第21話 町
「勝った!!」
ルフィはバギーが消えていった空に向かい、高々と両腕を突き上げた。
澄み切った、青い空である。
「これであらためて仲間になるんだよな!」
ルフィは振り返って、ナミに笑いかけた。
「手を組むの」
ナミは言い直した。
「いいよ。あんた達といると儲かりそうだしね」
そして、かかえたお宝をいとおしげに抱きしめる。
「バギーったらさすがに財宝にこだわる奴だけあって、宝の質がいいの!これだけあれば一千万ベリーはくだらないはずよ」
ルフィはすたすたと、地面に転がっている麦わら帽子の元に近づいていった。
「─── ねえ、2こに分けたから半分持ってよ。この宝、重くてたまんないわ」
しかし、ルフィは麦わら帽子をじっと見つめている。
それは、バギーのナイフの跡が残る、無残な姿になっていた。
その様子に気づいたナミが気の毒そうに言う。
「そんなに大切なの?その帽子・・・」
「ああ、でもまあいいや。まだかぶれるし!バギーもぶっ飛ばしたから気は済んだ」
ルフィはにっと笑って、両手で帽子をしっかりとかぶった。
ルフィたちの目の前には、倒されたモージ、カバジ、熟睡するゾロ、気絶してるブードル・・・。
瓦礫の山の中には、バギーが倒されたことを知って気絶するフリをする海賊の手下達なんかもいたが、ルフィたちはそっちのことはすっかり忘れていた。
「おいゾロ、起きろ!行くぞ」
ルフィは寝ているゾロの頭をパンパンと叩いて起こす。
ゾロはむくっと起き上がった。反射的に刀の柄に手をやる。
「・・・ん?・・・、カタはついたのか・・・・」
「ああ、海図も宝も手に入れた」
「そうか・・・」
ゾロも周りの様子を見て、刀から手を放した。
そしてふらつく頭に手をやる。
「・・・あー・・・、ダメだ。歩けそうにねェ」
「あたりまえよ。それで歩けたら人とは認めないわよ、あんた達」
ナミが呆れたように言う。
「・・・なんでおれも入ってんだ」
「あんたが一番疑わしいのよ!!」
不思議そうに言うルフィに、ナミは思わず大声を出した。
ふと、ルフィは思い出した。
「そうだ、町長のおっさんも起こさなきゃな!」
その時、ルフィたちの背後で声がした。
「君達・・・」
振り向くと、老若男女たくさんの人達。
彼らはみんな手に、棒切れや竹刀などを携えている。
1人が言った。
「おれ達はこの町の住人だ。海賊達の仲間割れでも起きたのか・・・。何か知っていたら、教えてくれ!」
「何だ・・・、町の人達か。まだ仲間がいたのかと思った」
ナミがほっと息をつく。
「教えろと言われたら、教えない事もないんだけど・・・」
ナミの言葉が終わる前に、町民の一人が気づいた。
「あ!!町長っ!!!」
そしてみんながブードルに駆け寄り、抱き起こす。
「何て事だ!しっかりして下さい!」
「くそっ、一体ここで何があったんだ!」
「海賊達の仕業に違いない!」
町民が騒ぐ中、ルフィが一言、
「あ、ごめん。そのおっさんはおれがぶっ倒した」
言っちゃった。
「何!?」
町民達が一斉にルフィを睨む。
ナミは慌てた。
「ちょっと!そんなことわざわざ言わなくても」
「見てたろ」
「見てたけどそれには理由が・・・」
町民達がルフィたちに向け、手にした武器を構える。
「お前らうちの町長をこんな目にあわせといて、言い訳は聞かんぞ!!」
「何者だ!まさか海賊か!?」
─── う・・・、殺気!ここでうっかり、泥棒だの海賊だの言ったら殺されそう・・・!
