第9話 魔性の女
「そう!私は海賊からお宝を盗む泥棒っ!」
ナミは軒先に腰掛け、足をぶらぶらさせながら、楽しそうに言った。
「私と組めば儲かるわよ!」
「いやだ!おれは別にお前と組みたくねェ」
ルフィは興味なさそうに、すたすた歩いて行く。
「ちょっと待ってよ!」
ナミは軒先から飛び降り、慌てて追いかけた。
追いつくと、ルフィの麦わら帽子を指して言う。
「そういえばさ、その帽子何なの?さっきそれ傷つけられて、怒ったじゃない。高いの?」
─── 帽子が飛ばされただけで吹っ飛ばすんだもん、何か価値があるものに違いないわ。
「これはおれの宝物だ!」
ルフィが帽子を押さえて言った。
「へえ、宝物・・・!中に宝石でも入ってたり・・・、あ!もしかして宝の地図!?」
「うるせーなー、おれは忙しいんだよ」
急に引っ付いてきた女の子に、ルフィはうっとおし気に言った。
その頃、海賊達が占拠している酒場の屋上では、バギーが手下の海賊達に苛立ちをぶちまけていた。
「まだ捕まらんのか、泥棒は・・・」
「た・・・只今追跡中のハズです。バギー船長」
手下の下っ端海賊の1人が、なだめるように訴える。
バギーが叫んだ。
「だいたい何でそう簡単に、”偉大なる航路(グランドライン)”の海図を盗まれるんだ!!!あァ!!?これから”偉大なる航路”へ入って、一暴れしようって時にだぜ・・・!!」
下っ端海賊がバカ正直に言った。
「それが船長、ほんの手違いで海図を保管してた小屋の鍵が、つけっぱなしに・・・!!」
「何だと・・・!?」
バギーは聞き逃さなかった。
「ですから、つけっぱなしに・・・」
「誰がつけっ鼻だァ!!」
「ええ!!?」
そうなのだ。
バギーの見た目は実はピエロそっくりなのだ。
好き好んでこの容姿にしているわけではない。顔の真ん中に鎮座する、赤くて丸い大きな鼻は正真正銘、バギーの自前の鼻だった。
当然、コンプレックスの塊である。
気にしすぎが故、部下達のなんでもない言葉にも過剰に反応するのだ。
ちなみに、船長がピエロならその手下どもは着ぐるみだの三角帽だのをかぶっている。
さながら、サーカス団のようだった。
そして、今日もサーカスの団長・・・じゃない、海賊団の船長のバギーは手下に対して怒っている。
まあ言えば、八つ当たりである。
「この鼻が自前じゃ可笑しいか?つけっ鼻みたいで」
「そ・・・、そんなこと!!マッタクの誤解ですっ!!」
バギーの恐さをよく知る下っ端は、恐れをなして言った。
しかし。
「真っ赤でデカイですだァア!!?ハデに死ねェ~~~っ!!!」
見事なまでの脳内変換。
「ええェ~~~っ!!?」
そりゃ、”ええー”だろう。
「ま・・・待って下さい、船長!!!おれはそんなこと・・・!!!」
「おれは誰だ!!!」
バギーがすごむ。
そして、下っ端から離れ、椅子にどっかと座り込んだ。
「うがっ!!!バ・・・バギーせん・・・ちょ」
突然下っ端が苦しみだした。
その上不思議なことに、首を押さえた下っ端は少しづつ中に浮いていく。
「!!!・・・く、・・・くるじいっ!!!」
下っ端は足をばたつかせるが、足はもう地面には届かない。
「・・・でた!!あ・・・、悪魔の実の能力っ!!!」
他の下っ端たちがどよめく中、バギーは命令を出した。
「大砲用意!!」
そしてふわふわと宙に浮く下っ端に向け、大砲が即座に準備される。
「おれは何も・・・!!だ、だすけで」
許しを請う下っ端は、もう息も絶え絶えである。
しかしバギーは叫んだ。
「吹き飛ばせ!!ハデにな!!」
「ああああああ!!!」
ドゴォォン!!!
