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第32話 大凶

「まずい、刀取られちゃった!!」

形勢逆転とはこのことである。
相手を圧していたはずだった。
だが今は、刀3本のうち2本を取られてしまっている。

ゾロは静かに言った。

「その刀を返せ・・・!」
「返す?刀ならてめェで持ってんじゃねェか」

シャムはにやりと笑う。
そして背負っていたゾロの刀2本を下ろすと、

「そうだ、戦う前にこの荷物・・・」
「・・・・・」
「邪魔だな、こりゃ・・・」

坂の下に、まるでゴミを捨てるかのように放り投げた。

「!」

ゾロの表情が変わる。
刀は乾いた音を立てて、坂の下まで転がっていった。

シャムが舌なめずりする。

「さーて、これで身軽に・・・」
「他人の刀(もの)は大切に扱うもんだぜ!!!」

もう手加減しない。
ゾロは猛然とシャムに向かっていった。

ズバッ!!!

ゾロの刀がシャムの胴をぶった斬る。

「!」
「強ェ!!!」

坂の上の2人は、あらためてゾロの強さを実感したようだ。

「!」
「・・・おれの出番か・・・」

坂の下のジャンゴとブチも同様に感じたようだ。
シャムを切り捨てたゾロは、そのまま坂の下の刀に駆け寄った。

「野郎・・・おれの刀をよくも!!!」

しかし背後から声が響いた。

「何を斬ったんだい!?」
「!!?」

シャムが目にも止まらぬ速さで背後からゾロの両腕を掴み、背中に乗る。

「残念おれは、ネコ背なのさ!」
「・・・何だと!?」

ゾロは反動で前にのめりながらシャムを振り返る。
斬ったはずの腹の部分には傷一つついていない。
ネコ背が過ぎて、何もしていなくても前かがみになっているのと同じなのだ。

「あいつ・・、腹はスカスカだったのか!」

ウソップも唖然として言った。

シャムが叫ぶ。

「やれブチ!!出番だ!!!」
「がってん、シャム!」

シャムの声に、ブチがゾロへ飛び掛る。

「ぐ!!」

ゾロはシャムに押さえ込まれて動けない。
ブチは空高く飛び上がった。

「猫殺っ!キャット・ザ・・・」

ナミが叫ぶ。

「危ないっ!!!」

フンジャッタ!!!

ドゴォォォン!!!

「うわ!」

ブチが振り下ろした脚は、地面をえぐるほどの衝撃。
ゾロはかろうじて避けた。

「!!?地面にヒビが・・・!!!」
「すごい!」

ウソップとナミは、ただただ驚くばかりだ。

「くっ・・・!」

ゾロは衝撃で後ずさる。
シャムはゾロを振り返って悔しがった。

「畜生、逃がしたか!」
「おい、しっかり押さえてろ、シャム!」

ブチがシャムを叱りつけた。

「わりィわりィ、あんにゃろ思ったよりバカ力でよ!」

「・・・・・!!!」

紙一重で避けたゾロは、冷や汗をかいた。

─── 危なかった・・・!冗談じゃねェぜ、あんなの一発でも食らったら全身の骨がコナゴナになっちまう・・・!!!

「今度は逃がさねェ」
「おおともよ」

ブチとシャムの2人がゾロへ構える。

「・・・一刀流はあんまし得意じゃねェんだが」

ゾロも、刀を構えた。

「いくぜブチ!!」
「よしきたシャム!!」

2人が猛然と襲い掛かる。

「ネコ柳大行進!!!」

2人のカギヅメが目にも止まらない速さで襲ってくる。

「シャシャシャシャシャシャ」
「シャシャシャシャシャシャ」

「・・・・・!!」

ゾロは刀でそれを受け流しているが、防戦一方だった。

「やばい!ゾロが押されてる」

ナミはふとウソップを見た。ウソップはパチンコを構えている。

「何する気!?」
「2人相手に攻撃を受けっぱなしじゃ、拉致があかねェよ。援護する」

そう言って、パチンコを思いっきり引き絞る。

「くらえ”鉛星”っ!!」

パチンコから放たれた鉛玉が寸分違わずブチへ・・・のはずだった。

ドゴンッ!!

鉛玉はゾロの左肩に命中する。

「・・・・・!!え!!?」

ウソップは目を疑った。

「すきありィ!!!」

鉛玉を食らったせいで体勢を崩したゾロに、ブチとシャムが突っ込む。

「うわ!!!」

避けるのも間に合わず、カギヅメの攻撃を腹にまともに食らってしまった。
しかしもんどりうって倒れたが、すぐさま体勢を整える。

「味方に攻撃してどうすんのよ!!!」

ナミが怒鳴る。

「い・・・いや、違う・・・!」

ウソップは言った。

「あいつ・・今、自分から当たりに行った様な・・・!」
「自分から・・・!?」

─── ウソでしょ!?

ナミはゾロを見た。
ゾロが怒鳴る。

「バカ野郎、ウソップ!!死にてェのか!!!」

ナミは気づいた。

「・・・もしかして、こっちが助けられたんじゃないの・・・?」
「え!?」
「だって、パチンコなんて撃ち込んだら、多分あの2人組標的を私達に変えて襲ってくるわ」
「!」
「そしたら・・・私達どうなってたと思う?」
「あいつ・・・、そんなこと考えてる場合かよ・・・!」

ウソップは驚きを隠せなかった。

ゾロは今だ2人の攻撃をかわしているが、それでもどんどん圧され始めていた。

─── くそ・・・、せめてあと1本刀があれば・・・!!!

「・・・でも、このままじゃまずい・・・」

ナミが意を決して言った。

「私が刀を取りにいくわ!ゾロに渡せば必ず勝ってくれるはず!」
「だったらおれがっ!」

─── 女の子にそんなことはさせられない!

「無理しないの、あんたはフラフラでしょ!?」

そう言うとナミは坂道を駆け下りる。

「おい!!」

ウソップがナミを止める。しかし彼女はゾロの横も通り抜け一直線に刀のところへ走っていった。

「あいつ何を・・・!?」

ゾロもナミの行動に気づく。

「・・・・・!」

その様子をジャンゴは黙って見つめている。

「これさえ渡せば!!」

もう少しで刀に手が届く。

ズバッ!!

「!!?」
「刀に何の用だ」

そう簡単に刀を渡すわけには行かない。
ジャンゴはナミの肩を手にした輪っか・・・チャクラムで斬り裂いた。

「きゃあ!」

ナミはその勢いで坂の下まで転げ落ちていく。

「野郎ォ!!!」

ウソップが怒鳴る。

─── 唯一の希望が・・・!!!

しかし、今の彼には何もできなかった。







ふと、坂の上を見上げていたジャンゴの表情が変わった。
見る見るうちに、怯えたものに変わっていく。

「・・・あ・・・!!あ・・・いや!これは・・・その、事情があってよ・・・!!!」

ウソップも振り返った。

「え・・・」

坂の下の海賊たちも、その男を見上げる。

「キ・・・キャ・・・キャプテン・・・クロ・・・!!」
「・・・こ・・・殺される・・・」

そう、そこにはクラハドール・・・、いや、キャプテン・クロがたたずんでいたのだ。

─── 最悪だ・・・!何てタイミングで現れやがるんだ!!!

ウソップが真っ青になる。

キャプテン・クロは静かに言った。

「─── もうとうに夜は明けきってるのになかなか計画が進まねェと思ったら・・・」

何だこのザマはァ!!!!
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