「海賊だ!!」
言い切るルフィ。
ナミの心配は現実のものになってしまった。
「やっぱりそうか!!」
殺気立つ町民たち。
横ではゾロが腹を抱えて笑っていた。
「ばかっ!」
何で言うのよ!とばかりに怒るナミに、
「ほんとだろ!」
と、言い返すルフィ。
そして・・・、
「逃げろっ!」
ルフィはゾロと半分のお宝を、ナミはもう半分のお宝を抱えて一目散に駆け出した。
「追えェ!!」
「絶対逃がさんぞ!!」
「町長の敵をとってやる!!」
追いかける、町民達。
走りながら、ナミがルフィに文句を言った。
「何であんたは、話をややこしくすんのよ!」
それには答えず、ルフィは笑って言った。
「いい町だな」
「え?」
「町長のおっさん1人の為に、あんなにみんなが怒ってる!どんな言い訳しても、きっとあいつら怒るぜ!」
ナミは何も言えなかった。
そしてルフィたちは、路地へ逃げ込む。
追いかける町民達の前に立ちはだかったのは・・・、
「ワン!!!!」
「シュシュ!」
「犬っ」
ルフィたちが振り返ると、シュシュが町民達を威嚇していた。
「おいシュシュ!そこをどけ!」
「あいつら悪い海賊なんだ!」
しかし、シュシュは町民達に吠えかかる。
「どうして邪魔するんだ、シュシュ!」
「シュシュ!そこを通せ!!」
シュシュの吼える声を聞きながら、ルフィはにっと笑った。
ルフィたちは何とか追っ手を振り切り、港までたどりついた。
「はあー・・・、怖かった。シュシュのお陰で何とか逃げ切れたわ。何で私達がこんな目にあわなきゃなんないの?」
ナミが息をついた。
「いいだろ別に。おれ達の用は済んだんだから!」
「そりゃそうだけどさ・・・」
港には2艘の舟が舫ってあった。1艘はルフィたちの舟。
もう1艘は・・・、
「これお前の舟なのか?」
ルフィが目を見張った。
「かっこいいなー!いーなー!!」
その舟はなんだかムダにカラーリングされていた。
「・・・そうは思わないけど、私は。バカな海賊から奪ったの」
ナミがそう言った時だった。
「待ってたぜ、泥棒女っ!!!」
その当の舟から、3人の男達が顔を出した。
「あ・・・、あんた達は・・・」
ナミが驚く。
─── まさか、こんなところにいるなんて。
「ここにいれば帰ってくると思ったぜ」
「ぐっしっしっし。まさかこの港で、盗まれた舟に出会えるとは思わなかった」
「おれ達を忘れたとは言わせねェぞ・・・!」
すごむ3人組。
そうこいつらは、ナミがこの島に来る前にだましてお宝を奪った、あの3人組である。
「知り合いか?」
「まあ、ちょっとね・・・」
ルフィの問いに、ナミは苦笑いで答える。
「ちょっとじゃねェ、因縁の仲さ!」
男達が憤慨して言った。
男達はルフィたちに気づくと、
「仲間もいたのか、一緒にお仕置きしてやんなきゃなァ」
1人が舟を下りて、ルフィがかついていたゾロの頭をぺしぺし叩く。
「人の物を盗む事がどんなに悪い事なのか、なァおい、てめェシカトこいてんじゃねェぞコラ。しっかり顔上げろ」
「あァ!?」
ゾロはしっかり顔を上げた。
「!!!?」
「ぎいや~~~~~っ!!!」
まさかのゾロに、3人組は慌てて海を泳いで去っていった。
その頃町の中では。
「あ!町長気がつきましたか!」
ブードルがようやく目を覚ました。
「よかった無事で!」
「一体何があったんだい?町長・・・」
町民達が口々に言う中、ブードルは痛む頭を押さえて起き上がった。
「ぬう・・・、これは!」
ブードルは目を疑った。
彼の目の前に広がるのは、瓦礫の山。
彼が気を失う前までは、酒場があったのに!
「わしらが来た時には、もうこの状態だった」
年配の町民が言う。
「何も見ておらんのか?」
「・・・・・!」
「そうだ!」
若い町民が口を開いた。
「さっきまで妙な3人組がここにいて・・・」
「小童共・・・、あいつら生きておるのか!?」
ブードルは歯噛みした。
「・・・あのバカ!この年寄りに非道なマネを・・・よくも!」
「そのバカ共なら、たった今みんなで追っ払ってやったとこです!」
町民達が騒ぎ出す。
「だが気が済まん!まるで我々をあざ笑うかのようだった!」
「あんな奴らに、町を襲われた私達の悔しさがわかるもんか!」
「やっぱりあいつらとっ捕まえて・・・」
「やかましいっ!!!」
ブードルが町民達をさえぎるように怒鳴った。
「あいつらの文句を言っていいのはわしだけじゃ!!わし以外、あいつらを悪く言うことは許さん!!!」
「何を・・・!どうして海賊をかばうんですか、町長!」
「─── やつらめ、このまま消えるつもりか!」
ブードルは、町民達の問いには答えず、傷の痛みをこらえながら立ち上がった。
「港へ行ったのか!?」
「ええ・・・、港のほうへ逃げました・・・」
ブードルはそう聞くや否や、着ていた古めかしい鎧を脱ぎ捨てながら走った。
「くそっ!わしの町で勝手なことばかりしおって!お前らに言いたいことは山程あるぞ!!」
「よし、行くか!」
港では出港準備が完了したところだった。
二つの舟は、一つに3人が乗るにはそれぞれが小さすぎる。二つの舟を並べて航海する事にしたのだ。
帆を張ると、ナミの舟の帆にはあのマークが。
「お前、その帆バギーのマークついてんじゃねェか」
「だってあいつらの舟だもん。その内消すわ」
舫綱を外し、舟が港を離れる。
その時だった。
「おい待て小童共!!!」
ブードルが息を切らせて走ってきた。
─── わしは死んでもかまわんと思った・・・!