下っ端に向け、放たれる砲弾。
バギーはそれには目もくれず、他の手下どもに命令する。
「海図は必ず取り返せ!!それと、この町の金品をさっさと回収しちまえ!!」
「は・・・、はいっ!!!バギー船長っ!!!」
吹き飛ばされた仲間の二の舞にならぬよう、他の手下どもは怯えて返事するのだった。
さて一方の、ルフィとナミ。
2人はとある民家の中にいた。
「へー、海で仲間とはぐれちゃったんだ。何人?」
「1人だ、ここお前んちなのか?」
ルフィは、テーブルに腰掛けたナミに言った。
自分は椅子にちょこんと座っている。
「ううん、私、旅の泥棒だもん。ここは知らない人の家。この町の人達は、みんな町のハズレに非難してるの。酒場にいるバギーたちを避ける為にね」
「ふーん、そんなに怖ェのか、そのナミーって海賊は」
「ナミは私だ!!海賊はバギー!!!」
いっしょにすんなっ!!と、ナミが怒鳴る。
「バギーはね、大砲好きで有名な海賊なの」
ナミがバギーについて知っていることを話した。
「どこだかの町で子供に自分の鼻をバカにされたからって、大砲でその町一つ消し飛ばしたって話もあるし、その上、妙な奇術を使うとも聞いてるわ」
「─── しかし、何でこの町誰もいねェんだ」
「みんな避難してるって言ったじゃない!!聞いてろ!!」
「ああ、だからお前空き巣やってんのか」
「しっつれいね!!私は海賊専門の泥棒だって、言ってるでしょ!?」
ナミは声を荒げる。
「下等な空き巣なんかと一緒にしないで!!あんたとしゃべってると疲れるわ!!」
「まあ、おちつけよ」
ははっと笑うルフィに、ナミはため息をつく。
「─── 私の目標はね」
ナミは自分のことを少し話す。
表情がこれまでとは違っていた。
「何が何でも一億ベリー稼ぐ事!!そしてある村を買うの」
「村を買う!?一億ベリーなんて大金、並の海賊じゃあ・・・」
「策はあるわ」
不思議そうに言うルフィに、ナミは隠していた海図を取り出した。
「見て、これは今盗んできた”偉大なる航路”の海図!まずこの町で”道化のバギー”にお宝をいただいたら、私は”偉大なる航路”へ入って、もっともっと大物の海賊のお宝を狙うつもり!!」
ナミはにっと笑う。
「どう?私と組んで大儲けしない?あんたの強さ、使えるのよ。分け前ははずむから!」
「─── もしかしてお前、航海術持ってんのか?」
ルフィは期待を込めて尋ねた。
「ん!当然っ!!ナメてもらっちゃ困るわ!航海の腕にかけては、私の右に出る者はそうそういないでしょうね。私、海大好きだもの」
「そうかっ!」
ルフィが喜ぶ。
「やった!!ちょうどいい!!おれ達も、今”偉大なる航路”を目指してるんだ!!」
「ほんと!?」
ナミも期待を込める。
「ああ!!お前”航海士”としておれ達の仲間になってくれよ!!海賊の仲間に!!」
「!!・・・いやっ!!」
「?」
ルフィの言葉に、ナミの態度が豹変した。
「・・・ハ、・・・あんた海賊だったの」
ナミがルフィを拒絶するように手を振る。
「─── やめやめ!今の話、全部ナシ!やっぱ、あんたとは組みたくないわ」
そして、何か合点がいったようだ。
「─── ははーん、なるほどね・・・。だからその地図で宝探しってわけ・・・」
そう言って、麦わら帽子を指す。
「これは宝の地図なんかじゃねェって、言ってるだろ!」
「うそよ!じゃあ何!そんなボロい帽子、宝だなんて」
ルフィは帽子を脱ぎ、誇らしげに見つめながら言った。
「これは昔、友達から受け取ったおれの大切な宝物なんだ!!仲間を集めて海賊になる事を、おれはこの帽子に誓った」
「ふんっ!!海賊海賊って、バカな時代だわ!!」
ナミはテーブルから下りた。
「私が世界で一番嫌いなものはね、海賊なの!!!!好きなものはお金とみかん」
ナミの本心だった。
好きなものも含めて、これだけは譲れない。
─── あーあ、なーんだ。こいつも能無しの略奪者か・・・。
─── かといって、盗むお宝なんて持ってなさそうだし、何か役に立たないかしら・・・。
「おい、航海士になってくれよ!」
ナミの言葉も気にせず、ルフィは彼女を勧誘する。
「やだっつってんでしょ!!」
その時、ナミの頭に悪知恵が浮かんだ。
─── そ~~~~~だっ!
