第19話 悪魔の実
「うがっ!!!」
ルフィの怒りが込められた渾身の蹴りが、バギーの体にキレイに入った。
ルフィは地面に転がった麦わら帽子に目をやる。
「ちきしょう、おれの宝をあんなにしやがって!!」
帽子には無残にも、ナイフで刻まれた跡がくっきりと残っていた。
「つばまで吐きかけやがったな!!」
そして馬乗りになり、バギーの服で帽子の汚れをごしごしと力いっぱいふき取る。
「うべ!うべべっ!!きたねェ、やべろっ!!」
「お前のつばだろうが!!」
ルフィはバギーのほっぺたをギリギリとつかんで怒鳴った。
「お前とシャンクスが同志なんて、二度と言うんじゃねェっ!!」
「いででで・・・。けっ、てめェとシャンクスがどういうつながりなのかは知らんがな。おれがあいつをどう言おうが、おれの勝手だ!!!」
ルフィに乗っかられて身動きの取れないバギーは、またもや手を飛ばそうとうごめかす。
「これでもくらえ!!バ~ラ~バ~ラ~・・・」
「分解すんな!!!」
「んぼ!!!」
分解する寸前、ルフィのチョップがバギーの顔面に入った。
「・・・・・おい・・・、もしかして船長少し押され気味じゃねェか?」
瓦礫の中の手下がつぶやく。
「ば、ばかな事言うな!バギー船長が負けるか。船長の本当の恐さはこれからだ!・・・のはずだ!!」
「・・・・・!」
物陰から戦況を見つめていたナミも、我に返った。
「─── いかんいかん、見とれてたわ。私は早く小屋の宝を盗んで逃げなきゃ!」
さてその頃、避難所では町民達が不安な時間を過ごしていた。
「─── やっぱりおかしい!こんなに長く町長が帰ってこないなんて・・・」
次第に町民達が騒ぎ始める。
「あやつめ・・・、町民達に心配をかけおって・・・」
1人の年配の町民がため息をついた。
「やっぱり町で何か起こってるのよ」
「ああ・・・、さっきから大砲の爆音だって何発も聞こえるしな・・・」
若い町民達の不安の声に、年配の町民が覚悟を決めて言った。
「・・・よし、わしが町へ行って来る。みんなはここで待て!」
「一人で行かせる訳にはいきません!」
若い町民が言う。
「おれも行きますよ!」
「バカモン!町におるのは海賊だぞ。卑劣と名高いバギー一味だ!」
「だからこそ一緒に行くんです!!」
年配の町民が振り向くと、他の町民達が揃っていた。
男性も女性も、年配の者も若い者も、みんなが手に武器を携えている。
「町長一人の身も守れずに、何が町民でしょうか!」
別の町民が言う。
「止めてもムダですよ。全て自発的な行動ですから!」
「・・・・・!」
年配の町民はため息をついた。
「勝手にせいっ!!」
「・・・行こうぜみんな!!」
町民達はときの声を上げた。
「─── おれは今まで生きてきて、あいつほど怒りをおぼえた男はいねェ!!」
バギーはゆっくりと立ち上がりながら、叫んだ。
「あいつはこのおれから、莫大な財宝を奪いやがったんだ!!!」
「!」
「あいつだけは、おれは許さねぇ ───」
そしてバギーは話し始めた。
自分とシャンクスとの間に起きた出来事を。
─── それは今から20年以上前のこと。
とある海賊船の甲板では、しょっちゅう騒ぎが起こっていた。
「おお、またケンカだあ!」
「はっはっは、やれやれェ!どっちも負けんな!!」
海賊達がけしかける。
その真ん中では2人の男がつかみ合いのけんかをしていた。
「─── 北極だ!!」
「南極だ!!」
一人の男はニット帽に真っ赤な丸い鼻、そう若かりし頃のバギー。
そしてもう一人の男は・・・、赤い髪に麦わら帽子がトレードマークの、そうこちらも若かりし頃のシャンクスだ。
「まだ言うかコラ!」
「おォ、何度でも言うぜ!おれが正しいんだ!!」
殴りあう2人の周りでは、仲間の海賊達がにやにやしながらみつめている。
「いい加減にしろ!ケンカばっかりしやがって、てめェらは!!」
見かねて、副船長が2人をゲンコツで止めた。
「北極と南極のどっちが寒いかなんて、どうでもいいだろう!そんなに知りたきゃ、両方行って確かめりゃ済む事だ。頭冷やせ、バカヤロウ!」
ケンカの理由は至極単純なこと。
歳も近く、同じ海賊見習いである2人は何かにつけて張り合ってはケンカしていたのだ。
そして、ある日のこと。
「北北東から敵船が来るぞ!!」
船の見張り台に立っていた仲間の一人が叫ぶ。
「よォし、向かえうて!!」
「戦闘だ!!!」
その声に、海賊達は戦闘体制に入る。バギーとシャンクスも例外ではない。
「嬉しそうだな、バギー」
張り切るバギーに、シャンクスが笑って言った。
「ったりめェだ!!敵船は宝箱みてェなモンだからな。奪ってナンボの海賊だ!!」
「・・・まァ、一理あるけどな」
シャンクスが敵船を見やって、剣を構える。
「一理どころじゃねェ!それが全てだ!!」
バギーは、彼の持論を展開した。
「甘ェ甘ェ!!てめェもこの船の海賊達も、宝に対しちゃおっとりしたことばかり言いやがる。海賊ってモンをわかっちゃいねェんだ!!」
そして戦闘が始まる。
海賊達は敵船に次々と乗り込んでいく。
あちらこちらで聞こえる雄たけび、悲鳴、武器を打ち合う音・・・。
騒然とした中、バギーはあるものを見つけた。
「ん!?これは・・・!!」
それは海底に沈められた、巨万の富を記す地図だった。
「た・・・たたた・・・た、宝の地図・・・・・!!」
バギーは興奮で体の震えが止まらなかった。
─── だ・・・だだ、誰も見てねェな。がははははは、これを独り占めしない手はねェ。
─── やったぞ!!これでおれの人生は、ド派手と決まった!!!
地図を懐に隠し、人知れずガッツポーズを決めるバギーであった。
その日の夜 ───。
「はっはっはっはっは!!今日も快勝だった!!!」
「飲め飲め!騒げ!歌え!!」
昼間の戦闘に勝利した海賊達は、戦勝を祝い、当然のように宴を開いていた。
しかしバギーは宴の輪に加わらず、1人甲板にいた。
昼間、こっそり奪った地図を見つめ、期待に胸を膨らませる。
そこへ、酒瓶を片手にシャンクスがやってきた。
「おいバギー、一緒に騒がねぇのか?面白い戦利品もあるぞ!」
─── 戦利品!?バ、バレたのか???
「せ・・・せ・・・戦利品って・・・、おれは別に何もとってねェぞ!!何も知らねェ!!」
「?何言ってんだ、お前」
焦るバギーに、シャンクスは首をかしげる。
─── バレてない・・・。
バギーはそっと胸をなでおろした。
そんなことは全然気づいていない様子でそばの椅子に腰を下ろしたシャンクスに、バギーは言った。
「─── おれ達はいずれ、この船を下りることになるよな」
「まァな、自立はするつもりだよ」
シャンクスは言う。
「おれは自分の船を持ったら、時間をかけて世界を見てまわろうと思ってる。もちろん海賊としてだ」
そんなシャンクスに、バギーは笑って言った。
「へへっ!相変わらずバカな事言ってやがる」
「あんだと!?」
「おれはてめェの戦闘の腕だけは買ってんだ。その甘ったれた考え方さえなきゃ、部下にしてやってもよかったんだがな」
「お前の部下だと!?ふざけんな!!」
シャンクスが酒をあおる。
「考え方が違うから、別々の道を好きに行きゃいいんだ。それが海賊だ!」
「はっはっはっは!!てめェが海賊を語るのかよ・・・。だがそうなりゃ、おれ達が後に海で会う時は殺し合いだぜ!?」
「ああ、それも海賊だな」
「・・・わかんねぇ野郎だ・・・」
笑うシャンクスに、バギーは納得がいかないようだった。
「─── ところで、お前さっき面白ェ戦利品がどうとか言ってたな」
バギーはさっきから気になっていた話に戻した。
「ああ・・・、”悪魔の実”があったんだ」
シャンクスも思い出したように言う。
「悪魔の実ってのは海の悪魔の化身だって聞いたことがある。食っちまったら”悪魔の能力”と引き換えに海に嫌われちまうんだとよ。船長が、誰か食いたきゃ食っていいって言ってたぜ」
シャンクスが笑う。
「がははははは、そんなもんで万年カナヅチになっちゃかなわねぇな」
バギーも笑う。
─── こえーこえー、そんなモンを食う奴は相当のバカだな。
─── 海底にだって財宝はたくさん眠ってるってのに、泳げねェんじゃ取りにも行けねェ!
という本音は必死で隠して。
・・・あんまり隠れてはないが。
しかし、シャンクスは気づかなかったようだ。
「しかし・・・、あんなへんてこな実が売れば1億ベリーにもなるとは」
「なァに、ほんとかそりゃあ!!!」
がっつり食いつくバギー。
─── 一億といやぁ、A級の宝箱10個でも足りねェ破格!!
─── 財宝の女神がおれに微笑んでるとしか思えねェ!!!
「─── 海賊見習いバギー!悪魔の実を食わせていただきます!!」
翌朝、船の甲板で仲間達に宣言しているバギーの姿があった。
「だははははは、いいねェ若いってのは後先考えねェで!!」
「いいぞバギー、見直した!!」
海賊達がはやし立てる中、バギーは実を一口で口に入れた。
「おおーっ食ったァー!!!」
どよめき後の一瞬の沈黙。
「・・・どうだ、バギー。体に変化はあるか?」
海賊達の問いに、
「いや・・・、別に・・・」
と、バギー。
「何だ、ニセ者なんじゃねェのか?」
「だいたい悪魔の実なんて、噂でしか知らねぇからな」
不思議がる海賊達の中で、真相を知っているのはもちろんバギーだけだった。
─── くくくくっ、その通り!今食ったのはおれが工作したニセ物の実だ。夜のうちにすり替えたんだ!
