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第31話 真実

海賊たちが襲ってくる。
剣や銃、たくさんの武器を構えた男たちが、私の前に次々と現れる。
逃げても逃げても、後からどんどん湧き出るように増えていく。
声が聞こえる。

”てめェら、よくもおれをコケにしてくれたな!!”
”海賊の血を引くことをバカにしてくれたな!!”

男の顔が変わる。・・・ウソップさんの顔に。

”殺してやる!!!”

ウソップさんが私の腕を掴む。

”やめて!ウソップさん!!!”

”殺してやるーっ!!!”

”きゃあああーっ!!!”



「─── はっ!!!」

カヤはそこで目を覚ました。
胸を押さえてゆっくりと起き上がる。
ここはいつもと変わらない、カヤの部屋。
夜は明けきってはいたが、まだずいぶんと早い時刻であった。

「はぁ・・・はぁ・・・!」

動悸はなかなか治まってはくれない。

「・・・!わからない・・」

軽く咳き込む。

「ウソップさんが・・・、あんな行動をとるなんて・・・」

悪夢を見るほど、昨日のウソップの行動が彼女の頭から離れない。
彼女は気を紛らわす為部屋を出て、クラハドールの居室へ向かった。

「─── クラハドール?」

ドアをノックする。

「クラハドールはいる?」

ふと、気づいた。
ドアが開いている。
胸騒ぎがする。
カヤはそっとドアを開いた。
そこで彼女が見たものは、血まみれで倒れるメリーの姿だった。
あまりの衝撃に、すぐには声が出ない。

「─── メ・・・メリーっ!!!!」

カヤは慌ててメリーに駆け寄る。

「どうしたの!?何があったの!?目を開けてメリーっ!!死んじゃやだ!!!」

しばらくして、

「う・・・!ガハッ!!!」

ようやくメリーが息を吹き返した。
むせながら身体を仰向けにする。

「メリー・・・」
「ご・・・お・・・お嬢様・・・、良かった、ご無事で・・・!!!」

メリーが喘ぎながら答える。

「!?・・・私は無事よ。何言ってるの・・・!?あなたが・・・」

メリーはカヤの言葉を遮って言った。メリーの目から涙が流れる。

「クラハドール!!!」
「あいつに・・・やられました・・・!!!」
「!!?え・・・!?」
「あいつは・・・海賊です!!!」
「そんな・・・ウソでしょ!?」

カヤの脳裏には、クラハドールの言葉が響いていた。

”万が一!お嬢様の身に何かあっては!私は世話になったご主人に顔向けできないのです!!”

─── 彼はああ言っていたのに・・・。でも、メリーがこんな姿になっているのは紛れもない事実!

「─── じゃ、じゃあ昨日・・、ウソップさんが言ってたことは!!!」
「ええ・・・、今思えば・・・、彼は1人この事実を知り必死に我々を助けようとしていたのです・・・。それなのに・・・」

「我々は誰一人、彼の言葉を聞き入れようとしなかった!」

ウソップの言葉が蘇る。

"明日になれば全部真実がわかる!とにかく今は逃げろ!言うことを聞いてくれ!!!”

「何と皮肉なことでしょう・・・。我々は本物の悪党をかばい・・・、あの勇敢な若者を、村人の為に決死の覚悟で駆け回る若者を、追い立ててしまったのです・・・!!!」
「私・・・、彼になんてことを・・・!!!」

カヤの瞳から大粒の涙が後から後からこぼれていく。

「ガハッ」

何とかメリーは身体を起こした。

「誰か来て!誰か!!メリーが!!!」

カヤが廊下に向かって叫ぶ。
しかし、メリーがそれを止めた。

「ムダです・・・!屋敷の者は全員昨日から休暇を取ってます」
「そんな!じゃあ私・・・」

─── どうすればいいの!このままじゃメリーが・・・

「取り乱してはいけません!」

メリーが苦しい息の下から、カヤを諭すように言った。

「まだ事件は起こっていない・・・!冷静に・・・、あなたが今すべきことを考えるのです。・・・さっき、クラハドールが屋敷を出て行くところを見ました。昨日の・・・彼の言葉が本当だということは、きっと仲間の海賊を呼びに行ったのでしょう。我々だけでなく、村の人達も危ないということです。」