いたずらっ子のような表情で、ルフィに言った。
「─── まァ、でも困ってるみたいだから、条件をのんでくれたら考えてもいいわ」
「本当か!そうなんだ、困ってんだ。条件って何だ?」
ルフィは喜んで、素直に尋ねる。
「私と一緒にバギーの所へ行ってほしいの。別に何もしなくていいわ、ただそれだけ!」
「よっしゃ行こう。どこに居るんだ、バギーは」
そう聞くや否や、ルフィはニコニコしながら、すたすたと出口へ向かった。
「ちょっと待って、準備もあるのよ、一応!」
慌ててルフィを止めると、ナミは家の奥に行き、何やらごそごそ。
しばらくして戻ってきた彼女の手には、ロープが握られていた。
「何だそのロープ」
ルフィが不思議そうに聞く。
それに対して、ナミは満面の笑顔で言った。
「ただのロープよ。問題ある?」
─── 誰が海賊なんかになりますか!
ナミは心の中で、にやりと笑った。
2人はがらんとした町をてくてく歩く。
しばらくして、目的地にたどり着いた。
「この道のつきあたり、あそこよ、海賊達のいる酒場は」
ナミが奥に見える建物を指す。
「─── で、何しに行くんだ?」
何の疑いもなくルフィは尋ねる。
そのとたん、
「それは行ってのお楽しみよ!!海賊のおにーさん!!」
「げ!何すんだ」
ルフィは、あっという間にナミが持っていたロープで縛り上げられてしまった。
さて、場所は戻って酒場の屋上。
バギーは、盗まれた海図を追っていた手下たちから報告を受けていた。
「なんだとォ!!!海図泥棒に逃げられただァ!!?てめェら、怪力男3人揃って何てザマだ!!!!」
悲しいお知らせだったようだ。
手下達は必死で言い訳をする。
「申し訳ありません、バギー船長!!」
「しかし!!本当にやたら強い奴で!!その・・・、麦わら帽子をかぶった・・・親分が!!!」
「ハデに死ねェ~~~っ!!!」
「!!!うわあ~~~~~っ!!!」
「バギー船長!!」
あわや先ほどの手下の二の舞、というところで、また別の手下が驚きを隠せない様子でバギーに報告に走ってきた。
「どうしたァ!!!」
「さっきの泥棒が・・・、自分から来てますが・・・!!」
「よォし!!ここへ連れて来い!!・・・・・って、何ィ!?自分から来ただと!!?どういうことだァ!!」
バギーが驚く。
「わかりませんが・・・、来てます」
「よォし!!ここへ連れて来い!!」
やってきた者を見て、言い訳していた手下達が叫ぶ。
「あっ!!こいつ!!こいつですよ、バギー船長!!」
「空から降ってきた泥棒の親分!!」
そしてバギーの目の前に、ロープでぐるぐる巻きに縛られたルフィが、ナミに放り投げられた。
「泥棒を捕まえてきました、道化のバギー船長!!海図はお返しします!」
そう言ってナミは、盗んだ海図を取り出す。
「こんにゃろ、だましたな!!」
床に転がったまま怒るルフィに、ナミはペロッと舌を出す。
そんな2人に、バギーは凄んで言った。
「よく返しに来てくれたな。だが・・・、どういう事だ・・・?」
その問いに、ナミは笑顔で言う。
「親分とケンカしました!もう、うんざりです。私をバギー一味に入れてください!!」
「は?」
意外な返事だったが、バギーはすぐさま笑い出した。
「ぶわ───っはっはっはっはっはっはっは!!もう、うんざりか!はっはっ、面白れェ女だ、よし気に入った!!部下にしてやる!!」
ナミは作り笑顔でそれに答える。
─── 潜入成功っ!これでバギーのお宝も、”偉大なる航路”の海図も全部いただいて、この町から逃げてやる!!