─── 絶望のうちに死んでもかまわんと考えていた・・・!!
そして。
「すまん!!!恩にきる!!!」
涙を流して、ブードルが叫ぶ。
ルフィたちはにっと笑った。
「気にすんな!楽に行こう!!」
明るく言うルフィに、
「言葉もないわ・・・」
ブードルは、町の恩人達を泣き笑いで見送った。
しばらくして、海の上。
「何ですって、宝を置いてきたぁ!?」
ナミの叫びが響き渡る。
「あんたには半分預けておいたのよ!?五百万ベリーよ!?」
「ああ、だって町ぶっ壊れて直すのに金がいるだろ」
しれっと言うルフィにナミが怒鳴る。
「あれは私の宝なの!」
そして、ルフィの船に飛び移りぐいぐいとルフィを海へ叩き落しにかかる。
「やめろ!おれは泳げないんだ!欲しけりゃもっかい取って来いよ!」
「そんな事できるか!!次やったら殺すわよ!!」
「だははははははははは・・・!」
それを見て、ゾロが笑う。
「ばーか」
ナミも笑った。
「・・・なんだ、笑ってんじゃんお前」
「うっさい!!」
ルフィの突っ込みに、ナミがゲンコツで答える。
「効かん!」
ゴムだから。
一行に新しく”泥棒のナミ”を迎え、二艘の舟は海を行く。
次に下り立つ島に待つ、”森の裁き”を知る由もなく。───
ルフィはバギーが消えていった空に向かい、高々と両腕を突き上げた。
澄み切った、青い空である。
「これであらためて仲間になるんだよな!」
ルフィは振り返って、ナミに笑いかけた。
「手を組むの」
ナミは言い直した。
「いいよ。あんた達といると儲かりそうだしね」
そして、かかえたお宝をいとおしげに抱きしめる。
「バギーったらさすがに財宝にこだわる奴だけあって、宝の質がいいの!これだけあれば一千万ベリーはくだらないはずよ」
ルフィはすたすたと、地面に転がっている麦わら帽子の元に近づいていった。
「─── ねえ、2こに分けたから半分持ってよ。この宝、重くてたまんないわ」
しかし、ルフィは麦わら帽子をじっと見つめている。
それは、バギーのナイフの跡が残る、無残な姿になっていた。
その様子に気づいたナミが気の毒そうに言う。
「そんなに大切なの?その帽子・・・」
「ああ、でもまあいいや。まだかぶれるし!バギーもぶっ飛ばしたから気は済んだ」
ルフィはにっと笑って、両手で帽子をしっかりとかぶった。
ルフィたちの目の前には、倒されたモージ、カバジ、熟睡するゾロ、気絶してるブードル・・・。
瓦礫の山の中には、バギーが倒されたことを知って気絶するフリをする海賊の手下達なんかもいたが、ルフィたちはそっちのことはすっかり忘れていた。
「おいゾロ、起きろ!行くぞ」
ルフィは寝ているゾロの頭をパンパンと叩いて起こす。
ゾロはむくっと起き上がった。反射的に刀の柄に手をやる。
「・・・ん?・・・、カタはついたのか・・・・」
「ああ、海図も宝も手に入れた」
「そうか・・・」
ゾロも周りの様子を見て、刀から手を放した。
そしてふらつく頭に手をやる。
「・・・あー・・・、ダメだ。歩けそうにねェ」
「あたりまえよ。それで歩けたら人とは認めないわよ、あんた達」
ナミが呆れたように言う。
「・・・なんでおれも入ってんだ」
「あんたが一番疑わしいのよ!!」
不思議そうに言うルフィに、ナミは思わず大声を出した。
ふと、ルフィは思い出した。
「そうだ、町長のおっさんも起こさなきゃな!」
その時、ルフィたちの背後で声がした。
「君達・・・」
振り向くと、老若男女たくさんの人達。
彼らはみんな手に、棒切れや竹刀などを携えている。
1人が言った。
「おれ達はこの町の住人だ。海賊達の仲間割れでも起きたのか・・・。何か知っていたら、教えてくれ!」
「何だ・・・、町の人達か。まだ仲間がいたのかと思った」
ナミがほっと息をつく。
「教えろと言われたら、教えない事もないんだけど・・・」
ナミの言葉が終わる前に、町民の一人が気づいた。
「あ!!町長っ!!!」
そしてみんながブードルに駆け寄り、抱き起こす。
「何て事だ!しっかりして下さい!」
「くそっ、一体ここで何があったんだ!」
「海賊達の仕業に違いない!」
町民が騒ぐ中、ルフィが一言、
