第25話 ウソ800
シロップ村の大富豪カヤの屋敷の庭では、この屋敷の執事クラハドールと村の若者ウソップが対峙していた。
その後ろではウソップ海賊団の面々、そしてルフィたち、屋敷の窓辺ではこの屋敷の主人であるカヤがその様子を見守っていた。
「海賊が・・・”勇敢なる海の戦士”か・・・!ずいぶんとねじまがった言い回しがあるもんだね・・・」
クラハドールが手のひらでメガネのズレを直す。
「だが・・・、否めない。野蛮な血の証拠が君だ・・・!」
ウソップはクラハドールを睨む。
「好き放題にホラを吹いてまわり、頭にくればすぐに暴力・・・。あげくの果ては、財産目当てにお嬢様に近づく・・・!」
クラハドールはようやく立ち上がり、ズボンの土ぼこりをはたいた。
「何だと、おれは・・・!」
「何かたくらみがあるという理由など、君の父親が海賊であることで充分だ!!!」
「てめェ、まだ言うのか!!!」
ウソップがクラハドールの胸倉を掴み、こぶしを固める。
「やめて、ウソップさん!!!もう、これ以上暴力は・・・!!!」
カヤが叫んだ。
その声に、ウソップはこぶしを止めた。
「悪い人じゃないんです、クラハドールは・・・」
カヤはうつむく。
「ただ、私のためを思って過剰になっているだけなの・・・」
クラハドールは胸倉を掴んでいたウソップの手をはたいた。
「出て行きたまえ・・・」
そして怒鳴る。
「ここは君のような野蛮な男の来るところではない!二度とこの屋敷へは近づくな!!」
「・・・ああ、わかったよ。言われなくても出てってやる・・・。もう二度とここへは来ねェ!!!」
ウソップはきびすを返し、スタスタと屋敷を後にしていった。
その後姿は、少し寂しさがにじんでいた。
「ウソップさん・・・」
カヤには彼を止める事はできない。
海賊団たちが叫んだ。
「このヤロー、羊っ!!キャプテンはそんな男じゃないぞ!!」
「そうだ!っばーか!!」
「ばーか!」
「ばーか!!」
・・・一人多い。
「何でお前も一緒になってんだ」
ゾロがルフィを小突いた。
そんな海賊団+ルフィを、クラハドールは睨みつける。
「ぎゃああああああ!」
「やるか、このっ」
おびえる海賊団に、臨戦態勢のルフィ。
「君達も、さっさと出て行きたまえ!!!」
クラハドールは再度怒鳴った。
しばらくして。
カヤは再びベッドにもぐりこんでいた。
咳がひっきりなしに出る。しかしそれを周りに気づかせない為、彼女は枕で音をかき消していた。
ドアがノックされ、ワゴンを引いたクラハドールが部屋に入ってきた。
「お食事です、お嬢様・・・」
「・・・いらない」
咳き込みながら、カヤは言った。
「食べたくない、おいしくないんだもん」
クラハドールはため息をついた。
「そんな事言っては、コックが腹を立てますよ。お嬢様のお体にあう食事を一生懸命考えてつくっているのですから」
カヤはそれには何も言わず、別の話を切り出した。
「・・・どうしてあんな言い方したの?」
給仕の準備をしていたクラハドールが手を止める。
「それは私だって、クラハドールに黙ってウソップさんと話をしていたのは悪いと思っているわ。だけど、あんな追い返し方ってないじゃない!」
「・・・座っても?」
「どうぞ」
クラハドールはカヤのベッドの端に腰を下ろした。
「・・・もう、3年になりますか。私がこの屋敷へ来た日から・・・。あの日のことは忘れもしません!」
そしてクラハドールは静かに語り始めた。
「・・・当時私はある船で働いていたのですが、ちょっとしたミスを犯しその船を下ろされてしまったのです。路頭に迷い、たどり着いたのがこの村で・・・。当然やる事も金もなく今にも野垂れ死にしそうだった私に、声をかけてくださったのがあなたの父上でした。私にとって、亡きご両親は命の恩人なのです」
