第8話 ナミ登場
シェルズタウンを後にし、ルフィとゾロの2人は次の島へ向け、のんびりと航海していた。
天気は快晴。波も穏やか。しかし ───。
「あ───、腹へった───」
「・・・・・」
軽く遭難しかけである。
それもそのはず、2人が乗った小さな船には水の入った樽一つ、あとは自分たちの旅の道具くらいしかないのだ。
およそ、”偉大なる航路(グランドライン)”へ向け航海しようというような船の装備ではない。
「─── だいたい、お前が航海術持ってねぇってのはおかしいんじゃねェか?」
ゾロが呆れて言った。
「おかしくねェよ、漂流してたんだもんおれは!」
ルフィが言い返す。
・・・威張って言うことではない。
「お前こそ、海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」
「おれはそもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ」
ゾロは言う。
「ある男を探しにとりあえず海へ出たら、自分の村へも帰れなくなっちまったんだ。仕方ねェからその辺の海賊船を狙って生活費を稼いでた・・・。それだけだ」
「何だ、お前迷子か」
「その言い方はよせ!!」
ゾロが怒鳴る。
・・・図星だったのだろうか。
「まったく・・・!航海もできねェなんて、海賊が聞いて呆れるぜ!」
ゾロがため息をつく。
「これじゃ”偉大なる航路”も目指しようがねェ。早ェとこ”航海士”を仲間に入れるべきだな」
「あと、”コック”とさ”音楽家”とさァ・・・」
「んなモンあとでいいんだよ!!!」
そして2人は同時に倒れこんだ。
「腹へった」
それもそのはず、シェルズタウンを出発してから何も食べてないのだ。
倒れこんだ2人の目線の先に、1羽の鳥が飛んでいる。
「お、鳥だ」
「でけぇな、わりと・・・」
鳥は優雅に空を舞う。
「食おう!!あの鳥っ」
ルフィが、がばっと起き上がった。
「?どうやって・・・」
「おれが捕まえてくる!まかせろ!!」
そう言うと、ルフィは船のマストへ腕を伸ばした。
「ゴムゴムの・・・ロケット!!!」
そして反動をつけて、鳥めがけて飛んで行った。
「なるほどね・・・」
ゾロはその様子を見ていた・・・が。
ルフィの様子がおかしい。
「はっ!」
「は!?」
思ったよりでかかったその鳥は、ルフィをぱくっと咥えたのだ。
「ぎゃ───っ、助けて───っ」
そしてどこかへと飛んでいく。
「あほ───――っ!!!一体何やってんだ、てめェはァ!!!」
ゾロは慌てて舟を漕ぎ、鳥を追いかけて行った。
力いっぱい追いかけている途中、前方から声がした。
「お───い、止まってくれェ!!」
「そこの船、止まれェ!!」
見ると、海に3人の男達が浮かんでいた。
「ん!?遭難者か、こんな時にっ!!」
ゾロは叫んだ。
「船は止めねェ!!勝手に乗り込め」
「な!!なにいっ!!?」
暴走する船が、自分達の目の前に迫ってくる。
「うお!」
「どわああっ!!」
間一髪、彼らは船に乗り込むことに成功した。
「へえ!よく乗り込めたな」
漕ぎながら、ゾロが感心する。
「ひき殺す気かっ!!・・・なんて乱暴な奴だ・・・!!」
瞬間、ぜいぜい喘いでいた男達の様子が一変した。
刀をひらめかせて、ゾロに迫る。
「おい、船を止めろ。おれ達ァ、あの海賊”道化のバギー”様の一味のモンだ」
「あァ!?」
ゾロも表情を変える。
「あっはっはっはっはーっ」
「あなたが”海賊狩りのゾロ”さんだとはつゆ知らずっ!しつれいしましたっ」
しばらくの後、ゾロの代わりに船を漕ぐ3人の男達の姿があった。
ゾロに思いっきりボコボコにされて。
