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第23話 キャプテン・ウソップ登場

「無謀だわ」

穏やかな海。相変わらずののんびりした航海の中、ナミがおもむろに言った。

「何が?」

ルフィが船の舳先にちょこんと腰掛けたまま言った。
舳先は彼の特等席なのである。

「このまま”偉大なる航路(グランドライン)”へ入ること!」
のんきなルフィに、ナミは少し呆れて言った。

「確かにな!」
ルフィが同意する。

「この前たわしのおっさんから果物いっぱい貰ったけど、やっぱ肉がないと力が」
「食糧の事言ってんじゃないわよ!」

残念、ちょっとずれてた。

ゾロも船に寝そべったまま言う。

「このまま酒が飲めねェってのもなんかつれェしな」
「飲食から頭を離せっ!!!」

ナミはのんきな二人に言って聞かせた。

「私達の向かってる”偉大なる航路”は世界で最も危険な場所なのよ。その上ワンピースを求める強力な海賊達がうごめいてる。当然強力な船に乗ってね。船員の頭数にしても、この船の装備のなさにしても、とても無事でいられるとは思えないわ」

「で?何すんだ?」
ルフィが尋ねる。

「”準備”するの!先をしっかり考えてね。ここから少し南へ行けば村があるわ。ひとまずそこへ!しっかりした船が手に入ればベストなんだけど・・・」

「肉を食うぞ!!!」

ナミは大きなため息をついた。







さて、当のルフィたちが向かっている島。
東の海の辺境に位置する島だが、ここには小さな村があった。
村の名前は、シロップ村。平和でのどかな村である。
その村の外れ、海に向かう岸壁に一人の若者が立っていた。

「嗚呼、今日も・・・あっちの海から朗らかに一日が始まる!」

彼の名前はウソップ。村に住む若者である。
癖の強い肩までの黒い髪をバンダナでまとめている。
茶色のオーバーオールに、飾り帯。肩からがま口型バッグをナナメがけにしている。
しかし彼の一番の特徴は、その長い鼻であった。ピノキオ並である。

そしてこの村のいつもの朝が始まる。

「─── 大変だーっ!!」

ウソップが大声を上げながら村を駆け抜ける。

「みんな大変だ ─── っ!!海賊が攻めてきたぞ ─── っ!!!海賊だ、海賊 ───っ!!!逃げろ ─── っ!!!」

「何!?海賊だと!!?」
村人がウソップの声に窓から顔を出す。

「かいぞくだーっ!!!」

「お!ウソップが騒いでる。そろそろ仕事の時間だな」
のんびりとコーヒーを飲む村人。

「たーいへーんだーっ」

「よくやるよなあいつも」
新聞を読みながら、苦笑いする村人。

そしてウソップは叫ぶ。

「ウソだーっ!わっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」

ガン!

ウソップに向かって鍋が飛んできた。

「このホラ吹きボーズ!今日こそはとっちめてやるぞ!」

それが合図のように、家々から村人達が出てくる。

「おお、きたきたきた!」

ウソップの期待通りのようだ。
そして。

「待てこのクソガキーッ!!!」
「わーっはっはっは、追いついてみろォ!!!」

追いかける村人達、逃げるウソップ。

「─── くそっ!また逃げられた」

しばらくして、村のはずれで毒づく村人達の姿があった。

「まったく人騒がせなガキだ!見つけたらただじゃおかねェぞ」
「一体どこ行きやがった!」

そんな村人達の様子を、ウソップは木の上から覗いていた。
心底おかしそうに笑う。

「ぷっくっくっくっくっくっくっ!今日も村中1人残らずだまされたな」

そう、これがこの村の朝の風物詩なのだ。
毎朝、ウソップは大声を上げて村中を駆け回る。
そんなウソップを、村人達は追い立てまわす。
この騒ぎがこの村にとってなくてはならない、朝の始まりなのだ。