カヤは黙って聞いている。
「そしてあなたは私の恩人のご令嬢・・・。私がお嬢様の交友関係にまで口を挟むのは、出すぎたマネだという事は承知の上なのですが・・・」
クラハドールは目を伏せた。
「あのウソップという若者は・・・お世辞にも評判のいいとは言えない人間です。もしも・・・!万が一、お嬢様の身に何かあっては!私は世話になったご主人に顔向けできないのです・・・!!」
「・・・・・」
「先ほどは、しかし・・・さすがに言い過ぎました。私を恨んでおいでですか」
「・・・ううん、そんな事ない・・・」
カヤは口を開いた。優しく言葉をかける。
「私もクラハドールには感謝してるわ。だけど誤解しないで。彼はとてもいい人なの」
「ですが!いい人かどうかは別の話!」
クラハドールは立ち上がった。
「クラハドール!・・・もう、わからず屋!!」
カヤが言い返す。
「ええ、わからず屋で結構っ!!」
そう言って2人は、顔を見合わせて少し笑った。
「ねェ、ルフィどこ行ったの?」
「さあな、キャプテンを追っかけてったんだろ」
カヤの屋敷を後にした後、ゾロたちは村の道端に腰を下ろしていた。
「キャプテンならあそこだ!」
ゾロと同じように腰を下ろしていたにんじんが言う。
「うん海岸だ」
ピーマンが言った。
「なんかあると、とりあえずあそこに行くんだ。行ってみる?」
「いや、いい・・・」
ゾロが答えた。
「・・・それよりあんた達、1人足りないんじゃない?」
木の柵に腰掛けていたナミが言った。
「ああ、たまねぎ」
ピーマンが言う。
「あいつすぐどっかに消えちゃうんだよな」
「うん、そして大騒ぎして現れるんだ」
その時だった。道の向こうから大声を上げて走ってくる人影。
「わあああああああ、たいへんだああああああ!!!」
「あ!たまねぎ」
2人の言ったとおり、大騒ぎしながらたまねぎが現れた。
「大変だーっ!!!う!ううう!後ろ向き男だあ~~~~~っ!!!」
息を切らしながら、ピーマンとにんじんに訴える。
「変な人が後ろ向きで歩いて来るんだよっ」
「うそつけ」
「ほんとだよ!!!あれ見て!!!」
たまねぎの指差す方をみんな見やった。
すると1人の男がこちらのほうへやってくるのが見える。
後ろ向きに。
「オイ、誰だ。このおれを”変な人”と呼ぶのは!おれは変じゃねェ!!!」
くるっと振り返って、その変な男は言った。
黒のジャケットに黒の丈の短いズボン。すそからは白い靴下をのぞかせている。
黒のシルクハットにハート型のサングラス、あごから得体の知れない縞々の物体を生やした細身の変な男は、催眠術師のジャンゴだと名乗った。
「変よ、どう見ても」
「バカを言え、おれはただの通りすがりの催眠術師だ・・・」
ナミの言葉にジャンゴが反論する。
海賊団たちは”催眠術師”と言う言葉に目を輝かせて反応した。
「さ・・・催眠術!?すげえ!!」
「やってみせてくれよ!!」
「うん、やって!!!」
「何!?」
ジャンゴが呆れたように言った。
「バカヤロウ、何でおれが見ず知らずのてめェらに初対面で術を披露しなきゃならねェんだ」
しかし。
「いいか、よくこの輪を見るんだ」
おもむろに輪っかを取り出した。
「やるのか」
ゾロが突っ込む。
「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる」
ジャンゴは海賊団に向かい、輪っかをゆっくりと揺らした。
「いいか、いくぞ・・・。ワーン・・ツー・・」
「・・・・・」
「ジャンゴ」
その瞬間、海賊団はその場に倒れこんだ。熟睡している。
・・・ジャンゴも。
「おい、こいつ何なんだ!!!」
ゾロは再び突っ込んだ。
