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第7話 友達

「た・・・大佐が負けた・・・!!!」
「モーガン大佐が倒れた!!!」

地面に転がるモーガンとヘルメッポ。
海兵たちはその光景を信じられないでいた。

「まだおれ達を捕らえてェ奴ァ、名乗り出ろ!」
ゾロが凄む。

海兵たちは顔を見合わせ ───

「やったァ───っ!!!」
「解放された!!!」
「モーガンの支配が終わったァ!!!」
「海軍バンザーイ!!!」

全員が武器を放り投げ、跳びあがって喜んだ。
その様子を見ながらルフィは、

「なんだ、大佐やられて喜んでやんの」
「・・・みんな、モーガンが恐かっただけなんだ・・・!!」

コビーも喜ぶ。
その時、突然ドサっという音が聞こえた。

「ゾロ!?」
「ゾロさん!!」

ゾロが急に倒れた。







「はァ、食った・・・!!!さすがに9日も食わねェと極限だった」

満腹になったゾロがふーっと息をつく。
もう、黒い手ぬぐいは頭に巻いていない。
こうしてみると、普通の青年である。
・・・髪の毛は緑色だが。
一騒動の後、ルフィたちはリカの家でママの手料理をご馳走になっていた。
窓には、モーガンの支配から救ってくれた人達を一目見ようと、町中の人が張り付いている。

「じゃあ、どうせ一ヶ月は無理だったんだな!」

ルフィががっつきながら言った。

「おめェはなんでおれより食が進んでんだよ」
「すいませんなんか・・・、僕までごちそうに・・・」

コビーが申し訳なさそうに言うと、

「いいのよ!町が救われたんですもの!」

リカのママが笑って言った。
その横で、リカもニコニコしている。

「やっぱり、お兄ちゃんすごかったのね!」
「ああ、すごいんだ。もっとすごくなるぞ、おれは!」

ルフィがにっと笑う。

「・・・それで。ここからどこへ向かうつもりだ?」

ゾロが尋ねた。

「”偉大なる航路(グランドライン)”へ向かおう」

目を輝かせて言うルフィに、コビーが慌てる。

「んまっ、また無茶苦茶な!!!まだ2人なのに”偉大なる航路”へ入るなんて!!死にに行く様なもんです!!!わかってるんですか!?あの場所は世界中から最も屈強な海賊たちが集まって来てるんです!!」

必死になって訴えるコビーだったが、

「まァ、どの道”ワンピース”を目指すからにはその航路をたどるしかねェんだ・・・。いいだろう」

と、ゾロ。

「いいって、あなたまでゾロさん!!?」
「別にお前は行かねェんだろ・・・?」
「い・・いか・・・行かないけど!!心配なんですよ!!いけませんか!!?あなた達の心配しちゃいけませんか!!!」

コビーがテーブルを叩く。

「いや・・・、それは」

その迫力にゾロも押され気味だ。
コビーがルフィの方を向いて言った。

「ルフィさん、ぼくらは・・・!!つきあいは短いけど、友達ですよね!!!」
「ああ、別れちゃうけどな。ずっと友達だ」

ルフィの笑顔に、コビーも安心したようだ。

「ぼくは・・・、小さい頃からろくに友達なんていなくて・・・、ましてやぼくの為に戦ってくれる人なんて、絶対いませんでした。なによりぼくが戦おうとしなかったから・・・!!だけど、あなた達2人には・・・!!自分の信念に生きることを教わりました!!!」
「だから、おれは”偉大なる航路”へ行くんだよ」
「まァそうなるな」

ゾロも同意する。

「あっ、そうか。・・・・・いや!違いますよ。だからぼくは今行く事が無謀だって・・・」

危うく言いくめられるところだった。

「それより」

ゾロが刀の柄でコビーを小突いた。

「お前は大丈夫なのかよ」
「え?」
「雑用でもアルビダの海賊船に2年居たのは事実なんだろ?海軍の情報力を見くびるな。その素性が知れたら入隊なんてできねェぜ」





「─── 失礼!」

その時、リカの家に一人の海兵、海軍中佐がやってきた。
外には他の海兵たちがずらっと並んでいる。

「君らが海賊だというのは、本当かね・・・」

その問いに、ルフィが答えた。

「そうだね、1人仲間もできた事だし、じゃ今から海賊ってことにしよう!」
「・・・反逆者としてだが、我々の基地とこの町を実質救って貰った事には一同感謝している。しかし君らが海賊だとわかった以上、海軍の名において黙っているわけにはいかない。即刻、この町を立ち去ってもらおう。せめてもの義理を通し、本部への連絡は避ける」

その言葉に、家の外に居た町の人達が反論した。

「おい海軍っ!!何だ、そのいいぐさは!!」
「てめェらだって、モーガンにゃ押さえつけられてビクビクしてたじゃねェか!!」
「我々の恩人だぞ!!!」

しかしルフィは、素直に中佐の言葉に従い、腰を上げた。

「じゃ・・・、行くか。おばちゃん、ごちそうさま」

「ルフィさん・・・」
「もう行っちゃうの?お兄ちゃん達」

コビーは言葉もない。
リカも寂しそうだ。
そんなコビーにルフィは何も言わず、そばを素通りする。

「君も仲間じゃないのか?」

中佐はその場に立ちすくんだままのコビーに言った。

「え!ぼく・・・!!ぼくは・・・!!」

”別れちゃうけどな・・・、ずっと友達だ”