「はー、今日もいい事をした!この退屈な村に、刺激という風を送り込んでやった!」
ウソップは木の上でのんびり伸びをする。

「─── いた!」

木の上でのんびり風に吹かれていると、下の方で声がした。

「ん?・・・おお!お前らか!!」
見下ろすと、男の子が2人。

「おはようございます!キャプテン・ウソップ」
「ウソップ海賊団、参上しました!!」

村の少年、ピーマンとにんじんである。
ピーマンは緑色の髪でモミアゲが少し長い。頭のてっぺんの髪の毛がそれこそピーマンのヘタのようにぴょこんと立っている。
にんじんは赤いニット帽をかぶって、帽子の天辺から髪の毛をのぞかせている。
2人共、ウソップとおそろいの飾り帯をしていて、手にはおもちゃのナイフを握っていた。

ウソップはするっと木から降りる。

「ピーマン、にんじん、お前ら2人だけか?たまねぎはどうした」
「まだ寝てんじゃないかな。なァ」

にんじんがピーマンと顔を見合わせる。

「うん、多分な」
「まったくしょーがねェな」

ウソップがそう言った時、道の向こうから大声を上げて少年が走ってきた。

「わあああああああ、たいへんだあああああ」

「あ!たまねぎ」
「何騒いでんだ?あいつ」

にんじんとピーマンが言う。

たまねぎと呼ばれた少年は、黄色い髪の毛で四角いメガネをかけている。
頭の天辺はほんとのたまねぎのようにつんつん立っている。
そのたまねぎが、べそをかきながら走ってきた。