島の海岸では、胡坐をかき、海をじっと見つめるウソップの姿があった。
何に思いを馳せているのか、それはウソップだけにしか知らないこと。
彼は、思うことがあるときには必ずここに来ていた。
「よっ、ここにいたのか」
「ぶっ!!!」
ウソップの目の前に、急にルフィがあった。
ウソップの傍にあった木の枝に足を引っ掛けて、逆立ちのような状態で下りてきたのである。
「何だてめェか、普通に声かけろバカ!!」
ルフィはすとんと木から下りて言った。
「ヤソップだろ、お前の父ちゃん」
「・・・え・・・!?」
ルフィはウソップの隣に腰を下ろした。
「お前!何でそれを知ってんだ!!」
「子供の頃に会った事があるんだ」
「何!?本当か!?おれの親父にか!?」
「うん」
驚くウソップに、ルフィは笑顔で言った。
「お前と顔そっくりだからさ、なんか懐かしい感じはしてたんだけど。さっきはっきり思い出した」
「い・・・今、どこに!?」
「今はわかんねェ!」
ルフィは言う。
「だけど、今もきっと”赤髪のシャンクス”の船に乗ってるよ!ヤソップは、おれが大好きな海賊船の一員なんだ」
シャンクスたちの話をすると、彼は自然に満面の笑顔になった。
「そ・・・そうか!!」
ウソップが嬉しそうに言った。
「そうか・・・シャンクスの船に・・・。あの”赤髪”のねぇ・・・」
しみじみ言って、気づいた。
「シャンクスだとォ!!?」
「!何だ、シャンクス知ってんのか!?」
ウソップの勢いに、ルフィは若干びびる。
「当たり前だ、そりゃお前大海賊じゃねェか!!!そんなにすげえ船に乗ってんのか、ウチの親父は!!!」
ウソップは驚きを隠せない。
「すげえって言やあ・・・うん、射撃の腕はすごかった。ヤソップが的を外したとこは見たことなかったし・・・」
ルフィはヤソップのことを話し始めた。
─── 遠く離れた場所にあるりんごでも簡単に打ち落とせること。
─── アリの眉間にだってブチ込める、と言う、ヤソップのお決まりのセリフ。
─── 酒を飲むと必ず、何度も何度も彼の息子のことを話していたこと。
─── 海賊旗が呼んでいたから、と言う彼の悲しい決断・・・。
「─── ヤソップは立派な海賊だった!!」
「・・・そうだろう!?」
ルフィのホントに楽しそうな表情に、ウソップは自分が間違ってなかったことを確信した。
そして立ち上がって言った。
「そうなんだ!こんな果てがあるかないかもわからねェ海へ飛び出して、命をはって生きてる親父をおれは誇りに思ってる!それなのにあの執事は親父をバカにした・・・!おれの誇りを踏みにじった!!!」
「うん!あいつはおれもきらいだ!」
ルフィも同意した。
「でもお前、もうお嬢様のところへは行かねェのか?」
「・・・さァな・・・、あの執事が頭でも下げてきやがったら行ってやってもいいけどよ!」
ウソップが強がる。
ルフィは崖の下を指差して言った。
「あの執事がか?」
「そう、あの執事あの執事・・・って、あの執事が何でここにいんだァ!?」
2人は慌てて崖の下を覗き込んだ。どうやら彼らのことは気づかれてないようだ。
2人は耳を澄ます。
「─── おいジャンゴ、この村で目立つ行動は慎めと言ったはずだぞ。村の真ん中で寝てやがって」
クラハドールがジャンゴに言った。2人はどうやら知り合いのようだ。
「ばか言え、おれは全然目立っちゃいねーよ。変でもねェ」
変なの、と言われたのがよっぽど気になるようだ。
「もう1人誰かいるな、変なのが」
「見かけねェ顔だ・・・。誰だ、ありゃ」
崖の上の2人がこそこそと話す。
クラハドールが言った。
「それで・・・、計画の準備は出来てるんだろうな」
ジャンゴが答える。
「ああ、もちろんだ。いつでもイケるぜ、”お嬢様暗殺計画”」
─── 何!!?暗殺だと!!?