しばらくして、物陰で高笑いするバギーの姿があった。
右手に宝の地図、左手にぐるぐる模様の悪魔の実をがっしり掴んで。
「─── ハデにうまくいった!!もう、見習いなんてやってられねェ、バレねェ内に船を下りよう。この実を売り払った金とこの地図の財宝があれば、今すぐにでも最強の海賊団を結成して、さらに宝を奪って・・・」
「おいバギー、こんなとこで何やってんだ?」
不意に声をかけられた。シャンクスだ。
バギーは慌てて地図を懐にしまい、悪魔の実を口の中に隠した。
─── な・・・、何だコイツか。おどかしやがって・・・。
「?何て顔してんだよ」
バギーのただならない雰囲気に、シャンクスはいぶかる。
「盗み食いは程々にしろよ。コックさんに怒られるぜ」
シャンクスは勝手に盗み食いだと勘違いしたようだ。すたすたと行ってしまう。
─── あ・・危ねェ、危ねぇ・・・。
ほっとした時だった。
「あ、そういえばさっき船長が・・・」
「!!!」
行ってしまった筈のシャンクスが急に戻ってきた。
思わずバギーは口の中の悪魔の実を・・・、飲み込んでしまった!!!
「ああああああああああああ」
─── 食べた!食べてしまった悪魔の実!!!おれの1億ベリー!!!
「て・・・てててめェ、おれの・・・おれの、おれはああああああああ!!!」
バギーはシャンクスの胸倉を掴む。
シャンクスはそんなバギーを不思議そうに見つめたままだ。
ふと、シャンクスが気づいた。
「何だ、あの紙切れ」
振り向くと、海へ向かってひらひらと舞い落ちる紙切れ1枚。
宝の、地図だ。
「あああああ、おれの地図!!!」
バギーは地図を追って、すぐさま海へ飛び込んだ。
シャンクスが止めるのも聞かずに。
異変はすぐに現れた。
つい昨日まで出来た事が出来ない。
─── 何だ・・・、体がうまく動かねェ・・・。
何とか海上に頭を出す。
しかし、泳げない。
「ぶはっ・・・ばび!!・・・ばぼ・・・!!助けば・・・!!」
「おいお前、何やってんだ。泳ぎは得意だろ!?」
シャンクスが船の上から叫ぶ。
「何だ、何事だシャンクス」
「ん!?あいつ何やってんだ」
騒ぎを聞きつけて、他の海賊たちもやってきた。
シャンクスは自分が昨日の夜言ったことを思い出した。
”悪魔の実ってのは海の悪魔の化身だって聞いたことがある。食っちまったら”悪魔の能力”と引き換えに海に嫌われちまうんだとよ。”
─── まさか、海に嫌われるって言うのは。
「今助ける!!」
シャンクスは海に飛び込んだ。
「─── そしておれは!1億ベリーの実を食い!カナヅチになり!!海底に沈む巨万の富を逃した!!!」
バギーが憎々しげに語り終わった。
「へー。シャンクスが助けてくれたのか」
とルフィ。
あれだけの話を聞いての感想がこれだ。
「おれが言いてェのはそこじゃねェだろ!!!」
気持はわかる。
「あいつのお陰で、おれの人生計画は一気に10年の遅れをとったんだ!」
バギーは上半身のみ、空中に浮かび上がらせた。
「そしておれはフッ切れた!海中がダメなら海上の全ての財宝をおれのものにしてやるとな。このバラバラの能力で!!!」
そしてバギーは空から見つけた。
小屋からこっそり出てくる人影を。
「─── だから、おれの財宝に手をかける奴は、どんな虫ケラだろうと絶対に・・・!」
バギーは狙いを定める。
「あ」
ルフィも気づいた。
「生かしちゃおかん!!!」
バギーは猛スピードで、小屋から出てきたナミに向かって行った。
ルフィの怒りが込められた渾身の蹴りが、バギーの体にキレイに入った。
ルフィは地面に転がった麦わら帽子に目をやる。
「ちきしょう、おれの宝をあんなにしやがって!!」
帽子には無残にも、ナイフで刻まれた跡がくっきりと残っていた。
「つばまで吐きかけやがったな!!」
そして馬乗りになり、バギーの服で帽子の汚れをごしごしと力いっぱいふき取る。
「うべ!うべべっ!!きたねェ、やべろっ!!」
「お前のつばだろうが!!」
ルフィはバギーのほっぺたをギリギリとつかんで怒鳴った。
「お前とシャンクスが同志なんて、二度と言うんじゃねェっ!!」
「いででで・・・。けっ、てめェとシャンクスがどういうつながりなのかは知らんがな。おれがあいつをどう言おうが、おれの勝手だ!!!」
ルフィに乗っかられて身動きの取れないバギーは、またもや手を飛ばそうとうごめかす。
「これでもくらえ!!バ~ラ~バ~ラ~・・・」
「分解すんな!!!」
「んぼ!!!」
分解する寸前、ルフィのチョップがバギーの顔面に入った。
「・・・・・おい・・・、もしかして船長少し押され気味じゃねェか?」
瓦礫の中の手下がつぶやく。
「ば、ばかな事言うな!バギー船長が負けるか。船長の本当の恐さはこれからだ!・・・のはずだ!!」
「・・・・・!」
物陰から戦況を見つめていたナミも、我に返った。
「─── いかんいかん、見とれてたわ。私は早く小屋の宝を盗んで逃げなきゃ!」
さてその頃、避難所では町民達が不安な時間を過ごしていた。
「─── やっぱりおかしい!こんなに長く町長が帰ってこないなんて・・・」
次第に町民達が騒ぎ始める。
「あやつめ・・・、町民達に心配をかけおって・・・」
1人の年配の町民がため息をついた。
「やっぱり町で何か起こってるのよ」
「ああ・・・、さっきから大砲の爆音だって何発も聞こえるしな・・・」
若い町民達の不安の声に、年配の町民が覚悟を決めて言った。
「・・・よし、わしが町へ行って来る。みんなはここで待て!」
「一人で行かせる訳にはいきません!」
若い町民が言う。
「おれも行きますよ!」
「バカモン!町におるのは海賊だぞ。卑劣と名高いバギー一味だ!」
「だからこそ一緒に行くんです!!」
年配の町民が振り向くと、他の町民達が揃っていた。
男性も女性も、年配の者も若い者も、みんなが手に武器を携えている。
「町長一人の身も守れずに、何が町民でしょうか!」
別の町民が言う。
「止めてもムダですよ。全て自発的な行動ですから!」
「・・・・・!」
年配の町民はため息をついた。
「勝手にせいっ!!」
「・・・行こうぜみんな!!」
町民達はときの声を上げた。
「─── おれは今まで生きてきて、あいつほど怒りをおぼえた男はいねェ!!」
バギーはゆっくりと立ち上がりながら、叫んだ。
「あいつはこのおれから、莫大な財宝を奪いやがったんだ!!!」
「!」
「あいつだけは、おれは許さねぇ ───」
そしてバギーは話し始めた。
自分とシャンクスとの間に起きた出来事を。
─── それは今から20年以上前のこと。
とある海賊船の甲板では、しょっちゅう騒ぎが起こっていた。
「おお、またケンカだあ!」
「はっはっは、やれやれェ!どっちも負けんな!!」
海賊達がけしかける。
その真ん中では2人の男がつかみ合いのけんかをしていた。
「─── 北極だ!!」
「南極だ!!」
一人の男はニット帽に真っ赤な丸い鼻、そう若かりし頃のバギー。
そしてもう一人の男は・・・、赤い髪に麦わら帽子がトレードマークの、そうこちらも若かりし頃のシャンクスだ。
「まだ言うかコラ!」
「おォ、何度でも言うぜ!おれが正しいんだ!!」
殴りあう2人の周りでは、仲間の海賊達がにやにやしながらみつめている。
「いい加減にしろ!ケンカばっかりしやがって、てめェらは!!」
見かねて、副船長が2人をゲンコツで止めた。
「北極と南極のどっちが寒いかなんて、どうでもいいだろう!そんなに知りたきゃ、両方行って確かめりゃ済む事だ。頭冷やせ、バカヤロウ!」
ケンカの理由は至極単純なこと。
歳も近く、同じ海賊見習いである2人は何かにつけて張り合ってはケンカしていたのだ。
そして、ある日のこと。
「北北東から敵船が来るぞ!!」
船の見張り台に立っていた仲間の一人が叫ぶ。
「よォし、向かえうて!!」
「戦闘だ!!!」
その声に、海賊達は戦闘体制に入る。バギーとシャンクスも例外ではない。
「嬉しそうだな、バギー」
張り切るバギーに、シャンクスが笑って言った。
「ったりめェだ!!敵船は宝箱みてェなモンだからな。奪ってナンボの海賊だ!!」
「・・・まァ、一理あるけどな」
シャンクスが敵船を見やって、剣を構える。
「一理どころじゃねェ!それが全てだ!!」
バギーは、彼の持論を展開した。
「甘ェ甘ェ!!てめェもこの船の海賊達も、宝に対しちゃおっとりしたことばかり言いやがる。海賊ってモンをわかっちゃいねェんだ!!」
そして戦闘が始まる。
海賊達は敵船に次々と乗り込んでいく。
あちらこちらで聞こえる雄たけび、悲鳴、武器を打ち合う音・・・。
騒然とした中、バギーはあるものを見つけた。
「ん!?これは・・・!!」
それは海底に沈められた、巨万の富を記す地図だった。
「た・・・たたた・・・た、宝の地図・・・・・!!」
バギーは興奮で体の震えが止まらなかった。
─── だ・・・だだ、誰も見てねェな。がははははは、これを独り占めしない手はねェ。
─── やったぞ!!これでおれの人生は、ド派手と決まった!!!
地図を懐に隠し、人知れずガッツポーズを決めるバギーであった。
その日の夜 ───。
「はっはっはっはっは!!今日も快勝だった!!!」
「飲め飲め!騒げ!歌え!!」
昼間の戦闘に勝利した海賊達は、戦勝を祝い、当然のように宴を開いていた。
しかしバギーは宴の輪に加わらず、1人甲板にいた。
昼間、こっそり奪った地図を見つめ、期待に胸を膨らませる。
そこへ、酒瓶を片手にシャンクスがやってきた。
「おいバギー、一緒に騒がねぇのか?面白い戦利品もあるぞ!」
─── 戦利品!?バ、バレたのか???