「あ、ごめん。そのおっさんはおれがぶっ倒した」
言っちゃった。
「何!?」
町民達が一斉にルフィを睨む。
ナミは慌てた。
「ちょっと!そんなことわざわざ言わなくても」
「見てたろ」
「見てたけどそれには理由が・・・」
町民達がルフィたちに向け、手にした武器を構える。
「お前らうちの町長をこんな目にあわせといて、言い訳は聞かんぞ!!」
「何者だ!まさか海賊か!?」
─── う・・・、殺気!ここでうっかり、泥棒だの海賊だの言ったら殺されそう・・・!
「海賊だ!!」
言い切るルフィ。
ナミの心配は現実のものになってしまった。
「やっぱりそうか!!」
殺気立つ町民たち。
横ではゾロが腹を抱えて笑っていた。
「ばかっ!」
何で言うのよ!とばかりに怒るナミに、
「ほんとだろ!」
と、言い返すルフィ。
そして・・・、
「逃げろっ!」
ルフィはゾロと半分のお宝を、ナミはもう半分のお宝を抱えて一目散に駆け出した。
「追えェ!!」
「絶対逃がさんぞ!!」
「町長の敵をとってやる!!」
追いかける、町民達。
走りながら、ナミがルフィに文句を言った。
「何であんたは、話をややこしくすんのよ!」
それには答えず、ルフィは笑って言った。
「いい町だな」
「え?」
「町長のおっさん1人の為に、あんなにみんなが怒ってる!どんな言い訳しても、きっとあいつら怒るぜ!」
ナミは何も言えなかった。
そしてルフィたちは、路地へ逃げ込む。
追いかける町民達の前に立ちはだかったのは・・・、
「ワン!!!!」
「シュシュ!」
「犬っ」
ルフィたちが振り返ると、シュシュが町民達を威嚇していた。
「おいシュシュ!そこをどけ!」
「あいつら悪い海賊なんだ!」
しかし、シュシュは町民達に吠えかかる。
「どうして邪魔するんだ、シュシュ!」
「シュシュ!そこを通せ!!」
シュシュの吼える声を聞きながら、ルフィはにっと笑った。
ルフィたちは何とか追っ手を振り切り、港までたどりついた。
「はあー・・・、怖かった。シュシュのお陰で何とか逃げ切れたわ。何で私達がこんな目にあわなきゃなんないの?」
ナミが息をついた。
「いいだろ別に。おれ達の用は済んだんだから!」
「そりゃそうだけどさ・・・」
港には2艘の舟が舫ってあった。1艘はルフィたちの舟。
もう1艘は・・・、
「これお前の舟なのか?」
ルフィが目を見張った。
「かっこいいなー!いーなー!!」
その舟はなんだかムダにカラーリングされていた。
「・・・そうは思わないけど、私は。バカな海賊から奪ったの」
ナミがそう言った時だった。
「待ってたぜ、泥棒女っ!!!」
その当の舟から、3人の男達が顔を出した。
「あ・・・、あんた達は・・・」
ナミが驚く。
─── まさか、こんなところにいるなんて。
「ここにいれば帰ってくると思ったぜ」
「ぐっしっしっし。まさかこの港で、盗まれた舟に出会えるとは思わなかった」
「おれ達を忘れたとは言わせねェぞ・・・!」
すごむ3人組。
そうこいつらは、ナミがこの島に来る前にだましてお宝を奪った、あの3人組である。
「知り合いか?」
「まあ、ちょっとね・・・」
ルフィの問いに、ナミは苦笑いで答える。
「ちょっとじゃねェ、因縁の仲さ!」
男達が憤慨して言った。
男達はルフィたちに気づくと、
「仲間もいたのか、一緒にお仕置きしてやんなきゃなァ」
1人が舟を下りて、ルフィがかついていたゾロの頭をぺしぺし叩く。
「人の物を盗む事がどんなに悪い事なのか、なァおい、てめェシカトこいてんじゃねェぞコラ。しっかり顔上げろ」
「あァ!?」
ゾロはしっかり顔を上げた。
「!!!?」
「ぎいや~~~~~っ!!!」
まさかのゾロに、3人組は慌てて海を泳いで去っていった。
その頃町の中では。
「あ!町長気がつきましたか!」
ブードルがようやく目を覚ました。
「よかった無事で!」
「一体何があったんだい?町長・・・」
町民達が口々に言う中、ブードルは痛む頭を押さえて起き上がった。
「ぬう・・・、これは!」
ブードルは目を疑った。
彼の目の前に広がるのは、瓦礫の山。
彼が気を失う前までは、酒場があったのに!