ウソップとルフィは耳を疑った。
その後ろではウソップ海賊団の面々、そしてルフィたち、屋敷の窓辺ではこの屋敷の主人であるカヤがその様子を見守っていた。
「海賊が・・・”勇敢なる海の戦士”か・・・!ずいぶんとねじまがった言い回しがあるもんだね・・・」
クラハドールが手のひらでメガネのズレを直す。
「だが・・・、否めない。野蛮な血の証拠が君だ・・・!」
ウソップはクラハドールを睨む。
「好き放題にホラを吹いてまわり、頭にくればすぐに暴力・・・。あげくの果ては、財産目当てにお嬢様に近づく・・・!」
クラハドールはようやく立ち上がり、ズボンの土ぼこりをはたいた。
「何だと、おれは・・・!」
「何かたくらみがあるという理由など、君の父親が海賊であることで充分だ!!!」
「てめェ、まだ言うのか!!!」
ウソップがクラハドールの胸倉を掴み、こぶしを固める。
「やめて、ウソップさん!!!もう、これ以上暴力は・・・!!!」
カヤが叫んだ。
その声に、ウソップはこぶしを止めた。
「悪い人じゃないんです、クラハドールは・・・」
カヤはうつむく。
「ただ、私のためを思って過剰になっているだけなの・・・」
クラハドールは胸倉を掴んでいたウソップの手をはたいた。
「出て行きたまえ・・・」
そして怒鳴る。
「ここは君のような野蛮な男の来るところではない!二度とこの屋敷へは近づくな!!」
「・・・ああ、わかったよ。言われなくても出てってやる・・・。もう二度とここへは来ねェ!!!」
ウソップはきびすを返し、スタスタと屋敷を後にしていった。
その後姿は、少し寂しさがにじんでいた。
「ウソップさん・・・」
カヤには彼を止める事はできない。
海賊団たちが叫んだ。
「このヤロー、羊っ!!キャプテンはそんな男じゃないぞ!!」
「そうだ!っばーか!!」
「ばーか!」
「ばーか!!」
・・・一人多い。
「何でお前も一緒になってんだ」
ゾロがルフィを小突いた。
そんな海賊団+ルフィを、クラハドールは睨みつける。
「ぎゃああああああ!」
「やるか、このっ」
おびえる海賊団に、臨戦態勢のルフィ。
「君達も、さっさと出て行きたまえ!!!」
クラハドールは再度怒鳴った。
しばらくして。
カヤは再びベッドにもぐりこんでいた。
咳がひっきりなしに出る。しかしそれを周りに気づかせない為、彼女は枕で音をかき消していた。
ドアがノックされ、ワゴンを引いたクラハドールが部屋に入ってきた。
「お食事です、お嬢様・・・」
「・・・いらない」
咳き込みながら、カヤは言った。
「食べたくない、おいしくないんだもん」
クラハドールはため息をついた。
「そんな事言っては、コックが腹を立てますよ。お嬢様のお体にあう食事を一生懸命考えてつくっているのですから」
カヤはそれには何も言わず、別の話を切り出した。
「・・・どうしてあんな言い方したの?」
給仕の準備をしていたクラハドールが手を止める。
「それは私だって、クラハドールに黙ってウソップさんと話をしていたのは悪いと思っているわ。だけど、あんな追い返し方ってないじゃない!」
「・・・座っても?」
「どうぞ」
クラハドールはカヤのベッドの端に腰を下ろした。
「・・・もう、3年になりますか。私がこの屋敷へ来た日から・・・。あの日のことは忘れもしません!」
そしてクラハドールは静かに語り始めた。
「・・・当時私はある船で働いていたのですが、ちょっとしたミスを犯しその船を下ろされてしまったのです。路頭に迷い、たどり着いたのがこの村で・・・。当然やる事も金もなく今にも野垂れ死にしそうだった私に、声をかけてくださったのがあなたの父上でした。私にとって、亡きご両親は命の恩人なのです」
カヤは黙って聞いている。