「せ・・・せ・・・戦利品って・・・、おれは別に何もとってねェぞ!!何も知らねェ!!」
「?何言ってんだ、お前」
焦るバギーに、シャンクスは首をかしげる。
─── バレてない・・・。
バギーはそっと胸をなでおろした。
そんなことは全然気づいていない様子でそばの椅子に腰を下ろしたシャンクスに、バギーは言った。
「─── おれ達はいずれ、この船を下りることになるよな」
「まァな、自立はするつもりだよ」
シャンクスは言う。
「おれは自分の船を持ったら、時間をかけて世界を見てまわろうと思ってる。もちろん海賊としてだ」
そんなシャンクスに、バギーは笑って言った。
「へへっ!相変わらずバカな事言ってやがる」
「あんだと!?」
「おれはてめェの戦闘の腕だけは買ってんだ。その甘ったれた考え方さえなきゃ、部下にしてやってもよかったんだがな」
「お前の部下だと!?ふざけんな!!」
シャンクスが酒をあおる。
「考え方が違うから、別々の道を好きに行きゃいいんだ。それが海賊だ!」
「はっはっはっは!!てめェが海賊を語るのかよ・・・。だがそうなりゃ、おれ達が後に海で会う時は殺し合いだぜ!?」
「ああ、それも海賊だな」
「・・・わかんねぇ野郎だ・・・」
笑うシャンクスに、バギーは納得がいかないようだった。
「─── ところで、お前さっき面白ェ戦利品がどうとか言ってたな」
バギーはさっきから気になっていた話に戻した。
「ああ・・・、”悪魔の実”があったんだ」
シャンクスも思い出したように言う。
「悪魔の実ってのは海の悪魔の化身だって聞いたことがある。食っちまったら”悪魔の能力”と引き換えに海に嫌われちまうんだとよ。船長が、誰か食いたきゃ食っていいって言ってたぜ」
シャンクスが笑う。
「がははははは、そんなもんで万年カナヅチになっちゃかなわねぇな」
バギーも笑う。
─── こえーこえー、そんなモンを食う奴は相当のバカだな。
─── 海底にだって財宝はたくさん眠ってるってのに、泳げねェんじゃ取りにも行けねェ!
という本音は必死で隠して。
・・・あんまり隠れてはないが。
しかし、シャンクスは気づかなかったようだ。
「しかし・・・、あんなへんてこな実が売れば1億ベリーにもなるとは」
「なァに、ほんとかそりゃあ!!!」
がっつり食いつくバギー。
─── 一億といやぁ、A級の宝箱10個でも足りねェ破格!!
─── 財宝の女神がおれに微笑んでるとしか思えねェ!!!
「─── 海賊見習いバギー!悪魔の実を食わせていただきます!!」
翌朝、船の甲板で仲間達に宣言しているバギーの姿があった。
「だははははは、いいねェ若いってのは後先考えねェで!!」
「いいぞバギー、見直した!!」
海賊達がはやし立てる中、バギーは実を一口で口に入れた。
「おおーっ食ったァー!!!」
どよめき後の一瞬の沈黙。
「・・・どうだ、バギー。体に変化はあるか?」
海賊達の問いに、
「いや・・・、別に・・・」
と、バギー。
「何だ、ニセ者なんじゃねェのか?」
「だいたい悪魔の実なんて、噂でしか知らねぇからな」
不思議がる海賊達の中で、真相を知っているのはもちろんバギーだけだった。
─── くくくくっ、その通り!今食ったのはおれが工作したニセ物の実だ。夜のうちにすり替えたんだ!
しばらくして、物陰で高笑いするバギーの姿があった。
右手に宝の地図、左手にぐるぐる模様の悪魔の実をがっしり掴んで。
「─── ハデにうまくいった!!もう、見習いなんてやってられねェ、バレねェ内に船を下りよう。この実を売り払った金とこの地図の財宝があれば、今すぐにでも最強の海賊団を結成して、さらに宝を奪って・・・」
「おいバギー、こんなとこで何やってんだ?」
不意に声をかけられた。シャンクスだ。
バギーは慌てて地図を懐にしまい、悪魔の実を口の中に隠した。
─── な・・・、何だコイツか。おどかしやがって・・・。
「?何て顔してんだよ」
バギーのただならない雰囲気に、シャンクスはいぶかる。
「盗み食いは程々にしろよ。コックさんに怒られるぜ」
シャンクスは勝手に盗み食いだと勘違いしたようだ。すたすたと行ってしまう。
─── あ・・危ねェ、危ねぇ・・・。
ほっとした時だった。
「あ、そういえばさっき船長が・・・」
「!!!」
行ってしまった筈のシャンクスが急に戻ってきた。
思わずバギーは口の中の悪魔の実を・・・、飲み込んでしまった!!!
「ああああああああああああ」
─── 食べた!食べてしまった悪魔の実!!!おれの1億ベリー!!!
「て・・・てててめェ、おれの・・・おれの、おれはああああああああ!!!」
バギーはシャンクスの胸倉を掴む。
シャンクスはそんなバギーを不思議そうに見つめたままだ。
ふと、シャンクスが気づいた。
「何だ、あの紙切れ」
振り向くと、海へ向かってひらひらと舞い落ちる紙切れ1枚。
宝の、地図だ。
「あああああ、おれの地図!!!」
バギーは地図を追って、すぐさま海へ飛び込んだ。
シャンクスが止めるのも聞かずに。
異変はすぐに現れた。
つい昨日まで出来た事が出来ない。
─── 何だ・・・、体がうまく動かねェ・・・。
何とか海上に頭を出す。
しかし、泳げない。
「ぶはっ・・・ばび!!・・・ばぼ・・・!!助けば・・・!!」
「おいお前、何やってんだ。泳ぎは得意だろ!?」
シャンクスが船の上から叫ぶ。
「何だ、何事だシャンクス」
「ん!?あいつ何やってんだ」
騒ぎを聞きつけて、他の海賊たちもやってきた。
シャンクスは自分が昨日の夜言ったことを思い出した。
”悪魔の実ってのは海の悪魔の化身だって聞いたことがある。食っちまったら”悪魔の能力”と引き換えに海に嫌われちまうんだとよ。”
─── まさか、海に嫌われるって言うのは。
「今助ける!!」
シャンクスは海に飛び込んだ。
「─── そしておれは!1億ベリーの実を食い!カナヅチになり!!海底に沈む巨万の富を逃した!!!」
バギーが憎々しげに語り終わった。
「へー。シャンクスが助けてくれたのか」
とルフィ。
あれだけの話を聞いての感想がこれだ。
「おれが言いてェのはそこじゃねェだろ!!!」
気持はわかる。
「あいつのお陰で、おれの人生計画は一気に10年の遅れをとったんだ!」
バギーは上半身のみ、空中に浮かび上がらせた。
「そしておれはフッ切れた!海中がダメなら海上の全ての財宝をおれのものにしてやるとな。このバラバラの能力で!!!」
そしてバギーは空から見つけた。
小屋からこっそり出てくる人影を。
「─── だから、おれの財宝に手をかける奴は、どんな虫ケラだろうと絶対に・・・!」
バギーは狙いを定める。
「あ」
ルフィも気づいた。
「生かしちゃおかん!!!」
バギーは猛スピードで、小屋から出てきたナミに向かって行った。
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第18話 海賊”道化のバギー”
元酒場(今瓦礫)前の広場には地面に横たわる4人の男がいた。
ゾロに倒された、カバジ。
戦いの後、熟睡するゾロ。
ルフィに蹴り飛ばされた、モージ。
そして、ルフィに気絶させられた、ブードル・・・。
立っているのは2人。ルフィとバギーだけであった。
「赤髪って・・・!?」
バギーの口から出た『赤髪』という言葉に、ルフィは何よりも反応した。
「シャンクスの事か!?知ってんのか、お前!!」
「・・・んん?何だ・・・興味しんしんだな、おい。知ってるが、どうした・・・」
バギーはルフィの反応にいぶかった。
「今、どこにいる?」
「どこに・・・?さァなァ、知ってるといやあ知ってるが、知らんといやあ全く知らん」
ほくそ笑むバギーに、
「何言ってんだ、お前。ばかか!」
ルフィはばっさり。
「ばかとは無礼だな、コラ!!」
気を取り直して、バギーはあらためて両手に何本も掴んだナイフを振りかざした。
「てめェが知りてェもんをわざわざ教えてやるほど、おれはいい人じゃねェぞ。たとえそれが冥土の土産でもだ!」
「じゃあ、力ずくで聞いてやる!」
ルフィもこぶしを固める。
「がははははは!聞かれる前に殺してやるさ!!」
バギーはそう言うと、足を踏みしめた。
靴の先から刃が出てくる。
「ゴムでも刃物ははね返せまい」
「うん、ムリ」
ルフィは素直。
バギーは腰をひねって力を込める。
「バ~~~ラ~~~バ~~~ラ~~~・・・せんべいっ!!」
バギーの腰から下が切り離され、回転しながらルフィに迫る。
さながら、両側に刃のついたフリスビーのようである。
しかしルフィは間一髪飛び越える。
「空中は身動きがとれんだろう!!」
ルフィが避けるのを読んでいたバギーは、ルフィめがけ、持っていたナイフたちを投げつけた。
「とれるさ」
ルフィは傍の建物の柱に腕を伸ばして掴むと、戻る反動でナイフたちをやり過ごした。
「ほほう!そうきたか、面白ェな!!」
「お前もな!」
今度はルフィの反撃の番である。
腕を構えると、
「ゴムゴムの・・・銃(ピストル)!!!」
バギーをめがけ、グオンッと腕が伸びる。
それをバギーも間一髪で避けた。
「面白ェ能力だが・・・伸び斬った腕はスキだらけだな!!」
バギーはルフィの腕を掴むと、ナイフを振り下ろす。
しかし、ルフィは掴まれた腕の先で、建物の窓枠を掴んでいた。
「斬りキザんで・・・!!」
「ゴムゴムの・・・」
ルフィが逆の腕をラリアートのように構え、バギーめがけて飛んでくる。
「鎌っ!!」
「”バラバラ緊急脱出”っ!!」
ルフィの腕がバギーの首へヒット!!・・・かと思われたが、バギーの首がスポーンと飛び、辛くも直撃を逃れた。
勢いで、ルフィは瓦礫の山に頭から突っ込む。
「がっはっはっはっは、甘いわゴムゴム!」
バギーは笑いながら瓦礫の方を振り返る。
「むんっ!!」
瓦礫の山から、ルフィは立ち上がった。
「くっそ~~~、バラバラバラバラ分解しやがって」
─── その2人の様子を、物陰から見つめる姿があった。
ナミだ。
「・・・な、何て戦いなの・・・!夢でも見てるみたい」
体が伸びたり、分解したり。
おおよそ普通の人間では、どちらもありえない。
瓦礫の山の中でも、気絶していた手下の海賊達が目の前の戦いに度肝を抜かれていた。
「おい・・・、見たか今の・・・」
「バカヤロ、気絶したフリしてろ・・・。あ、あんなのに巻き込まれたらおれ達ァ命はねェぞ」
「バラバラ砲ーうっ!!!」
ナイフを掴んだバギーの腕が、ルフィめがけて飛んでいく。
「ふんっ!!!」
寸でのところで、その腕を掴む。
しかし。
「切り離し!!!」
「うわっ!」
手首から先が切り離され、再度ルフィへ飛ぶ。
何とか避けたが、切っ先がこめかみにかすってしまった。
避けた弾みで瓦礫の山へ再度突っ込む。
すぐに起き上がったが、彼はこめかみから血を流しながら、麦わら帽子を見つめていた。
「この野郎ォ!!!」
ルフィがバギーを睨み上げる。
「なんだ?顔はキズつけちゃマズかったかい」
にやりと笑うバギーに、ルフィは怒鳴った。
「よくもこの帽子に、傷をつけやがったな!!!」
「は?」
「これはおれの宝だ!!!この帽子を傷つける奴は絶対許さねェ!!!」
そのルフィの様子に、ナミは驚いた。
そういえば彼はナミに、
”これは昔、友達から受け取ったおれの大切な宝なんだ”
と言っていた。
─── 何にも動じない奴だと思ってたけど、あいつがこんなに取り乱すなんて・・・!!