「わしらが来た時には、もうこの状態だった」
年配の町民が言う。
「何も見ておらんのか?」
「・・・・・!」
「そうだ!」
若い町民が口を開いた。
「さっきまで妙な3人組がここにいて・・・」
「小童共・・・、あいつら生きておるのか!?」
ブードルは歯噛みした。
「・・・あのバカ!この年寄りに非道なマネを・・・よくも!」
「そのバカ共なら、たった今みんなで追っ払ってやったとこです!」
町民達が騒ぎ出す。
「だが気が済まん!まるで我々をあざ笑うかのようだった!」
「あんな奴らに、町を襲われた私達の悔しさがわかるもんか!」
「やっぱりあいつらとっ捕まえて・・・」
「やかましいっ!!!」
ブードルが町民達をさえぎるように怒鳴った。
「あいつらの文句を言っていいのはわしだけじゃ!!わし以外、あいつらを悪く言うことは許さん!!!」
「何を・・・!どうして海賊をかばうんですか、町長!」
「─── やつらめ、このまま消えるつもりか!」
ブードルは、町民達の問いには答えず、傷の痛みをこらえながら立ち上がった。
「港へ行ったのか!?」
「ええ・・・、港のほうへ逃げました・・・」
ブードルはそう聞くや否や、着ていた古めかしい鎧を脱ぎ捨てながら走った。
「くそっ!わしの町で勝手なことばかりしおって!お前らに言いたいことは山程あるぞ!!」
「よし、行くか!」
港では出港準備が完了したところだった。
二つの舟は、一つに3人が乗るにはそれぞれが小さすぎる。二つの舟を並べて航海する事にしたのだ。
帆を張ると、ナミの舟の帆にはあのマークが。
「お前、その帆バギーのマークついてんじゃねェか」
「だってあいつらの舟だもん。その内消すわ」
舫綱を外し、舟が港を離れる。
その時だった。
「おい待て小童共!!!」
ブードルが息を切らせて走ってきた。
─── わしは死んでもかまわんと思った・・・!
─── 絶望のうちに死んでもかまわんと考えていた・・・!!
そして。
「すまん!!!恩にきる!!!」
涙を流して、ブードルが叫ぶ。
ルフィたちはにっと笑った。
「気にすんな!楽に行こう!!」
明るく言うルフィに、
「言葉もないわ・・・」
ブードルは、町の恩人達を泣き笑いで見送った。
しばらくして、海の上。
「何ですって、宝を置いてきたぁ!?」
ナミの叫びが響き渡る。
「あんたには半分預けておいたのよ!?五百万ベリーよ!?」
「ああ、だって町ぶっ壊れて直すのに金がいるだろ」
しれっと言うルフィにナミが怒鳴る。
「あれは私の宝なの!」
そして、ルフィの船に飛び移りぐいぐいとルフィを海へ叩き落しにかかる。
「やめろ!おれは泳げないんだ!欲しけりゃもっかい取って来いよ!」
「そんな事できるか!!次やったら殺すわよ!!」
「だははははははははは・・・!」
それを見て、ゾロが笑う。
「ばーか」
ナミも笑った。
「・・・なんだ、笑ってんじゃんお前」
「うっさい!!」
ルフィの突っ込みに、ナミがゲンコツで答える。
「効かん!」
ゴムだから。
一行に新しく”泥棒のナミ”を迎え、二艘の舟は海を行く。
次に下り立つ島に待つ、”森の裁き”を知る由もなく。───
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