「大変だ ─── っ!!!か!かかか、海賊がきた~~~~~っ!!!」

そして息を切らせてウソップに訴える。

「本当なんです!今この目で見てきました。ドクロマークをつけた船が、北の海岸から・・・」

ウソップ、ピーマン、にんじんの3人は声をあわせて言った。

「うそだろ」

「ほんとだよ!!」

たまねぎは怯えながら言う。

「あれはたしか・・・、”道化のバギー”のマーク!!!」
「ほんとなのか!?」

ウソップはようやく信じたようだ。

「本当ですよ、やばいっす!」
「・・・いかんっ!おやつの時間だ!!」
「逃げるなっ!」

恐れをなして走り去ろうとするウソップを、少年達は慌てて止めた。

「おれは実は”おやつを食わねば死んでしまう病”なんだ」

「ウソつけ!!!」

少年達は口々に言った。

「キャプテンは本物の海賊になりたいんじゃないんですか!?」
「海賊が海賊にびびってどうするんですか!」
「そうですよ、たった3人の海賊に!」

最後の言葉をウソップは聞き逃さなかった。

「なに・・?3人!!?本船じゃないのか?」
「いえ・・・、ちっちゃい船が2艘」

たまねぎの言葉に、

「よし!出動だ、ウソップ海賊団!!村の平和を守るため!!」

ウソップは高らかに宣言する。

「さァ、行くぞ!ついて来い!!」

そして勢いよく走っていく。
ゲンキンなものである。
そんなウソップのことを少年達はよく知っているが、3人とも嬉しそうに後をついていった。







「あったなー、ホントに島が!」

ルフィたちは今、島の海岸に船を着けたところだった。
海岸からは奥に向かって一本の坂道が通っている。
その両側は切り立った崖になっていた。

「何言ってんの。当然でしょ、地図のとおり進んだんだから」

一足先に船から下りたナミが言う。

「この奥に村があんのか?」
ルフィが道の向こうを指差した。

「うん、小さな村みたいだけど」
ナミが地図を見ながら言った。

そんな彼らを崖の上から見つめる目。
ウソップ海賊団である。

「おい、たまねぎ!あれか?お前の言う海賊ってのは・・・」

ウソップが海岸の3人から眼を離さずに言った。

「はいっ!帆に海賊マークを見ました!」

たまねぎが元気よく答える。
しかしあとの2人は半信半疑だった。

「ぜんぜん怖そうじゃねェ」
「おれもそう思う」

ウソップは黙ったまま3人を観察している。
海岸ではゾロが伸びをしながら船から下りてきたところだった。

「ふーっ、久しぶりに地面に下りた」
「お前ずっと寝てたもんな」

ルフィが笑う。

「ところでさっきから気になってたんだが」

ゾロが崖の方を見て言った。

「あいつら何だ」

ウソップ海賊団、ゾロにはがっつりバレていた。
その瞬間。

「うわああああ、見つかったァ~~~~~!!!」

ウソップ以外の3人があっという間に逃げていく。

「おいお前ら!逃げるな!」

ウソップの叫びも届かない。
彼は恐る恐る海岸の3人へ振り向いた。
じっと自分の方を見ている。
彼は開き直って3人の傍へ向かうと、仁王立ちで言った。

「おれはこの村に君臨する大海賊団を率いるウソップ!人々はおれを称え、さらに称え”我が船長”キャプテン・ウソップと呼ぶ!!!」

さらに続ける。

「この村を攻めようと考えているなら、やめておけ!このおれの八千万の部下共が黙っちゃいないからだ!」

ナミが口を開いた。

「ウソでしょ」

「ゲッ、ばれた!」

ウソップが焦る。

「ほら、ばれたって言った」
「ばれたって言っちまったァ~っ!おのれ策士め!!」
「はっはっはっはっはっは、お前面白ェなーっ!!」
「おいてめェ、おれをコケにするな!」

大笑いするルフィに、ウソップが真面目な顔で言った。

「おれは誇り高き男なんだ!その誇りの高さゆえ、人がおれを”ホコリのウソップ”と呼ぶ程にな!!」







しばらくして。
なぜか意気投合したルフィたちとウソップは、村のめし屋にいた。
とりあえず何をおいても腹ごしらえである。

「何?仲間を!?」

ウソップが、肉をかぶりつくルフィに言った。

「仲間とでかい船か」
「ああそうなんだ」

骨付き肉にかぶりつくルフィは幸せそうだ。

「はーっ、そりゃ大冒険だな」

ウソップが少しうらやましそうに言う。

「まァ、大帆船ってわけにゃいかねェが、船があるとすりゃこの村で持ってんのはあそこしかねェな」
「あそこって?」

ナミが尋ねる。

「この村に場違いな大富豪の屋敷が一軒たってる。その主だ。だが主といっても、まだいたいけな少女だがな。病弱で・・・寝たきりの娘さ」
「え・・・、どうしてそんな娘がでっかいお屋敷の主な・・・」
「おばさん!肉追加!!」
「おれも酒っ!!」

ナミの言葉をかき消すようにルフィとゾロが注文を出す。

「てめェら話聞いてんのか!!?」

ウソップが怒鳴った。
気を取り直して。

「・・・もう1年くらい前になるかな。かわいそうに病気で両親を失っちまったのさ。残されたのは莫大な遺産と、でっかい屋敷と、十数人の執事達・・・。どんなに金があって贅沢できようと、こんなに不幸な状況はねェよ」

そう言ってウソップはため息をついた。
ナミはしばらく考えていたが、

「やめ!」

そう言ってテーブルをぽんと叩いた。

「この村で船のことは諦めましょ。また別の町か村をあたればいいわ」

ルフィも笑う。

「そうだな、急ぐ旅でもねェし。肉食ったし。いっぱい買い込んでいこう!」

「・・・ところでお前ら」

ウソップがルフィに話しかける。

「仲間を探してると言ってたな・・・」
「うん、誰かいるか?」
「おれが船長になってやってもいいぜ!」

「ごめんなさい」

3人が即答する。

「はえェな、おい!!!」

ウソップも驚く早さだった。







このシロップ村には、村はずれに大きなお屋敷がある。
その屋敷の窓は開いていて、心地よい風がカーテンを揺らしていた。
その窓辺に、女の子が一人座っている。

「ねェ、クラハドール?」

クラハドールと呼ばれた執事は、その女の子の傍に近づいた。

「何ですか?カヤお嬢様」
「わたし、ウソップさんに会いたい・・・」

その女の子、カヤは静かに、だがはっきりとそうつぶやいた。







 管理人ひとことこめんと
ウソップ登場。
この人は、麦わらの一味の中で唯一の“普通の人”だと思ってます。
頑丈さと射撃の腕は他の人達並ですがw。
いつまでも普通の人であってほしいなー。
下手に強くなってほしくないなー。
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