「─── そんなに大事な帽子なのか?」
バギーがにやりと笑う。
「そうだ!!」
ルフィの後ろで、ナイフを掴んだバギーの手がゆらりと浮かんだ。
そして、ルフィめがけてナイフを1本投げる。
「わっ!!!」
飛んでくるナイフを必死で避けたが、今度は手の方がルフィに向かってくる。
その手には、まだナイフが握られていた。
「大事ならちゃんと守れ!!!」
ズバッ!!
バギーのナイフは麦わら帽子を貫いていた。
「がははははは、こんなくたびれた帽子の何が宝だ!!!」
ナイフが刺さった麦わら帽子を掲げ、バギーは高笑いする。
ルフィは悔しそうに奥歯をかんだ。
彼の脳裏に、シャンクスの言葉が蘇る。
”この帽子をお前に預ける”
”おれの大切な帽子だ、いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな”
「それはシャンクスとの誓いの帽子だ!!!」
ルフィがバギーに向かって猛然と突っ込んでいく。
「何い?・・・て事ァ、こりゃシャンクスの帽子かよ。道理で見覚えがあるわけだぜ」
バギーは帽子を地面に叩き落した。
「おれとあいつは、昔同じ海賊船にいた。・・・つまり、海賊見習い時代の同志ってわけだ」
そして、帽子につばを吐きかける。
それを見たルフィは、本気で怒った。
「シャンクスは偉大な男だ・・・。お前と同志だと!?」
そして腕を構える。
「また同じ手かよ!バラバラ緊急脱出っ!!!」
首を狙われたと思ったバギーは、またもや頭部を体から切り離す。
「一緒にすんな!!!!」
ズドォ!!!
しかしルフィは、体部分に思いっきり蹴りを入れていた。
ゾロに倒された、カバジ。
戦いの後、熟睡するゾロ。
ルフィに蹴り飛ばされた、モージ。
そして、ルフィに気絶させられた、ブードル・・・。
立っているのは2人。ルフィとバギーだけであった。
「赤髪って・・・!?」
バギーの口から出た『赤髪』という言葉に、ルフィは何よりも反応した。
「シャンクスの事か!?知ってんのか、お前!!」
「・・・んん?何だ・・・興味しんしんだな、おい。知ってるが、どうした・・・」
バギーはルフィの反応にいぶかった。
「今、どこにいる?」
「どこに・・・?さァなァ、知ってるといやあ知ってるが、知らんといやあ全く知らん」
ほくそ笑むバギーに、
「何言ってんだ、お前。ばかか!」
ルフィはばっさり。
「ばかとは無礼だな、コラ!!」
気を取り直して、バギーはあらためて両手に何本も掴んだナイフを振りかざした。
「てめェが知りてェもんをわざわざ教えてやるほど、おれはいい人じゃねェぞ。たとえそれが冥土の土産でもだ!」
「じゃあ、力ずくで聞いてやる!」
ルフィもこぶしを固める。
「がははははは!聞かれる前に殺してやるさ!!」
バギーはそう言うと、足を踏みしめた。
靴の先から刃が出てくる。
「ゴムでも刃物ははね返せまい」
「うん、ムリ」
ルフィは素直。
バギーは腰をひねって力を込める。
「バ~~~ラ~~~バ~~~ラ~~~・・・せんべいっ!!」
バギーの腰から下が切り離され、回転しながらルフィに迫る。
さながら、両側に刃のついたフリスビーのようである。
しかしルフィは間一髪飛び越える。
「空中は身動きがとれんだろう!!」
ルフィが避けるのを読んでいたバギーは、ルフィめがけ、持っていたナイフたちを投げつけた。
「とれるさ」
ルフィは傍の建物の柱に腕を伸ばして掴むと、戻る反動でナイフたちをやり過ごした。
「ほほう!そうきたか、面白ェな!!」
「お前もな!」
今度はルフィの反撃の番である。
腕を構えると、
「ゴムゴムの・・・銃(ピストル)!!!」
バギーをめがけ、グオンッと腕が伸びる。
それをバギーも間一髪で避けた。
「面白ェ能力だが・・・伸び斬った腕はスキだらけだな!!」
バギーはルフィの腕を掴むと、ナイフを振り下ろす。
しかし、ルフィは掴まれた腕の先で、建物の窓枠を掴んでいた。
「斬りキザんで・・・!!」
「ゴムゴムの・・・」
ルフィが逆の腕をラリアートのように構え、バギーめがけて飛んでくる。
「鎌っ!!」
「”バラバラ緊急脱出”っ!!」
ルフィの腕がバギーの首へヒット!!・・・かと思われたが、バギーの首がスポーンと飛び、辛くも直撃を逃れた。
勢いで、ルフィは瓦礫の山に頭から突っ込む。
「がっはっはっはっは、甘いわゴムゴム!」
バギーは笑いながら瓦礫の方を振り返る。
「むんっ!!」
瓦礫の山から、ルフィは立ち上がった。
「くっそ~~~、バラバラバラバラ分解しやがって」
─── その2人の様子を、物陰から見つめる姿があった。
ナミだ。
「・・・な、何て戦いなの・・・!夢でも見てるみたい」
体が伸びたり、分解したり。
おおよそ普通の人間では、どちらもありえない。
瓦礫の山の中でも、気絶していた手下の海賊達が目の前の戦いに度肝を抜かれていた。
「おい・・・、見たか今の・・・」
「バカヤロ、気絶したフリしてろ・・・。あ、あんなのに巻き込まれたらおれ達ァ命はねェぞ」
「バラバラ砲ーうっ!!!」
ナイフを掴んだバギーの腕が、ルフィめがけて飛んでいく。
「ふんっ!!!」
寸でのところで、その腕を掴む。
しかし。
「切り離し!!!」
「うわっ!」
手首から先が切り離され、再度ルフィへ飛ぶ。
何とか避けたが、切っ先がこめかみにかすってしまった。
避けた弾みで瓦礫の山へ再度突っ込む。
すぐに起き上がったが、彼はこめかみから血を流しながら、麦わら帽子を見つめていた。
「この野郎ォ!!!」
ルフィがバギーを睨み上げる。
「なんだ?顔はキズつけちゃマズかったかい」
にやりと笑うバギーに、ルフィは怒鳴った。
「よくもこの帽子に、傷をつけやがったな!!!」
「は?」
「これはおれの宝だ!!!この帽子を傷つける奴は絶対許さねェ!!!」
そのルフィの様子に、ナミは驚いた。
そういえば彼はナミに、
”これは昔、友達から受け取ったおれの大切な宝なんだ”
と言っていた。
─── 何にも動じない奴だと思ってたけど、あいつがこんなに取り乱すなんて・・・!!
「─── そんなに大事な帽子なのか?」
バギーがにやりと笑う。
「そうだ!!」
ルフィの後ろで、ナイフを掴んだバギーの手がゆらりと浮かんだ。
そして、ルフィめがけてナイフを1本投げる。
「わっ!!!」
飛んでくるナイフを必死で避けたが、今度は手の方がルフィに向かってくる。
その手には、まだナイフが握られていた。
「大事ならちゃんと守れ!!!」
ズバッ!!
バギーのナイフは麦わら帽子を貫いていた。
「がははははは、こんなくたびれた帽子の何が宝だ!!!」
ナイフが刺さった麦わら帽子を掲げ、バギーは高笑いする。
ルフィは悔しそうに奥歯をかんだ。
彼の脳裏に、シャンクスの言葉が蘇る。
”この帽子をお前に預ける”
”おれの大切な帽子だ、いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな”
「それはシャンクスとの誓いの帽子だ!!!」
ルフィがバギーに向かって猛然と突っ込んでいく。
「何い?・・・て事ァ、こりゃシャンクスの帽子かよ。道理で見覚えがあるわけだぜ」
バギーは帽子を地面に叩き落した。
「おれとあいつは、昔同じ海賊船にいた。・・・つまり、海賊見習い時代の同志ってわけだ」
そして、帽子につばを吐きかける。
それを見たルフィは、本気で怒った。
「シャンクスは偉大な男だ・・・。お前と同志だと!?」
そして腕を構える。
「また同じ手かよ!バラバラ緊急脱出っ!!!」
首を狙われたと思ったバギーは、またもや頭部を体から切り離す。
「一緒にすんな!!!!」
ズドォ!!!