そしてルフィは鉄格子がはめられた小さな檻に入れられてしまった。
「あいつはもう、仲間にしてやらん!!」
その中で一人むくれていた。
ちょうどその頃、オレンジの町の港では。
「つきました、ゾロのだんな!!」
ゾロが拾った海賊達に小船を漕がせ、ようやく彼はこの町に到着した。
まあ、海賊達がいたからこそ、ちゃんと着くことができたのだろう。
これがゾロ一人だと・・・、きっともう二度とルフィに会えなかったに違いない。
・・・本人はそんなこと、露ほども思ってないだろうが。
よかった。一人じゃなくてほんとによかった。
辺りを見回して、ゾロが言う。
「何だ・・・、がらんとした町だな。人気がねェじゃねェか・・・」
「はあ、実はこの町、我々バギー一味が襲撃中でして・・・」
海賊が答える。
その横で、あとの2人がこそこそ話し合っていた。
「・・・どうする、バギー船長に何て言う。手ぶらだぜおれ達」
「そりゃ、あったことをそのまま話すしかねェだろ!!どうせあの女は、海の彼方だ」
ゾロが言った。
「じゃあ、とりあえずそのバギーってのに会わせてくれ。ルフィの情報が聞けるかも知れねェ」
管理人ひとことこめんと
バギー登場。
ルフィにとっては初の能力者の敵です。
初めての敵ってことでおだっち先生にも思い入れがあるのか、まさかこんなに長いお付き合いになるとはねw
私結構好きです、バギー。
運の良さならルフィ並かもね、この人。
ナミは軒先に腰掛け、足をぶらぶらさせながら、楽しそうに言った。
「私と組めば儲かるわよ!」
「いやだ!おれは別にお前と組みたくねェ」
ルフィは興味なさそうに、すたすた歩いて行く。
「ちょっと待ってよ!」
ナミは軒先から飛び降り、慌てて追いかけた。
追いつくと、ルフィの麦わら帽子を指して言う。
「そういえばさ、その帽子何なの?さっきそれ傷つけられて、怒ったじゃない。高いの?」
─── 帽子が飛ばされただけで吹っ飛ばすんだもん、何か価値があるものに違いないわ。
「これはおれの宝物だ!」
ルフィが帽子を押さえて言った。
「へえ、宝物・・・!中に宝石でも入ってたり・・・、あ!もしかして宝の地図!?」
「うるせーなー、おれは忙しいんだよ」
急に引っ付いてきた女の子に、ルフィはうっとおし気に言った。
その頃、海賊達が占拠している酒場の屋上では、バギーが手下の海賊達に苛立ちをぶちまけていた。
「まだ捕まらんのか、泥棒は・・・」
「た・・・只今追跡中のハズです。バギー船長」
手下の下っ端海賊の1人が、なだめるように訴える。
バギーが叫んだ。
「だいたい何でそう簡単に、”偉大なる航路(グランドライン)”の海図を盗まれるんだ!!!あァ!!?これから”偉大なる航路”へ入って、一暴れしようって時にだぜ・・・!!」
下っ端海賊がバカ正直に言った。
「それが船長、ほんの手違いで海図を保管してた小屋の鍵が、つけっぱなしに・・・!!」
「何だと・・・!?」
バギーは聞き逃さなかった。
「ですから、つけっぱなしに・・・」
「誰がつけっ鼻だァ!!」
「ええ!!?」
そうなのだ。
バギーの見た目は実はピエロそっくりなのだ。
好き好んでこの容姿にしているわけではない。顔の真ん中に鎮座する、赤くて丸い大きな鼻は正真正銘、バギーの自前の鼻だった。
当然、コンプレックスの塊である。
気にしすぎが故、部下達のなんでもない言葉にも過剰に反応するのだ。