「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。とにかくまっすぐ漕げ。あいつの事だ、陸でも見えりや自力で下りるだろう」
3人の海賊は、愛想笑いしながら、えいさー、えいさーと漕いでいる。
「─── で、何で海賊が海の真ん中で溺れてたんだ」
「それだっ!!よく聞いてくれやした!!」
海賊たちはここぞとばかりに訴える。
「あの女っ!!」
「そうあの女が全て悪いっ!!!」
「しかもかわいいんだ、けっこう!!」
約1名、余計なことを。
海賊の1人が話し始めた。
「ありゃあ、おれ達が商船を襲った帰りの事でした───」
─── ゾロの船が通りかかる少し前の事。
「ぐっしっしっしっしっし!!」
「こりゃあ、いい額の宝だぜ!!」
ピエロのような顔の骸骨の海賊旗を掲げた船が、拠点にしている島にちょうど戻るところであった。
船の上では、3人の海賊が奪ったお宝の品定めをしていた。
「あの小せェ商船にしちゃあ、上出来だ!!」
「バギー船長から御褒美が出るかもな!!」
思ったよりも質のいいお宝だったのだろう、宝箱を囲んで3人はホクホク顔だった。
「ん?おい、あの船なんだ」
しばらくすると、前方に船が漂流しているのが見えた。
「誰かぐったり倒れてるぞ」
海賊達は自分達の船を、その船の横につける。
「お?女じゃねェのか?」
「おい!お前、ぐっしっしっし、どうしたんだ。死んでんのか?」
その声に彼女は目を覚ました。
「あ・・・ああ、私は夢でも見ているのかしら・・・。こんなに広い海で・・・、人に出会えるなんて・・・」
彼女は息も絶え絶えに言う。
肩までのオレンジ色の髪、スレンダーだが出るところは出て引っ込むところは引っ込むという、かなりバランスの取れたスタイル。白とブルーのボーダーのTシャツに、オレンジのミニスカートがよく似合っていた。そしてかなりの美少女。
そう、彼女は少女、と言った方がまだしっくり来るくらい若い女性であった。
「・・・ど、どなたか存じませんが・・・、水を。水を・・・一杯いただけませんか。・・・できるなら、たった一かけらのパンでも・・・。私・・・遭難してしまって・・・!!」
そして傍らの宝箱を指した。
「お金なら・・・差し上げます、いくらでも。どうか・・・、助けて・・・」
宝箱を見て、3人の海賊達はにやっと笑った。
「いいとも、助けてやろう。その前にその宝箱を見せてくれねェかな?」
「どうぞ・・・、こちらへ来て好きなだけお持ちください。それより・・・、水を・・・!!」
だが、海賊達は我先に彼女の船に飛び移る。
「まァ待て待て、娘さん!!宝の確認が先さ!」
「そう!なんせおれ達ゃ、あんたの命を助けるんだ!!」
しかし、時はすでに遅かった。
「よろしければその船ごと、差し上げますわ!」
海賊達と入れ替わりに、彼らの船に乗り込んだ彼女はにっこりと笑って言った。
「は!??」
「あの女!!おれ達の宝積んだ船を!!」
「おい、この宝箱空だぜ!!!」
もう、後の祭り。
彼女を乗せた彼らの船は、ゆっくりと遠ざかって行く。
─── と、その時彼らの真上に雲が広がってきた。
その様子を遠めに見ながら、彼女は言った。
「南の空に低い黒雲をともなう寒冷前線を発見っ!!まもなく激しい雨とともに、スコールが吹くでしょう。小さな船は転覆にご注意くださいっ!!」
するとどうでしょう。
彼女の言ったとおり、局地的なスコールで海賊達の乗った船が転覆したのだ。
「ビンゴっ!」
彼女がにやっと笑う。
「じゃあね、お宝はもらってくわ!」
溺れる海賊達を尻目に、彼女は意気揚々と去っていった。
「畜生ォ、てめェ謀りやがったな!!!」
「待ちやがれ、女ァ!!!」
スコールの空に、彼らの叫びはむなしく響いていった。
「─── ってゆう次第なんですよ!ヒドいでしょ!?」