しかしルフィは、体部分に思いっきり蹴りを入れていた。
第17話 格
元酒場(今、瓦礫)の前の広場では、ゾロがカバジをまっすぐ見据えていた。
手にした刀からは血が滴り落ちる。
カバジの血ではない。
それは、自身で傷つけたわき腹からの血であった。
「ああ・・・、見てるだけで倒れそう・・・」
ナミが目を覆う。
「いけっ、ゾロ!!」
その横で、期待に目を輝かせるルフィ。
ゾロはカバジを見据えたまま言った。
「おれはこの先、剣士と名乗る野郎にはたった一度でも負けるわけにはいかねェんだ!!」
「成程・・・、強い志の成せる業か・・・」
カバジが剣を構える。
「だがまァ、安心しろ。それだけの重傷で相手がこのおれとあっちゃあ、敗けの言い訳には十分だ」
「─── 逆だ!!」
ゾロはにやりと笑った。
「これくらいの傷でてめェごときに敗けたとあっちゃ、おれのこの先が思いやられるよ」
「・・・てめェ!!!」
カバジが睨んだ。
「聞いて!」
ゾロたちの様子を見ていたナミが、不意にルフィの肩を叩いた。
「吹き飛んだ酒場の裏に小屋があるの。あいつらの”お宝”はそこにあるわ」
ナミは瓦礫のほうを指差す。
「そして”偉大なる航路(グランドライン)”の海図は、多分バギーが持ってる。私は海賊達がのびてる今の内に裏にまわって、小屋の宝をいただいて逃げる!あんた達がこの戦いに勝とうが負けようが、私には関係ないからね。・・・ただしバギーからうまく海図を奪えたら、その時はあらためて手を組みましょう!」
ナミがにっと笑った。
「じゃあね!健闘を祈るわ!」
「おお、ありがとう」
ナミは酒場の裏に向けてかけて行った。
広場ではカバジが猛然とゾロに向かっていた。
「おれの最高の曲技を味わうがいい、ロロノア・ゾロ!!」
一輪車にまたがったカバジはマントの陰から独楽を取り出した。
「曲技っ!!”カミカゼ百コマ劇場”!!!」
そう叫び、ゾロにむけていくつもの独楽を飛ばす。
ゾロがそれをよける隙に、カバジは一輪車を漕ぎ、傍の建物の壁を駆け上っていった。
「曲技!!”山登ろー”」
そして屋根の上で、思いっきりジャンプする。
「曲技!!”納涼打ち上げ花火”!!」
独楽をよけきったゾロが見上げると、カバジははるか空の上に飛び上がっていた。
そして剣の切っ先をゾロに向ける。
「”一輪刺し”!!!」
カバジがゾロめがけて落下してくる。
その様子を見て、バギーが腕をゾロへ向けかまえた。
「地を這うバラバラ砲ーうっ!!」
バギーの手がゾロめがけて発射される。
「カバジッ!!おれが抑える、ゾロを仕留めろ!!!」
「御意」
「てめェら・・・!!!」
ゾロに襲い掛かる、バギーの手。
もう少しで捕まる、その時だった。
ドスン!!
ルフィだった。
ゾロが掴まれる寸前、ルフィがそれを踏みつけたのだ。
「ぎいやあああ」
バギーの叫び声が響き渡る。
「ゾロの野望(たたかい)に手ェ出すな!!!」
ルフィは不適に笑う。
それを受けて、ゾロもにっと笑った。
「─── 船長の手を借りずとも、貴様くらい殺せるわ!!」
バギーは止めても、カバジは止められない。
カバジの剣が突き刺さる寸前、ゾロはかろうじて避けた。
「ちっ」
カバジが舌打ちする。
ゾロは息を荒げて、ゆっくりと体を起こした。
「もういい・・・、疲れた・・・」
「疲れた?」
ゾロの言葉に、カバジが笑う。
「くくくくくくく、さすがに貧血気味か?とうとう勝負を諦めたな!まあ、当然と言えば当然・・・。むしろ、その深手でよく今まで立っていられたと・・・」
ガシャァン!!
カバジが言い終わる前に、ゾロは一輪車を蹴りつけた。
「く・・・・・!!!」
「お前のくだらねぇ曲技に付き合うのが疲れたって言ったんだ!!」
ゾロの野獣の目は死んでいない。
「・・・!ならばこの辺でとどめを刺してやろうか。おれの本物の剣技で!!!」
猛然とゾロに向かうカバジ。
しかしゾロは口に刀を咥え、ゆっくりと3本の刀を構えた。
「鬼・・・斬り!!!!」
一撃必殺のゾロの刃が、カバジを襲う。
「カバジ!!!」
バギーが叫ぶ。
ルフィはにやっと笑った。
「くそ・・・。我々バギー一味が、コソ泥ごときに・・・。ここまで・・・!!」
そう言い残し、カバジはゆっくりと倒れた。
「コソ泥じゃねェ」
ゾロは頭の手ぬぐいに手をやる。
「海賊だ!!!」
さすがのゾロも限界だったのだろう。力尽きて地面に崩れ落ちた。
「ルフィ・・・、おれは寝るぞ」
「おう、寝てろ。あとはおれがやる」
ゾロの言葉を受け、ルフィはバギーへ腕を構えた。
「てめェら・・・、海賊だと!!?」
バギーは耳を疑った。
─── 海図狙いのコソ泥じゃねェのか。
「そうだ!”偉大なる航路”の海図をよこせ!!」
「狙いはそれか・・・。あの場所は名もない海賊がやすやすと通れる甘えた航路じゃねぇぞ。てめェらなんぞが”偉大なる航路”へ入って何をする!観光旅行でもするつもりか!」
「海賊王になる」
しれっと言うルフィに、バギーは呆れるしかなかった。
─── こいつ、自分が言ってることわかってんのか。
「フザけんなっ、ハデアホがァ!!てめェが海賊王だと!?ならばおれァ神か!!?世界の宝を手にするのはこのおれだ!夢見てんじゃねェ!!!」
「いいからかかって来い。やかましいよ、お前」
怒鳴るバギーをものともせず、ルフィは指を鳴らす。
「おいおいおいおいおいっ、口を慎めよ、ごむごむ!」
バギーも両手の指の間にナイフを挟み、凄む。
「てめェのその麦わらを見てると、若かりし頃のあの男を思い出すぜ。くそ生意気な、あの赤髪の男を・・・!!」
「・・・赤髪!?」
今度はルフィが耳を疑う番だった。
手にした刀からは血が滴り落ちる。
カバジの血ではない。
それは、自身で傷つけたわき腹からの血であった。
「ああ・・・、見てるだけで倒れそう・・・」
ナミが目を覆う。
「いけっ、ゾロ!!」
その横で、期待に目を輝かせるルフィ。
ゾロはカバジを見据えたまま言った。
「おれはこの先、剣士と名乗る野郎にはたった一度でも負けるわけにはいかねェんだ!!」
「成程・・・、強い志の成せる業か・・・」
カバジが剣を構える。
「だがまァ、安心しろ。それだけの重傷で相手がこのおれとあっちゃあ、敗けの言い訳には十分だ」
「─── 逆だ!!」
ゾロはにやりと笑った。
「これくらいの傷でてめェごときに敗けたとあっちゃ、おれのこの先が思いやられるよ」
「・・・てめェ!!!」
カバジが睨んだ。
「聞いて!」
ゾロたちの様子を見ていたナミが、不意にルフィの肩を叩いた。
「吹き飛んだ酒場の裏に小屋があるの。あいつらの”お宝”はそこにあるわ」
ナミは瓦礫のほうを指差す。
「そして”偉大なる航路(グランドライン)”の海図は、多分バギーが持ってる。私は海賊達がのびてる今の内に裏にまわって、小屋の宝をいただいて逃げる!あんた達がこの戦いに勝とうが負けようが、私には関係ないからね。・・・ただしバギーからうまく海図を奪えたら、その時はあらためて手を組みましょう!」
ナミがにっと笑った。
「じゃあね!健闘を祈るわ!」
「おお、ありがとう」
ナミは酒場の裏に向けてかけて行った。
広場ではカバジが猛然とゾロに向かっていた。
「おれの最高の曲技を味わうがいい、ロロノア・ゾロ!!」
一輪車にまたがったカバジはマントの陰から独楽を取り出した。
「曲技っ!!”カミカゼ百コマ劇場”!!!」
そう叫び、ゾロにむけていくつもの独楽を飛ばす。
ゾロがそれをよける隙に、カバジは一輪車を漕ぎ、傍の建物の壁を駆け上っていった。
「曲技!!”山登ろー”」
そして屋根の上で、思いっきりジャンプする。
「曲技!!”納涼打ち上げ花火”!!」
独楽をよけきったゾロが見上げると、カバジははるか空の上に飛び上がっていた。
そして剣の切っ先をゾロに向ける。
「”一輪刺し”!!!」
カバジがゾロめがけて落下してくる。
その様子を見て、バギーが腕をゾロへ向けかまえた。
「地を這うバラバラ砲ーうっ!!」
バギーの手がゾロめがけて発射される。
「カバジッ!!おれが抑える、ゾロを仕留めろ!!!」
「御意」
「てめェら・・・!!!」
ゾロに襲い掛かる、バギーの手。
もう少しで捕まる、その時だった。
ドスン!!
ルフィだった。
ゾロが掴まれる寸前、ルフィがそれを踏みつけたのだ。
「ぎいやあああ」
バギーの叫び声が響き渡る。
「ゾロの野望(たたかい)に手ェ出すな!!!」
ルフィは不適に笑う。
それを受けて、ゾロもにっと笑った。
「─── 船長の手を借りずとも、貴様くらい殺せるわ!!」
バギーは止めても、カバジは止められない。
カバジの剣が突き刺さる寸前、ゾロはかろうじて避けた。
「ちっ」
カバジが舌打ちする。
ゾロは息を荒げて、ゆっくりと体を起こした。
「もういい・・・、疲れた・・・」
「疲れた?」
ゾロの言葉に、カバジが笑う。
「くくくくくくく、さすがに貧血気味か?とうとう勝負を諦めたな!まあ、当然と言えば当然・・・。むしろ、その深手でよく今まで立っていられたと・・・」
ガシャァン!!