「そしてあなたは私の恩人のご令嬢・・・。私がお嬢様の交友関係にまで口を挟むのは、出すぎたマネだという事は承知の上なのですが・・・」
クラハドールは目を伏せた。
「あのウソップという若者は・・・お世辞にも評判のいいとは言えない人間です。もしも・・・!万が一、お嬢様の身に何かあっては!私は世話になったご主人に顔向けできないのです・・・!!」
「・・・・・」
「先ほどは、しかし・・・さすがに言い過ぎました。私を恨んでおいでですか」
「・・・ううん、そんな事ない・・・」
カヤは口を開いた。優しく言葉をかける。
「私もクラハドールには感謝してるわ。だけど誤解しないで。彼はとてもいい人なの」
「ですが!いい人かどうかは別の話!」
クラハドールは立ち上がった。
「クラハドール!・・・もう、わからず屋!!」
カヤが言い返す。
「ええ、わからず屋で結構っ!!」
そう言って2人は、顔を見合わせて少し笑った。
「ねェ、ルフィどこ行ったの?」
「さあな、キャプテンを追っかけてったんだろ」
カヤの屋敷を後にした後、ゾロたちは村の道端に腰を下ろしていた。
「キャプテンならあそこだ!」
ゾロと同じように腰を下ろしていたにんじんが言う。
「うん海岸だ」
ピーマンが言った。
「なんかあると、とりあえずあそこに行くんだ。行ってみる?」
「いや、いい・・・」
ゾロが答えた。
「・・・それよりあんた達、1人足りないんじゃない?」
木の柵に腰掛けていたナミが言った。
「ああ、たまねぎ」
ピーマンが言う。
「あいつすぐどっかに消えちゃうんだよな」
「うん、そして大騒ぎして現れるんだ」
その時だった。道の向こうから大声を上げて走ってくる人影。
「わあああああああ、たいへんだああああああ!!!」
「あ!たまねぎ」
2人の言ったとおり、大騒ぎしながらたまねぎが現れた。
「大変だーっ!!!う!ううう!後ろ向き男だあ~~~~~っ!!!」
息を切らしながら、ピーマンとにんじんに訴える。
「変な人が後ろ向きで歩いて来るんだよっ」
「うそつけ」
「ほんとだよ!!!あれ見て!!!」
たまねぎの指差す方をみんな見やった。
すると1人の男がこちらのほうへやってくるのが見える。
後ろ向きに。
「オイ、誰だ。このおれを”変な人”と呼ぶのは!おれは変じゃねェ!!!」
くるっと振り返って、その変な男は言った。
黒のジャケットに黒の丈の短いズボン。すそからは白い靴下をのぞかせている。
黒のシルクハットにハート型のサングラス、あごから得体の知れない縞々の物体を生やした細身の変な男は、催眠術師のジャンゴだと名乗った。
「変よ、どう見ても」
「バカを言え、おれはただの通りすがりの催眠術師だ・・・」
ナミの言葉にジャンゴが反論する。
海賊団たちは”催眠術師”と言う言葉に目を輝かせて反応した。
「さ・・・催眠術!?すげえ!!」
「やってみせてくれよ!!」
「うん、やって!!!」
「何!?」
ジャンゴが呆れたように言った。
「バカヤロウ、何でおれが見ず知らずのてめェらに初対面で術を披露しなきゃならねェんだ」
しかし。
「いいか、よくこの輪を見るんだ」
おもむろに輪っかを取り出した。
「やるのか」
ゾロが突っ込む。
「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる」
ジャンゴは海賊団に向かい、輪っかをゆっくりと揺らした。
「いいか、いくぞ・・・。ワーン・・ツー・・」
「・・・・・」
「ジャンゴ」
その瞬間、海賊団はその場に倒れこんだ。熟睡している。
・・・ジャンゴも。
「おい、こいつ何なんだ!!!」
ゾロは再び突っ込んだ。
島の海岸では、胡坐をかき、海をじっと見つめるウソップの姿があった。
何に思いを馳せているのか、それはウソップだけにしか知らないこと。