ちなみに、船長がピエロならその手下どもは着ぐるみだの三角帽だのをかぶっている。
さながら、サーカス団のようだった。
そして、今日もサーカスの団長・・・じゃない、海賊団の船長のバギーは手下に対して怒っている。
まあ言えば、八つ当たりである。
「この鼻が自前じゃ可笑しいか?つけっ鼻みたいで」
「そ・・・、そんなこと!!マッタクの誤解ですっ!!」
バギーの恐さをよく知る下っ端は、恐れをなして言った。
しかし。
「真っ赤でデカイですだァア!!?ハデに死ねェ~~~っ!!!」
見事なまでの脳内変換。
「ええェ~~~っ!!?」
そりゃ、”ええー”だろう。
「ま・・・待って下さい、船長!!!おれはそんなこと・・・!!!」
「おれは誰だ!!!」
バギーがすごむ。
そして、下っ端から離れ、椅子にどっかと座り込んだ。
「うがっ!!!バ・・・バギーせん・・・ちょ」
突然下っ端が苦しみだした。
その上不思議なことに、首を押さえた下っ端は少しづつ中に浮いていく。
「!!!・・・く、・・・くるじいっ!!!」
下っ端は足をばたつかせるが、足はもう地面には届かない。
「・・・でた!!あ・・・、悪魔の実の能力っ!!!」
他の下っ端たちがどよめく中、バギーは命令を出した。
「大砲用意!!」
そしてふわふわと宙に浮く下っ端に向け、大砲が即座に準備される。
「おれは何も・・・!!だ、だすけで」
許しを請う下っ端は、もう息も絶え絶えである。
しかしバギーは叫んだ。
「吹き飛ばせ!!ハデにな!!」
「ああああああ!!!」
ドゴォォン!!!
下っ端に向け、放たれる砲弾。
バギーはそれには目もくれず、他の手下どもに命令する。
「海図は必ず取り返せ!!それと、この町の金品をさっさと回収しちまえ!!」
「は・・・、はいっ!!!バギー船長っ!!!」
吹き飛ばされた仲間の二の舞にならぬよう、他の手下どもは怯えて返事するのだった。
さて一方の、ルフィとナミ。
2人はとある民家の中にいた。
「へー、海で仲間とはぐれちゃったんだ。何人?」
「1人だ、ここお前んちなのか?」
ルフィは、テーブルに腰掛けたナミに言った。
自分は椅子にちょこんと座っている。
「ううん、私、旅の泥棒だもん。ここは知らない人の家。この町の人達は、みんな町のハズレに非難してるの。酒場にいるバギーたちを避ける為にね」
「ふーん、そんなに怖ェのか、そのナミーって海賊は」
「ナミは私だ!!海賊はバギー!!!」
いっしょにすんなっ!!と、ナミが怒鳴る。
「バギーはね、大砲好きで有名な海賊なの」
ナミがバギーについて知っていることを話した。
「どこだかの町で子供に自分の鼻をバカにされたからって、大砲でその町一つ消し飛ばしたって話もあるし、その上、妙な奇術を使うとも聞いてるわ」
「─── しかし、何でこの町誰もいねェんだ」
「みんな避難してるって言ったじゃない!!聞いてろ!!」
「ああ、だからお前空き巣やってんのか」
「しっつれいね!!私は海賊専門の泥棒だって、言ってるでしょ!?」
ナミは声を荒げる。
「下等な空き巣なんかと一緒にしないで!!あんたとしゃべってると疲れるわ!!」
「まあ、おちつけよ」
ははっと笑うルフィに、ナミはため息をつく。
「─── 私の目標はね」
ナミは自分のことを少し話す。
表情がこれまでとは違っていた。