カバジが言い終わる前に、ゾロは一輪車を蹴りつけた。
「く・・・・・!!!」
「お前のくだらねぇ曲技に付き合うのが疲れたって言ったんだ!!」
ゾロの野獣の目は死んでいない。
「・・・!ならばこの辺でとどめを刺してやろうか。おれの本物の剣技で!!!」
猛然とゾロに向かうカバジ。
しかしゾロは口に刀を咥え、ゆっくりと3本の刀を構えた。
「鬼・・・斬り!!!!」
一撃必殺のゾロの刃が、カバジを襲う。
「カバジ!!!」
バギーが叫ぶ。
ルフィはにやっと笑った。
「くそ・・・。我々バギー一味が、コソ泥ごときに・・・。ここまで・・・!!」
そう言い残し、カバジはゆっくりと倒れた。
「コソ泥じゃねェ」
ゾロは頭の手ぬぐいに手をやる。
「海賊だ!!!」
さすがのゾロも限界だったのだろう。力尽きて地面に崩れ落ちた。
「ルフィ・・・、おれは寝るぞ」
「おう、寝てろ。あとはおれがやる」
ゾロの言葉を受け、ルフィはバギーへ腕を構えた。
「てめェら・・・、海賊だと!!?」
バギーは耳を疑った。
─── 海図狙いのコソ泥じゃねェのか。
「そうだ!”偉大なる航路”の海図をよこせ!!」
「狙いはそれか・・・。あの場所は名もない海賊がやすやすと通れる甘えた航路じゃねぇぞ。てめェらなんぞが”偉大なる航路”へ入って何をする!観光旅行でもするつもりか!」
「海賊王になる」
しれっと言うルフィに、バギーは呆れるしかなかった。
─── こいつ、自分が言ってることわかってんのか。
「フザけんなっ、ハデアホがァ!!てめェが海賊王だと!?ならばおれァ神か!!?世界の宝を手にするのはこのおれだ!夢見てんじゃねェ!!!」
「いいからかかって来い。やかましいよ、お前」
怒鳴るバギーをものともせず、ルフィは指を鳴らす。
「おいおいおいおいおいっ、口を慎めよ、ごむごむ!」
バギーも両手の指の間にナイフを挟み、凄む。
「てめェのその麦わらを見てると、若かりし頃のあの男を思い出すぜ。くそ生意気な、あの赤髪の男を・・・!!」
「・・・赤髪!?」
今度はルフィが耳を疑う番だった。
第16話 VERSUS!!バギー海賊団
ルフィ・ゾロ・ナミの3人の目の前には、もうもうと土煙をたてる瓦礫の山があった。
酒場があったはずなのに。
瓦礫にまぎれて、バギーの手下たちも多数倒れていた。
原因は、ルフィが弾いた”バギー玉”。
「─── 説明してよ!だいたいおかしいと思ったわ、ライオンと戦ってきた時からね。人間業じゃないもの、何よ、今の風船みたいにふくれたの!!」
ナミがルフィを問い詰めていた。
どう考えても、普通の人間じゃありえない。
「ゴムゴムの風船だ!!」
ルフィが自慢げに言う。
「それが何かって聞いてんのよ!!」
バケモノ!とナミが怒る。
その時、瓦礫の山からガラガラと音がした。
ルフィとゾロの表情が変わる。
「─── よくもまァ、派手にやってくれたもんだ・・・」
瓦礫の山から立ち上がったのは、バギーとカバジだった。
2人共、バギーは手下2人を、カバジはモージの愛ライオンのリッチーを盾にしていた。
「旗揚げ以来、最大の屈辱ですね船長」
「おれァアもう、怒りでものも言えねェよ・・・」
その後ろで、もう一人瓦礫の山から起き上がってきた者がいた。
「くそ・・・、気を失ってたか・・・。何だ、この有様は・・・!」
「モージ・・・、生きてたのか・・・」
カバジが気づいて振り向く。
モージはカバジが盾にしている物に気づいた。
「!?おいカバジ・・・、てめェリッチーに何してる!」
「・・・ああ、この猫か。おれの服が汚れるといけないんで、盾に使わせてもらっただけだ」
そう言って、カバジはリッチーを放り投げる。
モージは慌ててリッチーに駆け寄った。
「おい、リッチー、無事か!?」
リッチーはかなりのダメージだったようで、苦しそうに喘ぐ。
しかし、カバジの一睨みで怯えたように慌てて物影に隠れた。
「このスカシ野郎がァ!!」
モージがカバジを睨む。
そして、前方を見やるとあの男が!
「げっ、麦わらの男!バギー船長、あいつにはお気をつけを!奴も”悪魔の実”の能力者なんです!!”ゴム人間”なんです!!!」
モージの言葉を聞いて、ナミが驚いた。
「ゴム人間!?」
「うん、ほら」
ルフィはほっぺたをみょーんと伸ばしてみせた。
「・・・悪魔の実を・・・!!!」
モージの言葉に、バギーの顔色が変わった。
「バギー玉も跳ね返すわけだ」
そして、モージをバラバラの右手でがしっと掴む。
「しかしモージ、知ってたんなら・・・なんでそれを早く言わねェんだ!!!」
「一応言いました!!!」
確かにモージは頑張ってた。
が、そんなことには気づいていないバギーは、問答無用でモージを投げ飛ばす。
飛ばされたその先には、ルフィたち3人がいた。
「ぎゃああああ、そこどけぇ!!!」
ルフィはにっと笑って言った。
「お前がどけっ」
飛んでくるモージにタイミングを合わせると、思いっきり顔面を蹴り飛ばした。
「開戦だ!!!」
「バギー一味参謀長”曲芸のカバジ”!一味の怒りこの私が請け負う!!」
一輪車にまたがったカバジが、剣を構え、猛然とルフィに突っ込む。
振り下ろされた剣を受け止めたのは、ゾロの刀だった。
ゾロが相手を見据える。
「剣の相手なら、おれがする!」
「光栄だねェ、ロロノア・ゾロ・・・。一人の剣士として貴様を斬れるとは」
しかし、ルフィは気づいた。
ゾロのわき腹から、血が滲み出している。
「おいゾロ、やっぱり休んでろよ。おれがやるから」
その言葉を聞いたカバジは、すぐに悟った。
─── 船長に刺された傷だな・・!よくも顔色一つ変えずに立っていられるものだ。バカが・・・。
カバジはほくそ笑むと、
「曲技っ、”火事おやじ”!!」
そう叫んで、口からゾロの顔をめがけて火を吹いた。
「うわっ!!」
ゾロは思わずのけぞる。
その隙に、カバジはゾロの傷口めがけて思いっきり蹴り飛ばした。
「ぐああああっ!!!」
ゾロはもんどりうって倒れる。
「くそっ!!」
「なんだ、そんなに強く蹴ったつもりはないが?」
くくっと笑うカバジ。
「汚い奴っ!!あいつ傷口を狙って・・・!!」
ナミがカバジを睨んだ。
さらにカバジがゾロに襲い掛かる。
「曲技っ!!”湯けむり殺人事件”っ!!」
カバジは剣を地面に突き立てると、縦に回転させ土埃を上げた。
「何が曲技だっ・・・!!ただの土埃じゃねェか!!」
ゾロは息を荒げながら、その土埃を見つめる。
と、その中から突然カバジが剣を振り下ろしてきた。
「!」
受けるので精一杯のゾロ。
「くくっ」
「な・・・」
ドボッ!!
両手をふさがれたゾロは、またしてもわき腹に蹴りを食らった。
「うああああああっ!!」
激痛に悲鳴を上げるゾロ。
「どうした?大の男が大声でわめいてみっともないぞ・・・」
地面に転がるゾロに、カバジはにやりと笑った。
「貴様の相棒の妙な能力のおかげで、こっちはとんだ災難だ。いくら”海賊狩り”だとて、我々バギー一味を敵にしたことは失敗だったな」
それでもゾロは必死で立ち上がろうとあがいている。
ナミはもう、見ていられなかった。
「あんな深手で戦うなんてもともと無茶なのよ!!あんた何黙って見てんの?あいつ、殺されちゃうわ!!」
しかしルフィは黙って戦況を見つめていた。
「ロロノア・ゾロ!討ち取った!!!」
カバジが止めとばかりに襲い掛かる。
ガキン!!
それをゾロは、渾身の力を込めてなぎ倒した。
「え・・・」
「おお!!」
ナミの顔に驚きの表情が、ルフィの顔には待ち兼ねたとばかりの期待の表情が浮かんだ。
「・・・うっとうしい野郎だぜ。おれの傷をつつくのが、そんなに楽しいか!!」
そう言うと、ゾロは持っている刀を自分に向け・・、
ザクッ!!
わき腹の傷にさらに斬りつけた。
「な!自分で!!」
カバジは目を疑った。
「いてェっ!!」
ルフィも顔をしかめる。
ナミは声も出なかった。
「フゥ───ッ!!!」
ゾロは痛みをこらえるように、大きく息をつく。
「てめェ、一体何を・・・」
驚愕するカバジに、ゾロは静かに言った。
「おれの剣が目指すのは、世界一・・・。ハンディはこれくらいで満足か?おれとお前の格の違いを教えてやるよ」
不敵な様子で、ゆっくりと3本目の刀を口に咥える。
「うぉーっ、かっこいいーっ」
「・・・これがロロノア・ゾロか・・・。ナメやがって・・・!!!」
羨望の声を上げる、ルフィ。
それとは逆に、ゾロのあまりの迫力にカバジは少しひるんだようだった。
酒場があったはずなのに。
瓦礫にまぎれて、バギーの手下たちも多数倒れていた。
原因は、ルフィが弾いた”バギー玉”。
「─── 説明してよ!だいたいおかしいと思ったわ、ライオンと戦ってきた時からね。人間業じゃないもの、何よ、今の風船みたいにふくれたの!!」
ナミがルフィを問い詰めていた。
どう考えても、普通の人間じゃありえない。
「ゴムゴムの風船だ!!」
ルフィが自慢げに言う。
「それが何かって聞いてんのよ!!」
バケモノ!とナミが怒る。
その時、瓦礫の山からガラガラと音がした。
ルフィとゾロの表情が変わる。
「─── よくもまァ、派手にやってくれたもんだ・・・」
瓦礫の山から立ち上がったのは、バギーとカバジだった。
2人共、バギーは手下2人を、カバジはモージの愛ライオンのリッチーを盾にしていた。
「旗揚げ以来、最大の屈辱ですね船長」
「おれァアもう、怒りでものも言えねェよ・・・」
その後ろで、もう一人瓦礫の山から起き上がってきた者がいた。
「くそ・・・、気を失ってたか・・・。何だ、この有様は・・・!」
「モージ・・・、生きてたのか・・・」
カバジが気づいて振り向く。
モージはカバジが盾にしている物に気づいた。
「!?おいカバジ・・・、てめェリッチーに何してる!」
「・・・ああ、この猫か。おれの服が汚れるといけないんで、盾に使わせてもらっただけだ」
そう言って、カバジはリッチーを放り投げる。
モージは慌ててリッチーに駆け寄った。
「おい、リッチー、無事か!?」
リッチーはかなりのダメージだったようで、苦しそうに喘ぐ。
しかし、カバジの一睨みで怯えたように慌てて物影に隠れた。
「このスカシ野郎がァ!!」
モージがカバジを睨む。
そして、前方を見やるとあの男が!