大声で訴える海賊達だったが、ゾロは、
「・・・天候まで操るのか・・・。海を知り尽くしてるな、その女。航海士になってくれねェかな」
感心しきりだった。
「あいつは絶対探し出してブッ殺す!!」
「それより宝をまずどうする」
「そうだぜ、このまま帰っちゃバギー船長に・・・」
焦る海賊達。
「そのバギーってのは誰なんだ・・・!?」
ゾロは、先ほどから出てくる”バギー”という名前が気にかかっていた。
海賊の1人が答える。
「おれ達の海賊船の頭ですよ。”道化のバギー”を知らねェんで?”悪魔の実シリーズ”のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ!!」
「・・・悪魔の実を・・・?」
─── この海にルフィ以外に悪魔の実を食べた奴がいるのか・・・。
その頃、ゾロたちの船からそう遠くない場所にある島では、一つの騒ぎが起きていた。
この島の町の名前は、”オレンジの町”。
港には大きな海賊船が停泊しており、そのせいで町は人っ子一人いなかった。
みんな海賊たちから避難しているのだろうか。
そのがらんとした町を、1人の女の子が逃げ回っていた。
そう、あの海賊達のお宝を奪ったオレンジの髪の彼女だ。
「待て貴様ァ~~~っ!!」
「泥棒女ァ、海図を返せェーっ!!!」
追うのは、海賊達。
「やっと手に入れた!”偉大なる航路”の海図っ!!!」
彼女は手にした海図を握り締める。
「クソ!!早く取りかえさねェと、おれ達の命も危ねェぜ!!」
「船長の砲弾で死ぬのもゴメンだしな!」
海賊達は追いかける足をさらに速めた。
その頃、海賊たちが占拠している酒場では。
「バギー船長、港の空に何か見えます!」
海賊の1人が空に何か見つけたようだ。
「大砲で打ち落とせ」
「はいっ!!」
放たれる大砲。
それは空の得体の知れない物体に、寸分違わず命中した。
「おあーっ」
ズドォン!!!
そしてそれは、彼女と、それを追う海賊たちの間に落ちた。
「ひ・・人が、空から降って来た!!!」
「何・・・?」
目の前の出来事に驚く彼女と海賊達。
「何で砲弾が飛んでくるんだ!?くっそ~~~」
それは、土煙の中から起き上がってきた。
「あ───、助かった」
ルフィである。
「うわっ、生きてる!!!」
さらにその事実に驚く海賊たち。
彼女は、とっさに状況を理解し、知恵をめぐらせた。
─── そして。
「お・・・!!親分っ!!助けに来てくれたのね!?後は任せたわ!!」
そう、ルフィに言うや否や、一目散に駆けて行った。
海賊が叫ぶ。
「おい、女が逃げたぞ」
「追う必要はねェ!!」
別の海賊が叫んだ。
そしてルフィを囲む。
「親分がわざわざ残ってくれてる」
「なるほど・・・、子分をかばったって訳だな。お陰で追い回す手間が省けた」
「なァ親分っ!!」
海賊の1人がルフィに向けて剣を振り回す。
「あの海図は恐れ多くも海賊”道化のバギー”様の持ち物だ!!!」
その勢いでルフィのかぶっていた麦わら帽子が飛んだ。
「あ」
瞬間、ルフィはその海賊に鉄拳を食らわせた。
殴られた海賊は、その勢いで吹っ飛ぶ。
「おれの宝物に、触るな」
「こ・・・」
「この野郎ォ~~~っ!!!」
勝負は一瞬だった。
残りの海賊達は、あっという間に地面に転がっていた。
「─── すごいっ」
傍の建物の軒先から声がする。
彼女だった。
「強いのね、あんた。剣相手に素手で勝っちゃうなんて」
「あ!誰だ、お前」
ルフィが気づいて言った。
「私は海賊専門の泥棒っ!!ナミって言うの。私と組まない?」
「海賊専門?」
ルフィはいぶかしんだ。
管理人ひとことこめんと
ナミ登場です。
ナミはねー、ずるいよねー。
周りにいい男はべらかしてさーw