コビーの脳裏に、ルフィの言葉が浮かぶ。

「ぼくは彼らの・・・、仲間じゃありません!!!」

その言葉を聞いて、ルフィはにやっと笑った。

「・・・待ちたまえ、君達!!」

中佐が家を出て行こうとするルフィとゾロを引き止める。

「本当かね?」

ルフィは言った。

「おれコイツが今まで何やってたか知ってるよ」
「ルフィさん・・・!?」

─── まさか・・・・・!!

「どの辺の島だかわかんねェけど、こーんな太った女の海賊がいてさァ、アルビダっつったかな」
「ちょ、やめて下さいよ・・・」

─── 海賊船に居たことがバレたら・・・、海軍に入れなくなっちゃう!!!

中佐は黙って聞いている。

「なんだかイカついおばさんなんだけど、2年間もコイツそこで・・・」

─── やめて下さいよ!!やめて下さいよ・・・!!!

「やめて下さいよ!!!!」

コビーは思わずルフィを思いっきり殴っていた。
当の殴られたルフィはにやりと笑う。
ゾロも、ほっと安堵のため息をついた。
殴ったショックで息を荒げるコビーに、

「やったな、このヤロォ」

ルフィが殴り返す。

「このやろ、このやろ」

軽くぼっこぼこに倍以上返し。
コビーはなすすべがない。

「やめたまえ!!!これ以上この町で騒動を起こすことは許さんぞ!!!」

中佐が大声を上げる。

「おいおい、やりすぎだ。そのへんにしとけよ」

ゾロがルフィを引っ張って止めた。

「君らが仲間じゃないことはよくわかった!!!今すぐこの町を立ち去りなさい!!!」

中佐の声を、床に倒されたままのコビーは聞いていた。

─── わざとか・・・、ぼくの為に!!!わざとぼくにけしかけて・・・、殴らせて・・・!!!

ルフィたちは笑顔で港に向かう。

─── また・・・!!ぼくは最後の最後まであの人に頼ってしまった!!
─── 何も変わってないじゃないか!!!ぼくは・・・、バカか!!?
─── ここから這い上がれなきゃ、本当にバカだ!!!

コビーはすっくと立ち上がって、中佐に頭を下げて訴えた。

「ぼくを海軍に入れてください!!!雑用だって何だって喜んでやります!!海兵になるためなら!!!」

─── よしやるぞ!!ぼくはやる!!!

しかし、表にいた1人の海兵が言った。

「中佐!私は反対ですよ!悪いがね、私はまだ君を信用しきれない」

コビーの顔に不安がよぎる。

「海賊が海軍のスパイになるという例もある。まずは君の素性を調べて・・・」

「ぼくは!!!海軍将校になる男です!!!!」

コビーがゆるぎない瞳で叫ぶ。

「・・・海賊にやられた同士は数知れない。海軍を甘く見るな」

中佐がコビーを通り過ぎる。

「入隊を許可する」

コビーの決心が中佐に届いたのだ。

「はいっ、ありがとうございます!!!」


こうして、晴れてコビーは海軍に入隊することとなった。







その頃、港では。

「たいしたサル芝居だったな。あれじゃバレてもおかしくねぇぞ」

ゾロが苦笑いする。

「あとはコビーが何とかするさ、絶対!」
「何にしてもいい船出だ。みんなに嫌われてちゃ、後引かなくて海賊らしい」
「だはは、そうだな!」

ルフィが出航の準備を始めた時だった。

「ル!ル!ルフィさんっ!!!」

息せき切って、コビーが走ってきた。

「ありがとうございました!!!このご恩は一生忘れません!!!」

そう叫んで、手の甲を向けた敬礼をする。
タール等で汚れた手のひらを見せない為の、海兵ならではの敬礼だ。

「海兵に感謝される海賊なんて聞いたことねェよ」
ゾロが笑う。

「しししし!」
ルフィも笑う。

「まあ逢おうな!!!コビー!!!」

「全員敬礼!!」

コビーの後ろに海兵たちもやってきていた。
全員、ルフィたちに感謝の気持ちを込めて敬礼をしている。
コビーや海兵、町の人達に見送られ、ルフィとゾロは船を出した。
見送りながら、中佐がコビーに言った。

「いい友達をもったな」
「はいっ」

そして中佐は海兵全員に告げる。

「我々の今の敬礼は、海軍軍法の規律を犯すものである。よって全員、先一週間メシ抜きだ!!!」
「はっ!!!」





船の上では、改めてルフィが宣言していた。

「く───っ、行くかァ!!”偉大なる航路”!!!」





1人目の仲間に”海賊狩りのゾロ”を引き込み、船は行く。
しかし彼らは、重大なミスにまだ気づいていなかった。
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