「何が何でも一億ベリー稼ぐ事!!そしてある村を買うの」
「村を買う!?一億ベリーなんて大金、並の海賊じゃあ・・・」
「策はあるわ」
不思議そうに言うルフィに、ナミは隠していた海図を取り出した。
「見て、これは今盗んできた”偉大なる航路”の海図!まずこの町で”道化のバギー”にお宝をいただいたら、私は”偉大なる航路”へ入って、もっともっと大物の海賊のお宝を狙うつもり!!」
ナミはにっと笑う。
「どう?私と組んで大儲けしない?あんたの強さ、使えるのよ。分け前ははずむから!」
「─── もしかしてお前、航海術持ってんのか?」
ルフィは期待を込めて尋ねた。
「ん!当然っ!!ナメてもらっちゃ困るわ!航海の腕にかけては、私の右に出る者はそうそういないでしょうね。私、海大好きだもの」
「そうかっ!」
ルフィが喜ぶ。
「やった!!ちょうどいい!!おれ達も、今”偉大なる航路”を目指してるんだ!!」
「ほんと!?」
ナミも期待を込める。
「ああ!!お前”航海士”としておれ達の仲間になってくれよ!!海賊の仲間に!!」
「!!・・・いやっ!!」
「?」
ルフィの言葉に、ナミの態度が豹変した。
「・・・ハ、・・・あんた海賊だったの」
ナミがルフィを拒絶するように手を振る。
「─── やめやめ!今の話、全部ナシ!やっぱ、あんたとは組みたくないわ」
そして、何か合点がいったようだ。
「─── ははーん、なるほどね・・・。だからその地図で宝探しってわけ・・・」
そう言って、麦わら帽子を指す。
「これは宝の地図なんかじゃねェって、言ってるだろ!」
「うそよ!じゃあ何!そんなボロい帽子、宝だなんて」
ルフィは帽子を脱ぎ、誇らしげに見つめながら言った。
「これは昔、友達から受け取ったおれの大切な宝物なんだ!!仲間を集めて海賊になる事を、おれはこの帽子に誓った」
「ふんっ!!海賊海賊って、バカな時代だわ!!」
ナミはテーブルから下りた。
「私が世界で一番嫌いなものはね、海賊なの!!!!好きなものはお金とみかん」
ナミの本心だった。
好きなものも含めて、これだけは譲れない。
─── あーあ、なーんだ。こいつも能無しの略奪者か・・・。
─── かといって、盗むお宝なんて持ってなさそうだし、何か役に立たないかしら・・・。
「おい、航海士になってくれよ!」
ナミの言葉も気にせず、ルフィは彼女を勧誘する。
「やだっつってんでしょ!!」
その時、ナミの頭に悪知恵が浮かんだ。
─── そ~~~~~だっ!
いたずらっ子のような表情で、ルフィに言った。
「─── まァ、でも困ってるみたいだから、条件をのんでくれたら考えてもいいわ」
「本当か!そうなんだ、困ってんだ。条件って何だ?」
ルフィは喜んで、素直に尋ねる。
「私と一緒にバギーの所へ行ってほしいの。別に何もしなくていいわ、ただそれだけ!」
「よっしゃ行こう。どこに居るんだ、バギーは」
そう聞くや否や、ルフィはニコニコしながら、すたすたと出口へ向かった。
「ちょっと待って、準備もあるのよ、一応!」
慌ててルフィを止めると、ナミは家の奥に行き、何やらごそごそ。
しばらくして戻ってきた彼女の手には、ロープが握られていた。
「何だそのロープ」
ルフィが不思議そうに聞く。
それに対して、ナミは満面の笑顔で言った。
「ただのロープよ。問題ある?」
─── 誰が海賊なんかになりますか!