でもナミもそれに負けないくらいオトコマエだから良しとしましょう。
天気は快晴。波も穏やか。しかし ───。
「あ───、腹へった───」
「・・・・・」
軽く遭難しかけである。
それもそのはず、2人が乗った小さな船には水の入った樽一つ、あとは自分たちの旅の道具くらいしかないのだ。
およそ、”偉大なる航路(グランドライン)”へ向け航海しようというような船の装備ではない。
「─── だいたい、お前が航海術持ってねぇってのはおかしいんじゃねェか?」
ゾロが呆れて言った。
「おかしくねェよ、漂流してたんだもんおれは!」
ルフィが言い返す。
・・・威張って言うことではない。
「お前こそ、海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」
「おれはそもそも賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ」
ゾロは言う。
「ある男を探しにとりあえず海へ出たら、自分の村へも帰れなくなっちまったんだ。仕方ねェからその辺の海賊船を狙って生活費を稼いでた・・・。それだけだ」
「何だ、お前迷子か」
「その言い方はよせ!!」
ゾロが怒鳴る。
・・・図星だったのだろうか。
「まったく・・・!航海もできねェなんて、海賊が聞いて呆れるぜ!」
ゾロがため息をつく。
「これじゃ”偉大なる航路”も目指しようがねェ。早ェとこ”航海士”を仲間に入れるべきだな」
「あと、”コック”とさ”音楽家”とさァ・・・」
「んなモンあとでいいんだよ!!!」
そして2人は同時に倒れこんだ。
「腹へった」
それもそのはず、シェルズタウンを出発してから何も食べてないのだ。
倒れこんだ2人の目線の先に、1羽の鳥が飛んでいる。
「お、鳥だ」
「でけぇな、わりと・・・」
鳥は優雅に空を舞う。
「食おう!!あの鳥っ」
ルフィが、がばっと起き上がった。
「?どうやって・・・」
「おれが捕まえてくる!まかせろ!!」
そう言うと、ルフィは船のマストへ腕を伸ばした。
「ゴムゴムの・・・ロケット!!!」
そして反動をつけて、鳥めがけて飛んで行った。
「なるほどね・・・」
ゾロはその様子を見ていた・・・が。
ルフィの様子がおかしい。
「はっ!」
「は!?」
思ったよりでかかったその鳥は、ルフィをぱくっと咥えたのだ。
「ぎゃ───っ、助けて───っ」
そしてどこかへと飛んでいく。
「あほ───――っ!!!一体何やってんだ、てめェはァ!!!」
ゾロは慌てて舟を漕ぎ、鳥を追いかけて行った。
力いっぱい追いかけている途中、前方から声がした。
「お───い、止まってくれェ!!」
「そこの船、止まれェ!!」
見ると、海に3人の男達が浮かんでいた。
「ん!?遭難者か、こんな時にっ!!」
ゾロは叫んだ。
「船は止めねェ!!勝手に乗り込め」
「な!!なにいっ!!?」
暴走する船が、自分達の目の前に迫ってくる。
「うお!」
「どわああっ!!」
間一髪、彼らは船に乗り込むことに成功した。
「へえ!よく乗り込めたな」
漕ぎながら、ゾロが感心する。
「ひき殺す気かっ!!・・・なんて乱暴な奴だ・・・!!」
瞬間、ぜいぜい喘いでいた男達の様子が一変した。
刀をひらめかせて、ゾロに迫る。
「おい、船を止めろ。おれ達ァ、あの海賊”道化のバギー”様の一味のモンだ」
「あァ!?」
ゾロも表情を変える。
「あっはっはっはっはーっ」
「あなたが”海賊狩りのゾロ”さんだとはつゆ知らずっ!しつれいしましたっ」
しばらくの後、ゾロの代わりに船を漕ぐ3人の男達の姿があった。
ゾロに思いっきりボコボコにされて。