メリーは続けた。

「クラハドールの目的がこの屋敷と財産ならば、そんなもの全てあげてしまいなさい!命をはって守るようなものじゃない!!」
「はい・・・!」

カヤは涙をぬぐった。

「酷な事に・・、クラハドールを止められるのは、あなただけなのです!・・・やれますか・・・?これは責任ではありません・・・!!」

メリーが苦しげに息を荒く吐く。

「わかってる」

涙を目にいっぱい溜めながら、カヤははっきりと言い切った。

「私だって・・・、逃げちゃいけない事態くらいわかるつもり!!クラハドールと話をつけに行くわ・・・!!!」







「え?屋敷の羊が海岸へ!?」

その頃、ウソップ海賊団は村の小道に集合していた。
しかしにんじんは木にもたれて、かなり眠そうだ。

「おい、にんじん!寝るなよ」

ピーマンが言う。

「だってまだ寝てる時間だよ、いつもは」

そう言ってにんじんは大あくび。

「今日は寝てる場合じゃないんだよ。大変かもしれないんだぞ」

たまねぎも言う。

「ぼくはやっぱり海賊は攻めてくると思うんだ!キャプテンはうそだって言ったけど、それがウソだと思うんだ!!」

たまねぎの意見にピーマンも同意する。

「それはおれも考えた」
「じつはおれもー」

にんじんも続く。

「昨日のキャプテンは、やっぱりなんか変だった」

ふと、たまねぎが道の向こうから来る人物に気がついた。

「あれは・・・」
「カヤさんだ・・・!!!」

道の向こうから、カヤがゆっくりと歩いてくる。
具合が悪いのだろう、呼吸が少し荒い。

「カヤさんが1人で外を出歩くなんて・・・」
「何かある・・・。絶対なんかあるんだよ!!!」

ウソップ海賊団の3人の考えは徐々に確信に変わっていった。







一方、北の海岸では、ジャンゴが海賊船に向かって叫んでいた。

「下りて来いっ!!!”ニャーバン・兄弟”!!!」

「今さら何が飛び出すんだ・・?」

ゾロが訝った。
倒れこんでいる海賊たちは、期待に目を輝かせる。
そしてルフィは、今だ船首に下敷きになったまま眠りこけていた。

船から声がする。

「ありゃ!船長が呼んでるぜ、おれ達を」
「何!?まだ村へ行ってなかったのかい。何やってんだ海岸で」
「─── おい見ろ、みんなやられちまってるよ」
「おだやかじゃねーなーっ!・・・行くのか?」
「ま、そりゃ行くけどもっ!!」

船から男たちが飛び降りる。

「─── 来たか、”ニャーバン・兄弟”」

ジャンゴの声に2人が答えた。

「およびで、ジャンゴ船長」
「およびで」

1人は細身で背中が丸い男。猫のような爪のついた手袋をつけ、胸には蝶ネクタイ、半ズボンを穿いているのが、シャム。そして太った身体に首元に鈴をつけ、コタツ布団をマントのようにまとっているのがブチ。この男も爪のついた手袋をはめている。
2人共猫耳を頭につけていた。

その様子を坂の上で見ていたナミが驚く。

「なに、あれ・・・」
「すげェ・・・。あの高さから着地した・・・。猫みてェだ」

ウソップも息を呑んだ。

ジャンゴがニャーバン・兄弟の二人に告げる。

「ブチ、シャム、おれ達はこの坂道をどうあっても通らなきゃならねェんだが、見てのとおり邪魔がいる!あれを消せ!!」

それを受けて、二人が答える。

「そ・・・そんな、ムリっすよォ僕たちには。なァ、ブチ」
「ああ、あいつ強そうだぜ、まじで!!」

怯える二人に、坂の上の3人も驚いていた。
ウソップとナミは呆れて言った。

「な・・・!何だあいつら、切り札じゃなかったのか!?」
「完全にびびってる・・・!!」

ゾロも拍子抜けしている。

ニャーバン・兄弟は続ける。

「だいたいぼくらはただの船の番人なんだから」
「そうそう、こんな戦いの場にかり出されても」

ジャンゴが業を煮やして怒鳴った。

「シャム!さっさと行かねェか!!!」
「え!?ぼくですかぁ!?」

シャムがありえないと言うように頭を抱える。

「急げ!!」

ジャンゴがさらに怒鳴る。

「わかりましたよ、行きますよっ!!」

シャムがしぶしぶ向かう。

「べそかいちゃった・・・!」

ナミが唖然とする。

「どういうつもり!?あんな奴戦わせるなんて・・・」

シャムがどたどたとゾロに突進する。

「おいお前、覚悟しろー!このカギヅメでひっカクぞー!」
「・・・!あれをおれにどうしろっつうんだよ・・・!!!」

ゾロが困ったようにシャムを見る。

「お前っ!止まらねぇと斬るぞっ!!」

シャムの目が光る。

「斬れるもんならな・・・」
「なに・・・!?」

突進してくるシャムのスピードが格段に上がり、カギヅメでゾロに襲い掛かる。
寸でで、ゾロは刀でそれを受けた。

「こいつ・・・!?」
「貴様おれを今見くびってたろ・・・!!!」

シャムはゾロから離れると、不敵な笑みを浮かべた。

「だがよく受けたな!おれは今ネコをかぶっていたのに!!!」

「まさかあいつ・・・、弱くねェのか!!?」

ウソップが叫ぶ。
ナミが気づいた。

「ゾロ!?刀は!?」

その言葉にゾロも気づいた。
あるはずの場所に手をやる。

「え・・・ないっ!!」

手にした刀以外、2本の刀が鞘ごと腰から消えている。

「まァ、てめェもちったァやるようだが、クロネコ海賊団”ニャーバン・兄弟”のシャムを甘くみねェこった・・・」

シャムがニヤリと笑った。背中にはゾロの2本の刀を背負って。

「何か失くしたのかい?おれは知らねェがな・・・」

坂の下ではジャンゴとブチが笑う。

「出たか」
「ネコババ」

─── あの野郎・・・、おれの刀を・・・!!!

ゾロはシャムが背負う自身の刀を見つめ、ショックを隠せなかった。
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