あいつの刀おれにくれよ!!」
「・・・・・ああ、いいとも」

必死で頼むゾロに、コウシロウ先生は快諾してくれた。

「おれ、あいつのぶんも強くなるから!!!天国までおれの名前が届くように、世界一強い大剣豪になるからさ!!!!」

ゾロは泣きながら、くいなの形見の刀に誓った。







─── 約束したんだ・・・・・!!!おれはこんなところでくたばる訳には・・・!!!

銃口がゾロとコビーに向けられる。

「射殺しろ!!!」

モーガンが叫ぶ。
その時だった。

「ゴムゴムの・・・ロケット!!」

ヘルメッポの部屋から反動をつけて飛び出したルフィが、ゾロたちに放たれた弾丸を全て受けたのだ。

「お前っ!!!」
「ルフィさん!!!」
「麦わら・・・」

ルフィの体の弾丸を受けた部分がびよーんと伸びる。
そして。

「効かーん!!!!」

受けた弾丸をどびゅんと全て弾き返した。
弾かれた弾丸は、放った時と同じスピードで海兵たちを襲う。

「うおおおおおっ!!!」

海兵たちは慌てふためいて避ける。

「んなっはっはっはっは!!!」

それを見て、ルフィは大笑いした。

「てめェ・・・!!!いったい何者なんだ!!!」

ゾロが叫ぶ。
コビーは泡を吹いて気絶していた。
その問いにルフィは笑って答える。

「おれは、海賊王になる男だ!!!」

そして取り戻してきた刀を3本、ゾロに見せた。

「ほら!お前の宝物どれだ?わかんねェから3本持ってきちゃった」
「3本ともおれのさ・・・、おれは三刀流なんでね・・・」

ルフィは刀を抱えたまま、海兵たちを見やって言った。

「ここでおれと一緒に海軍と戦えば、政府にたてつく悪党だ。このまま死ぬのとどっちがいい?」

ゾロがにやりと笑った。

「てめェは悪魔の息子かよ・・・。まァいい・・・、ここでくたばるくらいならなってやろうじゃねェか・・、海賊に!!!」
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