「げっ、麦わらの男!バギー船長、あいつにはお気をつけを!奴も”悪魔の実”の能力者なんです!!”ゴム人間”なんです!!!」
モージの言葉を聞いて、ナミが驚いた。
「ゴム人間!?」
「うん、ほら」
ルフィはほっぺたをみょーんと伸ばしてみせた。
「・・・悪魔の実を・・・!!!」
モージの言葉に、バギーの顔色が変わった。
「バギー玉も跳ね返すわけだ」
そして、モージをバラバラの右手でがしっと掴む。
「しかしモージ、知ってたんなら・・・なんでそれを早く言わねェんだ!!!」
「一応言いました!!!」
確かにモージは頑張ってた。
が、そんなことには気づいていないバギーは、問答無用でモージを投げ飛ばす。
飛ばされたその先には、ルフィたち3人がいた。
「ぎゃああああ、そこどけぇ!!!」
ルフィはにっと笑って言った。
「お前がどけっ」
飛んでくるモージにタイミングを合わせると、思いっきり顔面を蹴り飛ばした。
「開戦だ!!!」
「バギー一味参謀長”曲芸のカバジ”!一味の怒りこの私が請け負う!!」
一輪車にまたがったカバジが、剣を構え、猛然とルフィに突っ込む。
振り下ろされた剣を受け止めたのは、ゾロの刀だった。
ゾロが相手を見据える。
「剣の相手なら、おれがする!」
「光栄だねェ、ロロノア・ゾロ・・・。一人の剣士として貴様を斬れるとは」
しかし、ルフィは気づいた。
ゾロのわき腹から、血が滲み出している。
「おいゾロ、やっぱり休んでろよ。おれがやるから」
その言葉を聞いたカバジは、すぐに悟った。
─── 船長に刺された傷だな・・!よくも顔色一つ変えずに立っていられるものだ。バカが・・・。
カバジはほくそ笑むと、
「曲技っ、”火事おやじ”!!」
そう叫んで、口からゾロの顔をめがけて火を吹いた。
「うわっ!!」
ゾロは思わずのけぞる。
その隙に、カバジはゾロの傷口めがけて思いっきり蹴り飛ばした。
「ぐああああっ!!!」
ゾロはもんどりうって倒れる。
「くそっ!!」
「なんだ、そんなに強く蹴ったつもりはないが?」
くくっと笑うカバジ。
「汚い奴っ!!あいつ傷口を狙って・・・!!」
ナミがカバジを睨んだ。
さらにカバジがゾロに襲い掛かる。
「曲技っ!!”湯けむり殺人事件”っ!!」
カバジは剣を地面に突き立てると、縦に回転させ土埃を上げた。
「何が曲技だっ・・・!!ただの土埃じゃねェか!!」
ゾロは息を荒げながら、その土埃を見つめる。
と、その中から突然カバジが剣を振り下ろしてきた。
「!」
受けるので精一杯のゾロ。
「くくっ」
「な・・・」
ドボッ!!
両手をふさがれたゾロは、またしてもわき腹に蹴りを食らった。
「うああああああっ!!」
激痛に悲鳴を上げるゾロ。
「どうした?大の男が大声でわめいてみっともないぞ・・・」
地面に転がるゾロに、カバジはにやりと笑った。
「貴様の相棒の妙な能力のおかげで、こっちはとんだ災難だ。いくら”海賊狩り”だとて、我々バギー一味を敵にしたことは失敗だったな」
それでもゾロは必死で立ち上がろうとあがいている。
ナミはもう、見ていられなかった。
「あんな深手で戦うなんてもともと無茶なのよ!!あんた何黙って見てんの?あいつ、殺されちゃうわ!!」
しかしルフィは黙って戦況を見つめていた。
「ロロノア・ゾロ!討ち取った!!!」
カバジが止めとばかりに襲い掛かる。
ガキン!!
それをゾロは、渾身の力を込めてなぎ倒した。
「え・・・」
「おお!!」
ナミの顔に驚きの表情が、ルフィの顔には待ち兼ねたとばかりの期待の表情が浮かんだ。
「・・・うっとうしい野郎だぜ。おれの傷をつつくのが、そんなに楽しいか!!」
そう言うと、ゾロは持っている刀を自分に向け・・、
ザクッ!!
わき腹の傷にさらに斬りつけた。
「な!自分で!!」
カバジは目を疑った。
「いてェっ!!」
ルフィも顔をしかめる。
ナミは声も出なかった。
「フゥ───ッ!!!」
ゾロは痛みをこらえるように、大きく息をつく。
「てめェ、一体何を・・・」
驚愕するカバジに、ゾロは静かに言った。
「おれの剣が目指すのは、世界一・・・。ハンディはこれくらいで満足か?おれとお前の格の違いを教えてやるよ」
不敵な様子で、ゆっくりと3本目の刀を口に咥える。
「うぉーっ、かっこいいーっ」
「・・・これがロロノア・ゾロか・・・。ナメやがって・・・!!!」
羨望の声を上げる、ルフィ。
それとは逆に、ゾロのあまりの迫力にカバジは少しひるんだようだった。
第15話 GONG
酒場の前では、屋上にいるバギーたちとブードルが対峙していた。
「貴様何者だ。おれを呼んだか?」
非難していた町民など、彼の眼中にない。
バギー玉の発射を邪魔されたことだけが、気に食わなかった。
「わしはこの町の長、さながらの町長!ブードルじゃ!!わしと勝負しろ!!!」
その言葉に、手下の海賊共が騒ぎ出す。
「ぶわーっはっはっはっはっはっはっはっは!!船長と勝負だと!?」
「勝てるとでも思ってんのか!!?」
そんな中、一人の男がバギーの前に進み出た。
あごまでのストレートの黒髪を左に垂らし、右側は横じまに剃りを入れている。
素肌の上に黒のベストを着、格子柄のスカーフを巻いていた。
「バギー船長」
「何だ、カバジ」
「ああいう輩は、私にお任せを・・・」
カバジと呼ばれた男はそう言うと、口の中に手を突っ込んだ。
そして、中からするすると剣を取り出す。
「おおおっ!!カバジさんの曲芸ショーか!!」
海賊達が期待を込める。
カバジはジャンプすると、くるくると回転しながら屋上の手すりに降り立つ。
彼は一輪車にまたがったまま手すりの上に着地していた。そして剣の先で器用にこまを回す。
彼こそが、バギー一味NO.2参謀長”曲芸のカバジ”であった。
「うお───っ!!やっちまえ、カバジさん!!!」
大声援の中、バギーが静かに言った。
「バカ野郎、ご指名はおれだぜ。さがってろ!!」
その言葉に、カバジは不満そうに押し黙る。
「あ~~~、せっかくカバジさんの曲芸ショーが見れると思ったのによ」
海賊達も不満そうだ。
それには気に留めず、バギーは地上のブードルに向かって言い放った。
「おい貴様、何の為におれに挑む。名でも上げてェか」
「バカ言え!!我が町を、わしの”宝”を守るためじゃ!!!」
「は?」
バギーは耳を疑った。
そして笑い出す。
「バカかてめェは!”宝”ってのはな、金銀財宝のことを言うんだ。持ち主の威厳を示す輝きをもってこそ、宝なのだ!町が宝だと!!?ザレ事をぬかすな!!!」
「ほざけ小童っ!!!」
ブードルが怒鳴り返す。
「貴様なんぞに、わしの町への想いをわかって貰おうなど、ハナから思っておらんわ!!!さっさとここへ下りて来い!!!」
「下りて来い?」
バギーが凄む。
「やなこった!!」
そう叫ぶと、右手をブードルの喉元めがけ発射した。
喉を絞められたブードルは、ゆっくりと宙に浮いていく。
「ひゃーっはっはっはっは!!」
「やれやれェ船長ォ!!!」
手下共がはやし立てる。
「バ・・・、バケモノめ・・・!!!」
絞められたブードルは、力を振り絞りバギーの右手を殴りつける。
「なにか、これしきっ!!!」
しかし、右手を殴りつけるということは、同時に自分の喉へも攻撃するということ。
それでもブードルは、殴り続けた。
「痛ェな、畜生ォ!!バカか、自分の喉ごと殴るとは・・・!」
そう言って、バギーは絞める力をさらに強める。
「・・・っが!!!」
「下りて来いだと!?てめェは誰に口聞いてんだ、オヤジ!おれが誰だか言ってみろ!!」
─── せめて、奴に一矢でも報いねば、わしは死んでも死に切れん!!
ブードルは必死に耐える。
バギーが叫ぶ。
「おれは後に、”偉大なる航路(グランドライン)”を制し!全世界のハデに輝く財宝を、全て手中に収める男だ!!世界の宝はおれのもの!この世におれ以外”宝”を持つ者など必要ない!!!」
そして、大砲の傍へやってきた。
「そんなにこの町が大切だと言うんなら、一緒に消し飛べてさぞ本望だろう」
そして標準をブードルにあわせる。
「何じゃと貴様・・・!わしと戦え!!!」
「おいおい・・・、自惚れンな・・・。ブッ放せ!!!」
ブードルはもう一度叫んだ。
「この町は潰させん!!!わしと戦えェ!!!!」
その時、バギーは自分の右手に違和感を覚えた。
「麦わらの男っ・・・!」
ルフィが、ブードルの喉元からバギーの右手を引っぺがしたのだ。
「ぷはっ・・、げほっげほっ・・・」
ブードルはその場に崩おれた。
ルフィがにやっと笑って言った。
「約束通り、お前をブッ飛ばしに来たぞ!」
右手を戻しながら、バギーが叫ぶ。
「よくもノコノコと自分から・・・、貴様等現れたな!!!!」
ルフィの後に、ゾロとナミもいる。
「─── いーい?戦うのはあんた達の勝手だけどね、私は海図と宝が手に入ればそれでいいの」
「ああ、わかってる」
ナミの言葉に、ゾロが笑いながら答える。
もうすでに、気持は戦闘体制に入っているようだ。
しかし、ようやく息が整ったブードルは、立ち上がりながら言った。
「小童共・・・、何しに来たんじゃ。他所者は引っ込んでおれ。これはわしの戦いじゃぞ!!」
そして槍を掴み、再度バギーに向かう。
「わしの町はわしが守る!!手出しは無用じゃ!!!」
ガンッ!!
