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第20話 泥棒道

「おれの財宝を放さねェかァ!!!」

バギーの上半身が、小屋から大きな包みを抱えて出てきたナミに向かって猛スピードで飛んでいく。

「しまった!見つかった!!」
「どこまでもこのおれを出し抜けると思うなよ、ナミ!ハデに斬りキザんでやる!!!」

両手にいくつものナイフを構えている。
その時、ルフィはバギーの下半身が傍にあることに気づいた。

「メッキのかけらさえ、てめェには渡さん!!!」
「きゃあああ」

バギーがナミに迫る、その時だった。

ゴン!

「はうっ!!!」
「え?」

ルフィがバギーの股間を蹴り上げたのだ。

「うごおおおっ!!!」

さすがに急所。バギーは耐え切れず地面に這いつくばった。

「お・・・おのののれ・・・、ゴムゴム!!よくもおれのかか・・・下半身を・・・!!」
「お前の相手は、まだおれだ」

にっと笑うルフィの横で、バギーの下半身はじたばた暴れている。

「助かった・・・」

ルフィの機転で難を逃れたナミは、ほっと息をついた。
そんなナミに、ルフィが言う。

「おいっ、その宝置いてどっか行ってろ!また追っかけられるぞ」

聞き捨てならなかった。

「宝を置いてけですって!?いやよ!!何で私の宝を置いていかなきゃいけないのよ!!」

さらに聞き捨てならなかった。

「・・・て!てめェの宝だァ~~~!?」
バギーが地面に転がったまま、ナミをにらむ。

「当ったり前でしょ!」
ナミが堂々と述べる。

「海賊専門泥棒の私が、今、海賊から宝を盗んだんだからこの宝は私のものだって言ってんの!!!」

「あー、なるほど」
ルフィも納得。

納得できないのはただ一人。

「たわけ!おれの宝はおれのだ!!盗んじまえばてめェのモンになるとでも思ってんのか!!?てめェは一体どういう教育受けてきたんだ!」
バギーが叫ぶ。

「悪党が悪党に説教?持論のばかばかしさはお互い様でしょ?」
「何い!?」
「私は海賊に間違いを正されるほど、堕ちちゃいないつもりだけど」

ナミはそう言って、ペロッと舌を出した。
その言葉にバギーは怒り心頭だった。

「・・・・・!覚悟はできてんだろうな、ナミ・・・」

そして叫ぶ。

「バ~ラ~バ~ラ~・・・・・フェスティバルッ!!!

遠くにあったバギーの下半身も含め、体のパーツが細切れになり宙を舞う。

「がはははははははは!仲間を援護できるもんならやってみろ、ゴムゴムっ!!」
「・・・くっそー、もっとバラバラになりやがってっ!これじゃ戦いようがねェよ!」

ヒュンヒュンと宙を舞うパーツに、ルフィは焦った。
しかし、また気づいた。
地面をすたすたと歩く、足。

「・・・ん?何だ、足は飛べねェのか?」

ルフィは足に飛びかかった。
「つかまえた!!足!!」

その時、バギーはナミを追い回していた。

「おれの財宝を返せ!!」
「返さないっ!」

ナミも必死で逃げる。
ルフィは、足から靴を脱がせた。

「ん?」

そして、足の裏をくすぐる。

「ぶうっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっや・・・、やめひゃひゃ」
「いや ───っ!!」

バギーはくすぐりにたまらず笑い出す。
そんなこととは知らないナミは、バギーの異変に恐怖を覚える。

「これでどうだ!」
「ふぐっ・・・!!」

つま先を地面に打ち付ける。これはイタイ。

「しぶといな・・・、このっ!!」

今度は内側のくるぶしの辺りを、ぎゅううっとつねる。これもイタイ。

「うぎゃあああああ!」
「ギャ ─── っ!!!」

バギーの地獄の形相に、ナミは本気で逃げ出した。

「・・・いい加減にせェや、コラァ!!」

バギーがルフィの方に、ようやく振り向く。
その時、ナミが反撃を開始した。

「いい加減にするのは・・・、あんたよっ!!」

持っていた宝の包みを、反動をつけてバギーの顔面めがけて思いっきりぶつける。
しかし、それはバギーにとって願ってもない、宝を取り返すチャンスだった。
宝をがしっと掴んで、バギーはにやりと笑う。

「財宝は返してもらったぞ・・・」
「ん・・・!離せっ」

ナミは必死で宝を引っ張る。しかし、バギーの手は離れない。

「離せだァ!?離すのはてめェだろうが!」
バギーのナイフを握った手が、ナミに襲い掛かる。

おれの宝だ!!!

「・・・相手はおれだって・・・」
「ん?」
「言ってるだろ!!!」

ルフィが助走をつけて、思いっきりバギーの顔を蹴りつける。
財宝ごと。

ガシャアン!!

「命中っ!!」

お宝があたりに散乱する。
バギーの体のパーツも、同じように散乱していた。





ルフィがにっと笑う。

「今のとどめは、町長のおっさんの蹴りだと思え!!」

彼は忘れてなかったのだ。
町長の怒りを。悲しみを。

ルフィの攻撃で九死に一生を得たナミは、呼吸を落ち着けながらルフィの方を振り向いた。

「ありがと、助かったわ」
「うん、気にすんな」

そして、瓦礫の山の方に目をやる。

「あ、そうだ。海図!」
「ああっ、私の宝が散らばってるっ!!」

2人は慌てて瓦礫の山に向かった。
しばらくの後・・・。

「よしっ!手に入れたぞ、”偉大なる航路(グランドライン)”の海図っ!!」

海図を見つけ出したルフィは、それをしっかりと握り締めた。
しかし、そのルフィの背後で揺らめく影があった。

「おい・・・、待てゴムゴム!!」

バギーの頭部が宙に浮かんでいた。
しぶとく起き上がってきたのである。

「げっ、まだ生きてる」

さすが能力者といおうか。普通の人間では即KOなところなのだが。

「貴様を殺す」
バギーが叫ぶ。

「集まれ!バラバラパーツ!!!」

散らばった体のパーツが集まる、はずだった。

「あれ!!!?」

集まったのは、両手と両足のみ。
コンパクトな2頭身の体型になってしまった。

「─── 探してるのは、これ?」

ナミがロープでぐるぐる巻きにして足で踏みつけている物は、バギーの体の残りのパーツであった。
ルフィを縛り上げた時にも見せた、あの早業である。

「うげっ!おれのパーツっ!!」

それを見てルフィは笑い出した。

「はっはっはっはっはっはっはっは!さすが泥棒、後は任せろ!!」

そう言って、両腕を後方へびよーんと伸ばす。

「吹き飛べ、バギー!ゴムゴムの・・・」

後方へ伸びた腕が、反動でバギーに向かってくる。

「やめろあああああ~~~~~っ!!!」

バズーカ!!!

ズドオン!!!

両掌が大砲のようにバギーに炸裂する。
バギーは空の彼方へ消えていった。
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