ナミは心の中で、にやりと笑った。
2人はがらんとした町をてくてく歩く。
しばらくして、目的地にたどり着いた。
「この道のつきあたり、あそこよ、海賊達のいる酒場は」
ナミが奥に見える建物を指す。
「─── で、何しに行くんだ?」
何の疑いもなくルフィは尋ねる。
そのとたん、
「それは行ってのお楽しみよ!!海賊のおにーさん!!」
「げ!何すんだ」
ルフィは、あっという間にナミが持っていたロープで縛り上げられてしまった。
さて、場所は戻って酒場の屋上。
バギーは、盗まれた海図を追っていた手下たちから報告を受けていた。
「なんだとォ!!!海図泥棒に逃げられただァ!!?てめェら、怪力男3人揃って何てザマだ!!!!」
悲しいお知らせだったようだ。
手下達は必死で言い訳をする。
「申し訳ありません、バギー船長!!」
「しかし!!本当にやたら強い奴で!!その・・・、麦わら帽子をかぶった・・・親分が!!!」
「ハデに死ねェ~~~っ!!!」
「!!!うわあ~~~~~っ!!!」
「バギー船長!!」
あわや先ほどの手下の二の舞、というところで、また別の手下が驚きを隠せない様子でバギーに報告に走ってきた。
「どうしたァ!!!」
「さっきの泥棒が・・・、自分から来てますが・・・!!」
「よォし!!ここへ連れて来い!!・・・・・って、何ィ!?自分から来ただと!!?どういうことだァ!!」
バギーが驚く。
「わかりませんが・・・、来てます」
「よォし!!ここへ連れて来い!!」
やってきた者を見て、言い訳していた手下達が叫ぶ。
「あっ!!こいつ!!こいつですよ、バギー船長!!」
「空から降ってきた泥棒の親分!!」
そしてバギーの目の前に、ロープでぐるぐる巻きに縛られたルフィが、ナミに放り投げられた。
「泥棒を捕まえてきました、道化のバギー船長!!海図はお返しします!」
そう言ってナミは、盗んだ海図を取り出す。
「こんにゃろ、だましたな!!」
床に転がったまま怒るルフィに、ナミはペロッと舌を出す。
そんな2人に、バギーは凄んで言った。
「よく返しに来てくれたな。だが・・・、どういう事だ・・・?」
その問いに、ナミは笑顔で言う。
「親分とケンカしました!もう、うんざりです。私をバギー一味に入れてください!!」
「は?」
意外な返事だったが、バギーはすぐさま笑い出した。
「ぶわ───っはっはっはっはっはっはっは!!もう、うんざりか!はっはっ、面白れェ女だ、よし気に入った!!部下にしてやる!!」
ナミは作り笑顔でそれに答える。
─── 潜入成功っ!これでバギーのお宝も、”偉大なる航路”の海図も全部いただいて、この町から逃げてやる!!
そしてルフィは鉄格子がはめられた小さな檻に入れられてしまった。
「あいつはもう、仲間にしてやらん!!」
その中で一人むくれていた。
ちょうどその頃、オレンジの町の港では。
「つきました、ゾロのだんな!!」
ゾロが拾った海賊達に小船を漕がせ、ようやく彼はこの町に到着した。
まあ、海賊達がいたからこそ、ちゃんと着くことができたのだろう。
これがゾロ一人だと・・・、きっともう二度とルフィに会えなかったに違いない。
・・・本人はそんなこと、露ほども思ってないだろうが。
よかった。一人じゃなくてほんとによかった。
辺りを見回して、ゾロが言う。
「何だ・・・、がらんとした町だな。人気がねェじゃねェか・・・」
「はあ、実はこの町、我々バギー一味が襲撃中でして・・・」
海賊が答える。
その横で、あとの2人がこそこそ話し合っていた。
「・・・どうする、バギー船長に何て言う。手ぶらだぜおれ達」
「そりゃ、あったことをそのまま話すしかねェだろ!!どうせあの女は、海の彼方だ」
ゾロが言った。
「じゃあ、とりあえずそのバギーってのに会わせてくれ。ルフィの情報が聞けるかも知れねェ」

バギー登場。
ルフィにとっては初の能力者の敵です。
初めての敵ってことでおだっち先生にも思い入れがあるのか、まさかこんなに長いお付き合いになるとはねw
私結構好きです、バギー。
運の良さならルフィ並かもね、この人。
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