彼は、思うことがあるときには必ずここに来ていた。
「よっ、ここにいたのか」
「ぶっ!!!」
ウソップの目の前に、急にルフィがあった。
ウソップの傍にあった木の枝に足を引っ掛けて、逆立ちのような状態で下りてきたのである。
「何だてめェか、普通に声かけろバカ!!」
ルフィはすとんと木から下りて言った。
「ヤソップだろ、お前の父ちゃん」
「・・・え・・・!?」
ルフィはウソップの隣に腰を下ろした。
「お前!何でそれを知ってんだ!!」
「子供の頃に会った事があるんだ」
「何!?本当か!?おれの親父にか!?」
「うん」
驚くウソップに、ルフィは笑顔で言った。
「お前と顔そっくりだからさ、なんか懐かしい感じはしてたんだけど。さっきはっきり思い出した」
「い・・・今、どこに!?」
「今はわかんねェ!」
ルフィは言う。
「だけど、今もきっと”赤髪のシャンクス”の船に乗ってるよ!ヤソップは、おれが大好きな海賊船の一員なんだ」
シャンクスたちの話をすると、彼は自然に満面の笑顔になった。
「そ・・・そうか!!」
ウソップが嬉しそうに言った。
「そうか・・・シャンクスの船に・・・。あの”赤髪”のねぇ・・・」
しみじみ言って、気づいた。
「シャンクスだとォ!!?」
「!何だ、シャンクス知ってんのか!?」
ウソップの勢いに、ルフィは若干びびる。
「当たり前だ、そりゃお前大海賊じゃねェか!!!そんなにすげえ船に乗ってんのか、ウチの親父は!!!」
ウソップは驚きを隠せない。
「すげえって言やあ・・・うん、射撃の腕はすごかった。ヤソップが的を外したとこは見たことなかったし・・・」
ルフィはヤソップのことを話し始めた。
─── 遠く離れた場所にあるりんごでも簡単に打ち落とせること。
─── アリの眉間にだってブチ込める、と言う、ヤソップのお決まりのセリフ。
─── 酒を飲むと必ず、何度も何度も彼の息子のことを話していたこと。
─── 海賊旗が呼んでいたから、と言う彼の悲しい決断・・・。
「─── ヤソップは立派な海賊だった!!」
「・・・そうだろう!?」
ルフィのホントに楽しそうな表情に、ウソップは自分が間違ってなかったことを確信した。
そして立ち上がって言った。
「そうなんだ!こんな果てがあるかないかもわからねェ海へ飛び出して、命をはって生きてる親父をおれは誇りに思ってる!それなのにあの執事は親父をバカにした・・・!おれの誇りを踏みにじった!!!」
「うん!あいつはおれもきらいだ!」
ルフィも同意した。
「でもお前、もうお嬢様のところへは行かねェのか?」
「・・・さァな・・・、あの執事が頭でも下げてきやがったら行ってやってもいいけどよ!」
ウソップが強がる。
ルフィは崖の下を指差して言った。
「あの執事がか?」
「そう、あの執事あの執事・・・って、あの執事が何でここにいんだァ!?」
2人は慌てて崖の下を覗き込んだ。どうやら彼らのことは気づかれてないようだ。
2人は耳を澄ます。
「─── おいジャンゴ、この村で目立つ行動は慎めと言ったはずだぞ。村の真ん中で寝てやがって」
クラハドールがジャンゴに言った。2人はどうやら知り合いのようだ。
「ばか言え、おれは全然目立っちゃいねーよ。変でもねェ」
変なの、と言われたのがよっぽど気になるようだ。
「もう1人誰かいるな、変なのが」
「見かけねェ顔だ・・・。誰だ、ありゃ」
崖の上の2人がこそこそと話す。
クラハドールが言った。
「それで・・・、計画の準備は出来てるんだろうな」
ジャンゴが答える。
「ああ、もちろんだ。いつでもイケるぜ、”お嬢様暗殺計画”」
─── 何!!?暗殺だと!!?
ウソップとルフィは耳を疑った。
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