なんと、その瞬間ルフィはブードルを傍の壁に叩き付けたのだ。
誰もがその光景に目を疑った。
かわいそうにブードルは、そのまま気を失い倒れてしまった。
「あ・・、あんた!なんて事すんのよ!!何で、町長さんを・・・!!!」
ナミが怒鳴る。
しかしルフィは笑って言った。
「邪魔!!!」
「─── 上策だな・・・。このおっさん、ほっといたら間違いなく死にに行く気だ。気絶してた方が安全だろう」
ゾロも同意する。
「それにしても・・・、無茶するなっ!!」
ナミは怒りの納めどころがなかった。
ルフィは、ここからが本番だ、とばかりにバギーへ向かって大声で言い放った。
「デカッ鼻ァ!!!!」
言ってはいけない一言を。
「ええ~~~っ!??」
「・・・・・!??」
ナミもゾロも慌てる。
「ハデに撃て!バギー玉ァ!!!!」
「消し飛べェ!!!!」
ドウン!!
ルフィに向かって、とうとうバギー玉が発射された。
通りの家々を一瞬で破壊する威力を持つ、砲弾だ。
「何言い出すのよ、バカァ!!!」
「おいルフィ!逃げるんだ、吹き飛ぶぞ!!!」
ナミが逃げ、ゾロも焦る。
しかし、当のルフィだけは余裕気に笑っていた。
「そんな砲弾が、おれに効くかっ」
そう言うと、ルフィは思いっきり息を吸い込む。
「ゴムゴムの・・・」
「風船っ!!!!」
どすっ!!
大きく大きくふくらむお腹。
そこにバギー玉が命中した。
しかし炸裂しない。
ぐぐ───っと威力を吸収する。
「何だあいつは!!?」
「まさかバギー玉を・・・!」
びよおん!!
「弾き返しやがったァ!!!!」
ドカァン!!
ルフィがお腹で弾き返した砲弾は、寸分違わず酒場の屋上へ命中した。
「・・・先に言えよな。人騒がせな」
ゾロが息をつく。
当のルフィはにっと笑って言った。
「よっしゃ、敵が減った!やるか!!!」
「あんた一体、何なのよっ!!」
ナミは一人腰を抜かしていた。
「貴様何者だ。おれを呼んだか?」
非難していた町民など、彼の眼中にない。
バギー玉の発射を邪魔されたことだけが、気に食わなかった。
「わしはこの町の長、さながらの町長!ブードルじゃ!!わしと勝負しろ!!!」
その言葉に、手下の海賊共が騒ぎ出す。
「ぶわーっはっはっはっはっはっはっはっは!!船長と勝負だと!?」
「勝てるとでも思ってんのか!!?」
そんな中、一人の男がバギーの前に進み出た。
あごまでのストレートの黒髪を左に垂らし、右側は横じまに剃りを入れている。
素肌の上に黒のベストを着、格子柄のスカーフを巻いていた。
「バギー船長」
「何だ、カバジ」
「ああいう輩は、私にお任せを・・・」
カバジと呼ばれた男はそう言うと、口の中に手を突っ込んだ。
そして、中からするすると剣を取り出す。
「おおおっ!!カバジさんの曲芸ショーか!!」
海賊達が期待を込める。
カバジはジャンプすると、くるくると回転しながら屋上の手すりに降り立つ。
彼は一輪車にまたがったまま手すりの上に着地していた。そして剣の先で器用にこまを回す。
彼こそが、バギー一味NO.2参謀長”曲芸のカバジ”であった。
「うお───っ!!やっちまえ、カバジさん!!!」
大声援の中、バギーが静かに言った。
「バカ野郎、ご指名はおれだぜ。さがってろ!!」
その言葉に、カバジは不満そうに押し黙る。
「あ~~~、せっかくカバジさんの曲芸ショーが見れると思ったのによ」
海賊達も不満そうだ。
それには気に留めず、バギーは地上のブードルに向かって言い放った。
「おい貴様、何の為におれに挑む。名でも上げてェか」
「バカ言え!!我が町を、わしの”宝”を守るためじゃ!!!」
「は?」
バギーは耳を疑った。
そして笑い出す。
「バカかてめェは!”宝”ってのはな、金銀財宝のことを言うんだ。持ち主の威厳を示す輝きをもってこそ、宝なのだ!町が宝だと!!?ザレ事をぬかすな!!!」
「ほざけ小童っ!!!」
ブードルが怒鳴り返す。
「貴様なんぞに、わしの町への想いをわかって貰おうなど、ハナから思っておらんわ!!!さっさとここへ下りて来い!!!」
「下りて来い?」
バギーが凄む。
「やなこった!!」
そう叫ぶと、右手をブードルの喉元めがけ発射した。
喉を絞められたブードルは、ゆっくりと宙に浮いていく。
「ひゃーっはっはっはっは!!」
「やれやれェ船長ォ!!!」
手下共がはやし立てる。
「バ・・・、バケモノめ・・・!!!」
絞められたブードルは、力を振り絞りバギーの右手を殴りつける。
「なにか、これしきっ!!!」
しかし、右手を殴りつけるということは、同時に自分の喉へも攻撃するということ。
それでもブードルは、殴り続けた。
「痛ェな、畜生ォ!!バカか、自分の喉ごと殴るとは・・・!」
そう言って、バギーは絞める力をさらに強める。
「・・・っが!!!」
「下りて来いだと!?てめェは誰に口聞いてんだ、オヤジ!おれが誰だか言ってみろ!!」
─── せめて、奴に一矢でも報いねば、わしは死んでも死に切れん!!
ブードルは必死に耐える。
バギーが叫ぶ。
「おれは後に、”偉大なる航路(グランドライン)”を制し!全世界のハデに輝く財宝を、全て手中に収める男だ!!世界の宝はおれのもの!この世におれ以外”宝”を持つ者など必要ない!!!」
そして、大砲の傍へやってきた。
「そんなにこの町が大切だと言うんなら、一緒に消し飛べてさぞ本望だろう」
そして標準をブードルにあわせる。
「何じゃと貴様・・・!わしと戦え!!!」
「おいおい・・・、自惚れンな・・・。ブッ放せ!!!」
ブードルはもう一度叫んだ。
「この町は潰させん!!!わしと戦えェ!!!!」
その時、バギーは自分の右手に違和感を覚えた。
「麦わらの男っ・・・!」
ルフィが、ブードルの喉元からバギーの右手を引っぺがしたのだ。
「ぷはっ・・、げほっげほっ・・・」
ブードルはその場に崩おれた。
ルフィがにやっと笑って言った。
「約束通り、お前をブッ飛ばしに来たぞ!」
右手を戻しながら、バギーが叫ぶ。
「よくもノコノコと自分から・・・、貴様等現れたな!!!!」
ルフィの後に、ゾロとナミもいる。
「─── いーい?戦うのはあんた達の勝手だけどね、私は海図と宝が手に入ればそれでいいの」
「ああ、わかってる」
ナミの言葉に、ゾロが笑いながら答える。
もうすでに、気持は戦闘体制に入っているようだ。
しかし、ようやく息が整ったブードルは、立ち上がりながら言った。
「小童共・・・、何しに来たんじゃ。他所者は引っ込んでおれ。これはわしの戦いじゃぞ!!」
そして槍を掴み、再度バギーに向かう。
「わしの町はわしが守る!!手出しは無用じゃ!!!」
ガンッ!!
なんと、その瞬間ルフィはブードルを傍の壁に叩き付けたのだ。
誰もがその光景に目を疑った。
かわいそうにブードルは、そのまま気を失い倒れてしまった。
「あ・・、あんた!なんて事すんのよ!!何で、町長さんを・・・!!!」
ナミが怒鳴る。
しかしルフィは笑って言った。
「邪魔!!!」
「─── 上策だな・・・。このおっさん、ほっといたら間違いなく死にに行く気だ。気絶してた方が安全だろう」
ゾロも同意する。
「それにしても・・・、無茶するなっ!!」
ナミは怒りの納めどころがなかった。
ルフィは、ここからが本番だ、とばかりにバギーへ向かって大声で言い放った。
「デカッ鼻ァ!!!!」
言ってはいけない一言を。
「ええ~~~っ!??」
「・・・・・!??」
ナミもゾロも慌てる。
「ハデに撃て!バギー玉ァ!!!!」
「消し飛べェ!!!!」
ドウン!!
ルフィに向かって、とうとうバギー玉が発射された。
通りの家々を一瞬で破壊する威力を持つ、砲弾だ。
「何言い出すのよ、バカァ!!!」
「おいルフィ!逃げるんだ、吹き飛ぶぞ!!!」
ナミが逃げ、ゾロも焦る。
しかし、当のルフィだけは余裕気に笑っていた。
「そんな砲弾が、おれに効くかっ」
そう言うと、ルフィは思いっきり息を吸い込む。
「ゴムゴムの・・・」
「風船っ!!!!」
どすっ!!
大きく大きくふくらむお腹。
そこにバギー玉が命中した。
しかし炸裂しない。
ぐぐ───っと威力を吸収する。
「何だあいつは!!?」
「まさかバギー玉を・・・!」
びよおん!!
「弾き返しやがったァ!!!!」
ドカァン!!
ルフィがお腹で弾き返した砲弾は、寸分違わず酒場の屋上へ命中した。
「・・・先に言えよな。人騒がせな」
ゾロが息をつく。
当のルフィはにっと笑って言った。
「よっしゃ、敵が減った!やるか!!!」
「あんた一体、何なのよっ!!」
ナミは一人腰を抜かしていた。
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