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第14話 無謀っ!!

「─── よう・・・、戻ったか、モージ副船長」
「も・・・申し訳ありません、バギー・・・船長・・・」

満身創痍のモージが酒場に戻ってきた。
今にもぶっ倒れそうである。
しかし彼は、必死で戻ってきた。バギーに、ルフィの事を知らせる為に。

「何!?麦わらの男にやられただと!?ゾロじゃなかったのか、相手は!!」
バギーは信じられなかった。

─── あんなへらへらした男に、モージが???

「はァ・・・、わた・・・しも、み・・・みくびっ・・て、ま・・・した」
モージはもう、息も絶え絶えである。

─── でも、伝えねば・・・、ゴム人間だと・・・

「実は・・・、あ、あの男・・・あの男は・・・」

だが限界だった。

「ゴ・・・・・!!・・・げん・・・」

そう言い残し、モージはとうとうぶっ倒れた。
その言葉に、手下の海賊達が騒ぎ出す。

「・・・!?なんだ・・・、今の・・・!!」
「モージさん、何か伝えようとしてたぞ」
「あそこまでフラフラになりながら、一体何を・・・」
「『ご・・・げん』としか聞こえなかった・・・」
「『ご・・・げん』って一体・・・」

だが、バギーはモージの決死の伝言を理解したようだ。

「成程な・・・、それでのびのび戦いやがったとでも言うのか・・・!?」

バギーが叫ぶ。

「あの野郎、『ごきげん』だと!!?おれはもうキレた!!!てめェら、町を消し飛ばす準備はまだか!!急げ!!!」

・・・・・、残念賞。
ゴムにんげん、とうわ言のようにつぶやくモージの言葉もまた、バギーの怒声にかき消されてしまっていた。







町の外れ。ここは、町民達の避難所。
町民達は、町から少し離れた場所に仮設住宅を建て、避難生活を余儀なくされていた。
表に出ていた町民の一人が気づく。

「ん?あれは・・・、ペットフード屋のシュシュじゃないか!」

シュシュがペットフードの箱を咥え、避難所にやってきた。
町民達がいくら非難させようとも店の前を動かなかったシュシュが、ようやく戻ってきてくれたのだ。

「よかったよ、無事で!みんな心配してたんだぞ」
町民の一人が笑顔で迎える。

「しかし、ひどいキズだ。海賊達にやられたんだな」
「すぐに手当てを」

キズだらけのシュシュを見て。町民達は口々に言った。
そして一人の年配の町民が気づいた。

「おい、町長のジジイはどうした」
「そうだ・・・、町長。エサをやりに行くと言ってここを出たのに、シュシュだけ帰ってくるなんて変だな」

町民達がざわめく。

「まさか、町長さんの身に何か・・・!」
「心配だな。・・・よし、おれが見てこよう」
「バカモン、待て!」

若い町民の言葉に、年配の町民がたしなめた。

「町長は海賊共に捕まるほどバカじゃない。あやつは誰よりも町のことを知り尽くしておるのだからな。ただ・・・」

しかし、彼は町長が出かける時のやり取りを思い出した。
町長がエサをやりに出かける時、彼は早まったマネはするなとクギをさしていたのだ。
町民が全員無事なら、町などすぐに建て直せるからだ。

「・・・ただ、思い入れも深すぎる。わしらにとってはあまりにも・・・!強く止めてはおいたものの、バカな事を考えなければいいが・・・」

長い付き合いなだけに、町長の性格はよくわかっている。
大丈夫だとは思っているが、一抹の不安も残った。







そして場面は戻って、ペットフード屋跡。
燃え落ちた跡を見つめるルフィに、ナミが近寄ってきた。
もう、先ほどまでの怒りの表情ではない。

「どなってごめん!」
ナミは素直に謝った。

「ん?」
ルフィはズボンのほこりをはたきながら立ち上がった。

「いいさ、お前は大切な人を海賊に殺されたんだ。なんかいろいろあったんだろ?別に聞きたくねェけどな」

そんなルフィの言葉に、ナミは複雑な表情で少し笑った。

「ぬぐぐぐぐ・・・!わしはもう、我慢できーん!!!」

それまで黙っていたブードルが、突然大声を上げた。

「酷さながらじゃ!!さながら酷じゃ!!シュシュや小童がここまで戦っておるというのに、町長のわしがなぜ指をくわえて我が町が潰されるのを見ておらねばならんのじゃ!!!」