「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった。とにかくまっすぐ漕げ。あいつの事だ、陸でも見えりや自力で下りるだろう」
3人の海賊は、愛想笑いしながら、えいさー、えいさーと漕いでいる。
「─── で、何で海賊が海の真ん中で溺れてたんだ」
「それだっ!!よく聞いてくれやした!!」
海賊たちはここぞとばかりに訴える。
「あの女っ!!」
「そうあの女が全て悪いっ!!!」
「しかもかわいいんだ、けっこう!!」
約1名、余計なことを。
海賊の1人が話し始めた。
「ありゃあ、おれ達が商船を襲った帰りの事でした───」
─── ゾロの船が通りかかる少し前の事。
「ぐっしっしっしっしっし!!」
「こりゃあ、いい額の宝だぜ!!」
ピエロのような顔の骸骨の海賊旗を掲げた船が、拠点にしている島にちょうど戻るところであった。
船の上では、3人の海賊が奪ったお宝の品定めをしていた。
「あの小せェ商船にしちゃあ、上出来だ!!」
「バギー船長から御褒美が出るかもな!!」
思ったよりも質のいいお宝だったのだろう、宝箱を囲んで3人はホクホク顔だった。
「ん?おい、あの船なんだ」
しばらくすると、前方に船が漂流しているのが見えた。
「誰かぐったり倒れてるぞ」
海賊達は自分達の船を、その船の横につける。
「お?女じゃねェのか?」
「おい!お前、ぐっしっしっし、どうしたんだ。死んでんのか?」
その声に彼女は目を覚ました。
「あ・・・ああ、私は夢でも見ているのかしら・・・。こんなに広い海で・・・、人に出会えるなんて・・・」
彼女は息も絶え絶えに言う。
肩までのオレンジ色の髪、スレンダーだが出るところは出て引っ込むところは引っ込むという、かなりバランスの取れたスタイル。白とブルーのボーダーのTシャツに、オレンジのミニスカートがよく似合っていた。そしてかなりの美少女。
そう、彼女は少女、と言った方がまだしっくり来るくらい若い女性であった。
「・・・ど、どなたか存じませんが・・・、水を。水を・・・一杯いただけませんか。・・・できるなら、たった一かけらのパンでも・・・。私・・・遭難してしまって・・・!!」
そして傍らの宝箱を指した。
「お金なら・・・差し上げます、いくらでも。どうか・・・、助けて・・・」
宝箱を見て、3人の海賊達はにやっと笑った。
「いいとも、助けてやろう。その前にその宝箱を見せてくれねェかな?」
「どうぞ・・・、こちらへ来て好きなだけお持ちください。それより・・・、水を・・・!!」
だが、海賊達は我先に彼女の船に飛び移る。
「まァ待て待て、娘さん!!宝の確認が先さ!」
「そう!なんせおれ達ゃ、あんたの命を助けるんだ!!」
しかし、時はすでに遅かった。
「よろしければその船ごと、差し上げますわ!」
海賊達と入れ替わりに、彼らの船に乗り込んだ彼女はにっこりと笑って言った。
「は!??」
「あの女!!おれ達の宝積んだ船を!!」
「おい、この宝箱空だぜ!!!」
もう、後の祭り。
彼女を乗せた彼らの船は、ゆっくりと遠ざかって行く。
─── と、その時彼らの真上に雲が広がってきた。
その様子を遠めに見ながら、彼女は言った。
「南の空に低い黒雲をともなう寒冷前線を発見っ!!まもなく激しい雨とともに、スコールが吹くでしょう。小さな船は転覆にご注意くださいっ!!」
するとどうでしょう。
彼女の言ったとおり、局地的なスコールで海賊達の乗った船が転覆したのだ。
「ビンゴっ!」
彼女がにやっと笑う。
「じゃあね、お宝はもらってくわ!」
溺れる海賊達を尻目に、彼女は意気揚々と去っていった。
「畜生ォ、てめェ謀りやがったな!!!」
「待ちやがれ、女ァ!!!」
スコールの空に、彼らの叫びはむなしく響いていった。
「─── ってゆう次第なんですよ!ヒドいでしょ!?」
大声で訴える海賊達だったが、ゾロは、
「・・・天候まで操るのか・・・。海を知り尽くしてるな、その女。航海士になってくれねェかな」
感心しきりだった。
「あいつは絶対探し出してブッ殺す!!」
「それより宝をまずどうする」
「そうだぜ、このまま帰っちゃバギー船長に・・・」
焦る海賊達。
「そのバギーってのは誰なんだ・・・!?」
ゾロは、先ほどから出てくる”バギー”という名前が気にかかっていた。
海賊の1人が答える。
「おれ達の海賊船の頭ですよ。”道化のバギー”を知らねェんで?”悪魔の実シリーズ”のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ!!」
「・・・悪魔の実を・・・?」
─── この海にルフィ以外に悪魔の実を食べた奴がいるのか・・・。
その頃、ゾロたちの船からそう遠くない場所にある島では、一つの騒ぎが起きていた。
この島の町の名前は、”オレンジの町”。
港には大きな海賊船が停泊しており、そのせいで町は人っ子一人いなかった。
みんな海賊たちから避難しているのだろうか。
そのがらんとした町を、1人の女の子が逃げ回っていた。
そう、あの海賊達のお宝を奪ったオレンジの髪の彼女だ。
「待て貴様ァ~~~っ!!」
「泥棒女ァ、海図を返せェーっ!!!」
追うのは、海賊達。
「やっと手に入れた!”偉大なる航路”の海図っ!!!」
彼女は手にした海図を握り締める。
「クソ!!早く取りかえさねェと、おれ達の命も危ねェぜ!!」
「船長の砲弾で死ぬのもゴメンだしな!」
海賊達は追いかける足をさらに速めた。
その頃、海賊たちが占拠している酒場では。
「バギー船長、港の空に何か見えます!」
海賊の1人が空に何か見つけたようだ。
「大砲で打ち落とせ」
「はいっ!!」
放たれる大砲。
それは空の得体の知れない物体に、寸分違わず命中した。
「おあーっ」
ズドォン!!!
そしてそれは、彼女と、それを追う海賊たちの間に落ちた。
「ひ・・人が、空から降って来た!!!」
「何・・・?」
目の前の出来事に驚く彼女と海賊達。
「何で砲弾が飛んでくるんだ!?くっそ~~~」
それは、土煙の中から起き上がってきた。
「あ───、助かった」
ルフィである。
「うわっ、生きてる!!!」
さらにその事実に驚く海賊たち。
彼女は、とっさに状況を理解し、知恵をめぐらせた。
─── そして。
「お・・・!!親分っ!!助けに来てくれたのね!?後は任せたわ!!」
そう、ルフィに言うや否や、一目散に駆けて行った。
海賊が叫ぶ。
「おい、女が逃げたぞ」
「追う必要はねェ!!」
別の海賊が叫んだ。
そしてルフィを囲む。
「親分がわざわざ残ってくれてる」
「なるほど・・・、子分をかばったって訳だな。お陰で追い回す手間が省けた」
「なァ親分っ!!」
海賊の1人がルフィに向けて剣を振り回す。
「あの海図は恐れ多くも海賊”道化のバギー”様の持ち物だ!!!」
その勢いでルフィのかぶっていた麦わら帽子が飛んだ。
「あ」
瞬間、ルフィはその海賊に鉄拳を食らわせた。
殴られた海賊は、その勢いで吹っ飛ぶ。
「おれの宝物に、触るな」
「こ・・・」
「この野郎ォ~~~っ!!!」
勝負は一瞬だった。
残りの海賊達は、あっという間に地面に転がっていた。
「─── すごいっ」
傍の建物の軒先から声がする。
彼女だった。
「強いのね、あんた。剣相手に素手で勝っちゃうなんて」
「あ!誰だ、お前」
ルフィが気づいて言った。
「私は海賊専門の泥棒っ!!ナミって言うの。私と組まない?」
「海賊専門?」
ルフィはいぶかしんだ。

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