ブードルはこぶしを固める。

「ちょっと、町長さんおちついてよ!」
ナミが慌ててなだめるが、

「男には!退いてはならん戦いがある!!違うか小童っ!!!」
「そうだ!おっさん!!」

叫ぶブードルに、ルフィは笑って同調する。

「のせるな!!」
あおるルフィをナミは怒鳴りつけた。

「40年前さながらっ!!」
ブードルは語り始めた。

「ここはただの荒地じゃった・・・。そこから全てを始めたのじゃ。『ここにおれ達の町をつくろう。海賊にやられた古い町のことは忘れて・・・』とな」

語るブードルの顔は誇らしげであった。

「・・・はじめはちっぽけな民家の集合でしかなかったが、少しづつ少しづつ町民を増やし、敷地を広げ、店を増やし、わしらは頑張った!!」

そして町に向かって両腕を広げる。

「そして見ろ!!そこは今や立派な港町に成長した!!今のこの町の年寄りがつくった町なのじゃ!!わしらのつくった町なのじゃ!!」
ブードルの魂の叫びを、ルフィとナミは黙って聞いていた。

「町民達とこの町は、わしの宝さながら!!!己の町を守れずに、何が町長か!!!わしは戦う!!!!」

その時だった。

「撃て!!!特製バギー玉!!!」

ドゴゴゴゴオン!!!

酒場の屋上から放たれたバギー玉が、一瞬にして目の前の通りに立っている建物全てを破壊したのだ。





「ぬあっ」
「きゃあ」

その勢いで、ルフィたちも吹っ飛ぶ。
起き上がったナミが見たものは、もう建物ではない。残骸だった。

「んぬ・・・、わしの家まで!!!」
「あ!ゾロが寝てんのに!!!」

まだ土煙がもうもうと立つ建物の残骸に向かい、ルフィは叫んだ。

「おいゾロ、生きてるかァ!!?」

声がしない。

「死んだか・・・!?腹まきの小童・・・」

ブードルがそう言った時、残骸が音を立てて崩れた。

「ん?」

土煙が晴れる。

「あ─── 、寝覚めの悪ィ目覚ましだぜ」

ゾロが姿を現した。

「よかった!生きてたか!」
「・・・・・、何で生きてられるのよ・・・!!」

ほっとするルフィの横で、ナミはまたもやこの得体の知れない海賊たちの頑丈さに驚いていた。
その横で、ブードルは自身の胸を叩いた。

「・・・!!胸をえぐられるようじゃ・・・!!!こんなことが許されてたまるか!二度も潰されてたまるか!!突然現れた馬の骨に、わしらの40年を消し飛ばす権利はない!!!」

そして持っていた槍を振り上げる。

「町長はわしじゃ!!!わしの許しなく、この町で勝手なマネはさせん!!!いざ勝負!!」

そう言ってブードルは飛び出す。
しかし、それをナミが必死で止めた。

「ちょ・・、ちょっと待って町長さん」
「放せ、娘っ!!」
「あいつらの所へ行って何ができるのよ!無謀すぎる!!」

「無謀は承知!!!!」

「待っておれ、道化のバギーっ!!!」

ブードルはナミを振り払い、酒場へむけて駆け出して行った。

「町長さん・・・、泣いてた・・・!!」
ナミが心配そうに、去って行った方を見つめる。

「そうか?おれには見えなかった」
ルフィはにやっと笑う。

「なんだか盛り上がってきてるみてェだな!」
「しししし!そうなんだ」
「笑ってる場合かっ!!」

ニコニコ笑いあう二人に、ナミが怒鳴りつけた。
ルフィは自信ありげに言う。

「大丈夫!おれはあのおっさん好きだ。絶対死なせない!!!」
「こんなとこで笑ってて、どっからその自信がわくのよ!」

不安を隠せないナミに、ルフィはさらに自信を増して言った。

「おれ達が目指すのは”偉大なる航路(グランドライン)”、これからその海図をもう一度奪いに行く!」

そして、ナミに手を差し出した。

「仲間になってくれ!海図いるんだろ?宝も」
「・・・・・」

ルフィの改めての申し出に、ナミは言った。

「私は海賊にはならないわ!”手を組む”って言ってくれる?お互いの目的の為に!!」

そして、差し出されたルフィの手をぱんっと叩いた。







「2発目ーっ!!!」

酒場の屋上では、再度バギー玉の発射準備がなされていた。

「準備できました!!!」
「よーし撃・・・」

「道化のバギー!!!」

発射寸前、酒場の前で叫ぶ声がした。ブードルだ。

「出て来ォーい!!!!」
槍を携え、バギーを睨みつける。

「・・・?何だ、あいつは・・・」
発射を邪魔され、バギーは不機嫌にブードルを見下ろした。





「あんたも行くの?」
ナミがゾロを気遣う。重傷を負っているのだ。

「お腹のキズは?」
「治った」
「治るかっ!!」

ゾロは、左腕に巻いていた黒い手ぬぐいを頭に巻きなおして言った。

「ハラの傷より・・・、やられっぱなしで傷ついたおれの名の方が重傷だ」
ぎゅっと、気合を入れるように手ぬぐいを締める。

「いこうか!」
「ああ、いこう」

ルフィも指を鳴らしてニヤリと笑う。

「あっきれた・・・」
ナミはため息をついた。
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